2-8
現状の彼女らの戦力と戦術を確認し終わったところで、俺は腕を組んで天井を見上げる。
このちぐはぐっぷりには「この話はやっぱりなかったことに……」と言いたくもなる。
それを察してかレイメルとリアディの二人が俺の腕を掴んで抱え込む。
逃がす気がないのはわかるが、戦術として有用なのかの確認と割り切っているので信用してほしいものである。
(よくよく考えたら見た目は若いけど年齢は不詳なんだよな)
恥じらいがないのは文化の違いか、それとも年齢か?
俺は大きく息を吐いて「逃げるのは諦めた」と降参のジェスチャー。
通じるかどうかはわからなかったが、ちゃんと通用したらしく、左右の二人は満足そうに頷いて離れてくれた。
(まあ、四つの武器スロットをフル活用するんだから弱いはずはないんだよ)
問題はリロードだ。
弾薬を出せるのが俺だけなので、肝心の本人が火力を出せなくなるのだ。
「それで俺っちを頼るのは間違ってない。何でも屋だからな。何でもはできないが、何でもやるぜ?」
最後が疑問形なのはこの結果を予想していたからか?
「まあ、そうなるよなー」とジョニーの予想通りだったらしく、俺の銃の弾倉自体は作ることができた。
だが、マガジンの中身までは再現できず、弾を一発一発作ることが限界だった。
「元々箱は再現できても中身までは無理だったんだよなー」
だからこうなるのは予想していた、とジョニーはクルクルと器用に弾丸を指の上で回している。
それにどうも再現率があまりよろしくないらしく、実用はお勧めできないとまで言う始末。
「魔法技術比率が低すぎんだよー。これでどうやってあの威力を出してんのかさっぱりだ」
ジョニーのこの言葉には「俺も技術的なことはさっぱりだ」と言う外なく、ゲームの攻撃力が適応されている謎はそのまま残ることになった。
仮に「ゲームだからだよと」全てを打ち明けたとして、それで何が変わるのか?
そんな例をどれだけ探しても見つからなかったのだから、研究対象になる可能性を考慮すれば話せるはずもない。
規定外領域に到達しているとは言え、俺が解析されることでそれ以上の戦力が手に入る可能性があるのであれば、やりかねないのがこの世界。
最悪は実験動物、という結論を出した時には「ここならやりかねん」とエデンを擁護する反論が出てこなかった。
なのでこの話は最後まで秘密のままとする。
とまあ、色々と試してみたところ、結局俺が弾薬を出す役をやるしかなく「武器を借りるのであれば、ポイントの計上をどうにかするようにエデンに申し入れること」と交換条件を出すくらいしかできなかった。
「使うのは突撃銃と狙撃銃かい?」
そう言って俺が出したアサルトライフルとスナイパーライフルの手に取って見比べるレダ。
「現状性能が高いのがこの二つだ」
バイクも出してさらに二丁追加で出す。
センチュリオンを手にして複雑そうな顔をするウィーネリフェルト。
スナイパーとして何か思うところがあるのだろう。
念のために「壊すなよ」と言っておくが、流石にその心配は杞憂だろう……返事はないけど大丈夫だよな?
