2-15
何処までも広がる荒野をバイクが駆け抜ける。
その速度は音速を超えており、バイクの前面に張られたバリアが衝撃を後方へと流す。
バリアとの干渉により青い粒子をまとう姿はまるで弾丸のようにも見える。
真っすぐに突き進む先にあるのはデペスの群れ。
その接近に真っ先に気づいたのは中型のデペス、獣型タイプEだった。
二本足で立ち上がっていたが故に最初の発見者となり、最初の餌食となった。
バイクの上から放たれた弾丸は雷鳴の如き音を立て、タイプEの頭部を抉る。
続けざまに放たれた弾丸も全てその頭部へと吸い込まれ、タイプEの巨体が崩れ落ちる。
だが、それで倒れるほど中型の生命力は低くはない。
たとえ頭部を失っても動き続けるのが寄生体である。
六本の足は全て無事であり、全力で駆けることに一切の支障はない。
それを語るように走り出すタイプE。
その速度は瞬く間にデペスの群れの先頭に躍り出るほど早く、標的に向かって真っすぐに突き進む。
だがその巨体はあっさりと消失することになる。
バイクから放たれた大きな光がタイプEの胸から上を消し飛ばしたのだ。
その一撃で活動を停止した巨大な獣は強風に吹かれた砂のように霧散していく。
バイクに乗った男が武器を切り替える。
巨大なプラズマランチャーが消え、新たに出現したのはミサイルランチャー。
ロックが完了すると同時に全弾が一斉に放たれる。
一度上空に上がってから目標に向けて降下するバーチカルタイプのミサイルは、敵の進行速度に合わせた微調整は行わない。
命中さえすれば、その爆発でダメージを与える。
故に、上空から飛来するミサイルはその爆発に多数のデペスを巻き込んだ。
崩れた足並み、穴の開いた敵陣に突入したバイクからは無数の地雷が投下され、放たれたロケットランチャーの弾頭が正面の敵をその爆発で吹き飛ばす。
続けざまに放たれたロケットランチャーが巨大な爆発を起こし、さらなる穴をデペスの群れに開ける。
その穴を埋めるべく殺到するデペスの中に突っ込み、バイクは残骸を踏み越え宙を舞う。
それを待っていたように飛行型が立ち塞がり、バイクのバリアに阻まれながらも衝突する。
バイクの勢いは殺され、制御を失ったかのように回転する。
直後、バイクから伸びた一筋の赤い光が出力を増し、回転に合わせて円を描く。
二度、三度と描かれた円は周囲のデペスをまとめて切り刻む。
オーバーヒートしたレーザースライサーはその役目を終えたとばかりに消え、回転が止まったバイクの後方ではまき散らした地雷が爆発し、大量のデペスが弾け跳んだ。
バイクは再び前進する。
目指すは遠くに浮かぶかつての敵。
だが、それを邪魔するかのように阻む大量のデペス。
ならば全てを排除する。
バイクは再び音速を超え、再び前に立ちふさがるのは二体のキメラ型。
獅子の頭部と牛のような角、胴体は爬虫類に酷似しており、足は鳥類によく似た爪を持っている。
だが、最初の攻撃は伸縮自在の矢のように返しが付いた尾。
それを軽々と回避したバイクが二度目のプラズマランチャーを放ち、一体の胴体から上を消し飛ばす。
明らかな脅威――そう判断したのかは不明だが、もう一体のキメラ型は後方へと大きく飛んだ。
それに合わせてバイクへと殺到する小型のデペス。
対して放たれたのは一発の黒い球体。
バイクから見て右側、敵のいない上空へと放たれた球体は何もない空を真っすぐに進み――その本性を現した。
一瞬の膨張に続く凄まじい吸引。
襲い掛かるデペスを斬り飛ばし、球体とは逆の方向に進むバイク。
その意味を理解する思考を持たぬデペスは、球体が発生する重力に次々と囚われていく。
そして大気を震わせるような衝撃音とともに重力圏に囚われていたデペスがまとめて圧縮された。
残るは削り取られた大地と少しずつ塵へと変わる大きな球体。
だが、恐怖を感じることのない寄生体はそれでもバイクへと殺到する。
残弾のなくなった重力砲が消え、新たな重力砲が出現する。
黒い球体がごっそりとデペスを削り、放たれたロケットランチャーの弾頭が大きな爆発を起こし道を作る。
作った道をバイクが走る。
その側面を大地ごと吹き飛ばす存在が現れる。
二体の獣型タイプEが立ち塞がり、宙を舞ったバイクが隙を晒す。
だが、その直後にバイクは消え、男は鎧を身に纏う。
中型の腕の一振りから逃れるようにブースターを使って急降下。
デペスの上に勢いそのままに着地すると同時に轟音が響く。
頭部に撃ち込まれた鉄杭が内部でも爆発を起こし、昆虫型が弾け跳ぶ。
バトルアーマー――両肩、両腕合わせて四つの武器スロットを持つ真っ黒な重装歩兵が立ち上がる。
両肩のガトリングキャノンが回転を始め、突進してきた昆虫型を片手で受け止める。
ブースターが火を噴き、その突進を僅かに左足を引いただけで止めるや否や、再び轟音が響き、破裂したデペスの残骸を投げ捨てる。
ガトリングキャノンの準備が完了し、高速で放たれる弾丸が正面の敵を削り殺す。
さらに両腕に現れたガトリングガンも回転を始め、合計四門による一斉射が中型すら削り切る弾幕となって周囲を一掃する。
自動照準に切り替えたガトリングキャノンは目につく敵を片っ端から細切れに変え、両手のガトリングガンは前進に必要なルート確保のために用いる。
