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約マイナス十二万ポイントという数字を見て、流石にこれはおかしいと訴え続けたことで、アリスも思うところがあるのか何処かに連絡を入れる。
それから別の職員がやってきたかと思えば、状況を把握して「え? あれって六桁マイナスとかいくの?」と割とガチ目に驚かれた。
流石にこんなケースは初めてなのでどうするか悩んだらしく、そこに至る経緯を知ったことで、形だけの反省文を書いてマイナスは消えることとなった。
ただ「もうしないでね?」と二回ほど繰り返し念を押された。
もう一度やれということか?
冗談はさておき、何故このようなことになったかと言うと……全部最高戦力さんが悪い。
何を言っても敵を一人でひき殺すため、ドンドンペナルティーを重くした結果、彼女の行動を制限できるラインがここになった、というのが今回の原因である。
兎にも角にも、このエデンの最高戦力であるフィオラ・アルフメルデという人物は問題行動が多いとのことだ。
「悪人ではないんです。その、価値観があまりにかけ離れているだけなんです」
誰かがそんな擁護をしていた気もするが、その強さから一定のファンがいるのも事実であり、召喚された英霊の中にも彼女を信奉している者さえいるそうだ。
そんな調子だから改善されないのではなかろうか?
とばっちりを食うこちらの身にもなってほしい。
しかし、そんな強さを持つ者と肩を並べるという評価。
今後の俺の戦いにも影響がありそうなのが怖い。
今日一日は安静にしておくように言われているので、再びベッドで眠りつく。
明日が少々憂鬱だが、そこは新武器のテストで乗り切ろう。
翌朝、新武器の確認をするためにも朝早くから射撃訓練場へと向かった俺は、各種申請を行うと早速試し撃ちを開始する。
最初に取り出したのはこちら――Tier1大型スナイパーライフル。
雷のような銃声から「サンダー」と名付けられた攻撃力11800で装弾数12発、反動が抑えられているので狙撃銃とは思えない連射レートを誇ることに加えて貫通持ち、とTier1の中でもトップクラスに性能が盛られた武器である。
これを入手するまでは素材を貯め、一気に強化パーツを作るのが鉄板と言われるくらいにはプレイヤーの依存度が高い強武器である。
撃った感触も俺が知る通りであり、強化服の性能と相まって次弾発射までの時間がセンチュリオンと比べても早い。
連射性能を追求したTier2と威力を重視したTier3のいいとこどりで性能が上とか、完全に他のスナイパーライフルが要らなくなる……かと思いきや、リロード時間が少し長い。
その点、Tier2は攻撃力8500で装弾数20なのにリロード速度も他と比べて少し早い。
それでいて最高の連射速度を誇るのでまだ出番はあるが……センチュリオンはTier1が出ると完全にお役御免となる。
こちらも試射してみるが、俺が知っている通りの性能だった。
続いて取り出したのはTier1ロケットランチャー「ブレイブ」である。
爆風範囲が広がり過ぎた結果、使い勝手が悪くなった攻撃力19200の自爆兵器。
使用するには勇気がいるから「ブレイブ」なのか、と散々言われた武器ではあるが、広範囲に高火力を叩き出すため、使い所さえ間違えなければ最強クラスの武器である。
なお、射程距離は他より短いことには悪意を感じる。
やはりというべきか試射の段階で爆風に少し巻き込まれた上に、的が全部吹っ飛んでいる。
的の補充を待ってTier2のロケットランチャーを取り出す。
こちらは攻撃力が大きく落ちて9300と半分以下。
しかし、ロケットランチャーとは思えない爆速リロードと抑えられた爆風範囲で非常に使い勝手の良い武器である。
こちらは愛用者も多く、名前は何故か「ハセガワ」となっている。
シリーズ通して人名のような名前が付く武器が一つか二つあるのだが、大抵個性的な性能になっており、強武器か産廃かの極端な評価になりがちである。
使ってみるとリロードもびっくりするくらいスムーズに行えて、今から実戦運用が楽しみな武器である。
Tier3に関しては型番以外の名前がないことからもわかる通り、総じて「普通」としか言いようのない性能をしている。
低ランクの装備を数字だけ良くした、という至って真っ当な強化がされた武器だった。
続いて取り出したのはアサルトライフル。
Tier1「イーグル」とTier2「ファルコン」である。
高火力大容量と精密&高速とはっきりコンセプトが分かれており、とんでもマガジン火力の「鷲」に正確無比な高速連射の「隼」となっている。
実際イーグルの1400×200のマガジン火力に勝てる武器はほとんどなく「本当にアサルトライフルか?」というサイズを除けば文句なしの武装であり、ファルコンのマシンガン並みの連射力とリロード時間二秒から繰り出される弾幕は非常に強力である。