取り敢えず全員が最低限銃を使用できるように交代で射撃練習を行う。
銃がメインウェポンの三人は特に説明する必要もなく使うことができたが、それでもセンチュリオンの反動は厳しいらしく、使用するのはアサルトライフルを選択。
唯一センチュリオンの反動に耐えることができたのがアーシダ。
但し命中率はお察し。
銃を使ったことのない人間にいきなり使いこなせと言う方が無茶である。
結局、一名を除いて全員がアサルトライフルとなった。
その一名はと言うと……まさかのお散歩要塞ケイである。
「うるさいからヤダ」
まるでお子様の我儘の如く銃の使用を拒否。
だが元々銃の数が足りていないのであっさりと受け入れられる。
それでもこれだけの人数分アサルトライフルは用意できない。
どうしたものかと考えた挙句、俺はあることを思いつく。
(要するに武器スロットが増えればいいわけだ)
そう、バイク二種を同時に出せば武器スロットが一つ増やせる。
早速試したみたのだが……どうやらビークルは一度に一つしか出せない模様。
これでゲームの時と同じように、バトルアーマーやジェットパックと同時にビークルが使用できなくなる可能性が高まった。
「もう少しエレガントなものはございませんの?」
「お前は何を求めているんだ?」という顔でアネストレイヤに訓練に戻るよう促す。
火炎放射器とかなら気に入るのかもしれないが、生憎とその手の武器はまだ解放されていない。
「ビームマシンガンとか反動の少ないやつが俺っちの好みなんだが?」
残念ながらそれもない。
まとめて全部薙ぎ払うような――そんなものがあったらここにはいない。
と言った感じのやり取りを繰り返しながら本日の訓練は終了となった。
そんなわけで翌日となり、決めていた時間通りに全員が集まり訓練開始。
「折角だから一つ検証したい」
俺がそう言うと興味深そうに全員がこちらを見る。
「以前アリスが言っていたように『弾薬を取り出す際の消耗』を確認したい。霊装に付属している弾薬パックとバイクに取り付けてあるものとの違いもわかれば、今後の戦闘で大きなミスがなくなると考えられる。この訓練も俺にとって無駄ではない」
つまりお前らは強制参加。
それを暗に伝えると明らかに嫌そうな顔をする研究職のリアディ。
銃を使う気のないちびっ子は無表情で我関せずの態度を決め込んでいる。
こいつら以外は概ね協力的。
英雄と称されるだけあって、訓練に費やす時間がどれだけ多くとも文句はないようだ。
「つまり、今日は一日中お前さんに影響が出るまで撃ちまくれ、ってことだね」
レダが「言質を取った」とばかりに笑みを浮かべてアサルトライフルを受け取る。
「いつまでもつか見物ね」とウィーネリフェルトも銃を掴む。
溜息を吐くリアディと無言のアーシダもバイクの上に置いたアサルトライフルを手に取った。
残った者たちは自分の順番が来るまでは各自訓練を行う。
そうして日が暮れるまで彼女らは交代で銃を撃ち続けた。
「どうしてピンピンしてますの?」
アネストレイヤの言葉に「俺もわからん」と首を傾げる。
あれから十時間以上休みを挟みながらも彼女たちは撃ち続けた。
弾が無くなるとすぐに弾薬パックから弾倉を取り出し、彼女らに手渡すという作業を十時間も続けたのだ。
だが我に影響なし。
どうやらこの程度では俺は消耗しないようだ。
もしかしたら弾薬は幾ら取り出しても消耗しないのかもしれない。
「まあ、検証としてはこれくらいでいいか」
俺がそう呟くと「やっと終わったか」と四人が銃から手を放す。
「流石に少し疲れました」
大きく息を吐くレイメルと大分お疲れの様子のリアディが同意している。
見た目通りと言うかアーシダはこの程度では全く疲れを見せておらず、レダも同様に問題なし。
他は疲れが見えるがこれくらいなら問題はない、と言ったところだろう。
若干一名参加していないちびっ子が暇そうにボリボリとバニラ味のレーションを食べている。
本日はこれで解散となったのだが、別れ際に何人かにレーションを強請られた。
理由は「疲れたから」や「甘いものが欲しくなったから」と俺に消耗が見られなかったことで、予想外に長時間の拘束になった。
こちらとしても得るものが大きかったので、報酬代わりと思って大人しくレーションを取り出した。
微量とは言え、回復効果もあるらしいのでフルーツ味を出して配る。
合計四本しか入っていないが、レダが辞退してくれたお陰で四人に一本ずつ配り終え、俺はスムーズに自室へと戻ることができた。
何気なく俺も端末を見ながらレーションを食べる。
情報収集で時間を潰し、翌朝となり食堂に向かうと不機嫌なアネストレイヤが俺の前に立つ。
どうやら昨日食べている最中のレーションが消えて口の中を嚙んだらしい。
流石にそれを俺の所為にするのはおかしい。
気づけば周囲には人が増え、今日も訓練をする面子が揃っている。
大して美味くもない朝食だが、大勢とまではいかないまでも、人と一緒に食べる飯も悪くはない。
これが終わればまた訓練。
気づけば揃って昼食も、夕食も食べていた。
そんな穏やかな日々が繰り返されるが、それは長くは続かなかった
突如鳴り響いたサイレンがそんな毎日に終わりを告げる。
さあ、出撃の時間だ。