ブーストダッシュで前に進むが、重装甲を売り物とするが故にその速度は決して早くはない。
敵の数は減るが弾も減る。
大量の装弾数でもあれだけの速度で撃ち続ければすぐになくなってしまう。
空になったガトリングキャノンをレーザーキャノンに切り替え、正面の敵を薙ぎ払うが、再び現れたキメラ型はそれだけでは倒せない。
ガトリングガンも弾切れとなり、手にした武器は巨大なハルバード。
バトルアーマーを着込んでなお、両手での使用を余儀なくされるサイズは生身の人間では扱えぬ3メートル超え。
それ自体にブースターが取り付けられた両手武器を使い、地面を滑るように小型のデペスを切り裂いて進む。
中型の攻撃を避け、小型を切り裂きながらもレーザーキャノンでキメラ型を追い詰める。
そこに突進してきたのは獣型のタイプE。
損傷を気にせぬその巨体をぶつけるような突撃は、確かにバトルアーマーを直撃した。
だが、展開されたシールドにその威力を殺し、逆にその勢いを利用してバトルアーマーが宙を舞う。
エネルギーを使いすぎたバトルアーマーを脱ぎ捨てるには絶好の機会――これをわざと被弾することで作り出し、新たに装着したジェットパックで宙に制止。
武器スロットが近接と合わせて2つしかないが、空中機動が可能となる高機動形態。
その腕に装着するのはレーザースライサー。
振るわれた腕から放たれる一筋の赤い光が二体の中型を小型諸共切断する。
倒れ行く中型を見届けることなく、最大出力で飛行を開始。
大量の飛行型デペスが群がるも、これをレーザーライフルとブレードでさばきながら前進する。
退路は既にデペスで埋め尽くされ、全方位が敵となる。
故に高度を上げる。
上空からの爆撃ほど、大群を削るに適したものはない。
重力砲はバイクの武器スロットでは使い切った。
だが、まだ二つのスロットが残っている。
そのうちの一発を地上へ向けて放ち、さらに上空へと上がる。
見つけた標的は射程圏内――だが、位置が悪い。
ドローン空母しかり、連中の外壁を突破するには相応の手段でなければ成功しない。
「この距離では無理だ」と煮え滾る心を抑え込み、冷静に戦闘を続ける男は発生した重力に抗いながら飛行型の対処を行う。
重力弾が消え、全力飛行を再開したところでドローン空母の下部が開く。
大量のドローンが投下され、敵と認識したものに向けて一斉に飛び立つ。
放たれる光弾を回避し、すれ違いざまに刀身が光るブレードで両断。
高度を落としながらも進み続けるが、エネルギーが底をつく。
ジェットパックを解除し、空中でバイクへと飛び移る。
慣性だけでは速度が足りず、ドローンの攻撃がバイクに直撃。
バイクの耐久は削れるが、最高ランクのビークルはそうやすやすと壊れるものではない。
機雷を空中から後方に向かってばら撒き、昆虫型のデペスに着地して加速をするが、バリアを展開しなければならない速度には到達しない。
次々と武器を切り替えて正面のデペスを排除するが、敵の層が厚すぎて前に進む速度が落ちる。
敵の攻撃は激しさを増し、バイクの損傷が無視できないものになっていく。
そして限界を迎えたバイクは後輪を失い、手遅れになる前に引っ込めると同時に次を出す。
性能こそ劣れど、この敵に囲まれた状況なら適合するブレード付きのバイクに跨る。
前輪に装着した一対のブレード発生装置はバイクに装着されたエネルギーを使って展開する。
故に稼働時間は短く、相応の技量が求められる。
しかし要求される全てを満たした男がいる。
ならば、この状況は適合しており、ブレードを展開して走り出したバイクは劣勢をひっくり返す勢いで駆け抜ける。
縦横無尽に駆け抜けるバイクが敵を切り裂き、放たれる銃弾が敵を倒す。
飛び交う無数の光弾はデペスを焼くばかりで、敵陣を走るバイクに当たる弾は極僅か。
それもシールドで減衰するのでダメージは軽微に抑えられる。
だが、その分エネルギーを消耗した結果、ブレードからは光が消え、バイクは切断できなかったデペスによって急ブレーキをかけ減速し、その車体を大きく傷つける。
投げ出される慣性に逆らわず、バイクを消して再びバトルアーマーへと切り替える。
こちらもランクは下がれど攻撃的な性能故に適合する。
背中に背負ったミサイルランチャーから大量のミサイルが上空に向けて打ち出され、着弾を確認することなく別の武器へと変更。
肩武器のスロットをグレネードランチャーへと切り替え、正面に向けて同時に発射。
大きな爆発と爆風が敵の群れに穴を開け、そこに飛び込みながら両手に持った重機関銃を乱射する。
そうやって一歩一歩、確実に前進していくと辿り着いた。
まともにリロードもせず戦い続けていた。
使える武器がなくなるのが先になるかのチキンレースを制し、限界を迎えたバトルアーマーをパージする。
その手に持つは大型スナイパーライフル。
周囲の敵を一掃した直後の僅かな機会。
ドローン空母は何度目かもわからぬ戦力を投下する。
開口部目掛けて放たれた銃弾は雷鳴を響かせ、投下されるドローンを貫き、内部に届いた弾丸は本体への致命的な一撃となる。
内部から起こる爆発に姿勢制御すら困難となった空母は傾き、高度をゆっくり落としていく。
そして、重力に従い加速していく物体は地面に落ちると大爆発を起こし、周囲のデペス諸共爆散した。