だがプレイヤーの使用率はあまりに低かった。
答えは簡単。
DPSが低いファルコンに適したミッションは少なく、イーグルのように単体に火力を出すのであれば、アサルトライフルより優れた武器は他にあったからである。
総じて不遇――これがプレイヤーが持つアサルトライフルの評価である。
続いて出すのがこちら「重力砲」である。
Tier1相当の特殊武器であり、弾数が一発しかないリロード不可の撃ち切り兵器。
敵を吸い込み継続ダメージを与えたのち、小規模な爆発で追加のダメージを与える武器であり、その威力は表記上は800となっているが、有志の調べでは理論値「800×800+16800」であると結論が出ており、敵の群れを一発で溶かすスペックを有している。
当然巻き込み事故が多発する兵装なので注意が必要である。
そんな切り札の一つなのだが……弾数が回復しておらず、残弾がゼロとなっている。
「……マジで撃ち切りとかあり?」
思わず素で呟いてしまうくらいにはショックだった。
念のためにレーザースライサーも見てみるがこちらもゼロ。
ならばとガトリングガンを見ると三割くらい残弾があった。
これを見て「あ、時間経過でちょっとずつ回復していくのか」と安心したが、一発しかないこの二つは回復時間がリセットされてないか心配になる。
一応ガトリングガンも少しだけ試射をしておく。
相変わらず発射までに時間がかかるが、それを帳消しにする連射性能である。
ちなみに数字すると380×1500とTier4相当とは思えない性能であり、撃ち切り兵器の強さがよくわかる武器となっている。
次は何を試そうかと思っているところに来訪者が現れた。
「もういいのか?」
そう言って近づくマリケスに黙って頷く。
折角人がいるので派手な武器でも使ってみるか、と取り出したのは近接武器。
Tier1ブレード「ムラサメ」である。
エネルギーを使用するので実質使用回数が存在する近接武器であり、その攻撃力は驚異の26000。
さらにエネルギー供給を増やすことで、放たれる斬撃となった光波は遠距離攻撃にもなる。
こちらは距離減衰が激しく、攻撃力は13000と元の値の半分だが、まとめて当てればそのダメージは言わずもがな。
但しエネルギー消費が激しく、強化服の使用時間も削る攻撃であるため、計画的な運用が求められる扱いの難しい武器である。
取り出したムラサメから伸びるコードを強化服のエネルギーパックに接続し、エネルギーの供給を開始する。
薄っすらと青く光り出した刀身を見て、物珍し気にムラサメを見るマリケス。
「魔剣みてぇだな」
地が出ていることを指摘せず、十分なエネルギーが貯まったことを確認。
光波として飛ばすと綺麗に的が消し飛んだ。
その光景を見てマリケスは感嘆の声を上げる。
「こういう武器を使う奴もいたな」とどこか懐かしむような眼をするマリケスだが、ムラサメはこれで終わりである。
続いて取り出すのがこちら――Tier1相当のレーザーライフル「スペクター」である。
これはライフル自体にエネルギーパックが取り付けられており、これを換装することでリロードする。
このエネルギーパックが他の武器に流用できたら良かったのだが……形状を見る限り無理そうである。
ちなみにエネルギー武器の弾数は基本的に「%」で表示されており、リロードすると100%に回復する。
レーザーライフルを構えて的に照準を合わせる。
まずはタップ撃ちでチュンチュンと目標を破壊。
次にトリガーを引き続けるレーザー照射で的を焼き切るように切断。
使用感はゲームと同じである。
攻撃力は680と一見弱いように見えるが、DPSで見ると上位に食い込む武器である。
これもアサルトライフル同様、単体向きなので「他でいいや」となって使用者はあまりいなかった。
「大分力を取り戻したようだな?」
これらを見たマリケスの感想に「ああ」とだけ返して次を出す。
しかし選択したのが専用武器だったせいか反応がない。
ガトリングキャノンを出そうとしたがどうやっても出てこない。
やはり専用武器はそれに合わせた状態にする必要があるようだ。
なのでここからはバトルアーマーを着用する。
変身するかのように瞬時に着用できるのも面白い。
ただ、当然ながらシステムが起動するまでに少し間があるが、これくらいならば戦闘中での変更も可能である。
気づけばマリケスが壁を背に腕を組んでこちらを見ている。
「次はない」
恐らくはまた俺が暴走する可能性を考えていたのだろう。
俺のその一言で満足したように頷くとマリケスは出て行った。
このロールプレイも板についてきたと思うが、意外と疲れるのはどうにかならないものか?




