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1-3

「1000の男『マリケス・ディトリッジ』だ」


 そう言って爽やかにポーズを決める槍使いの男。

 ぴったり1000の数値を叩き出して縁起でも良いのか、金髪をかき上げて上機嫌で戻ってくる。

 胸元ががっつり開いたぴっちりめの服装、無駄に洗練された無駄な仕草から多分色男キャラだと思う。

 というかどいつもこいつも顔面偏差値が高すぎる。

 その後も次々と英霊が柱に攻撃を加えるが、四桁を叩き出す者は中々現れない。

 これだけ数がいるのだからアタッカーでない英霊もいるのだろう。

 サポート型と思われる神官風の女性は158という数値に不満気な顔をしており、ゲームに出てきそうな露出度の踊り子のような英霊に至っては三桁にすら届いていなかった。

 平均すると600~700くらいだろうか?

 大雑把な計算なので合ってるかどうかは不明だが、一人また一人と計測を終え、残っているのは俺だけとなった。

 気づくのが遅れてアリスから「あなたで最後です」と促される。

 俺は腕組みを止めて柱に向かって歩き出す。


(しかしどうやって攻撃したものか……)


 他の英霊たちは武器を持っていたり魔法を使っていた。

 ならば俺にも何か武器があってもおかしくないのだが……ベルトに装着しているコンバットナイフ一本しかない。

 俺と同じタイプと思しき英霊もいたが、そいつは何もないところからレーザー銃を取り出していた。 

 つまり俺も同じことができるのではないか?

 そう思って「武器、武器。何でもいいから武器よこせ」と強く念じていたところ、よくわからないが手応えがあった。

 何か出てくる――その直感が俺の右手を握らせた。


「これは……」


 俺の右手に握られていたのは見覚えのあるアサルトライフル。


「英霊は生前持っていた武器を最初から持っている場合と必要に応じて具現化するケースがあります」


 近くにいるアリスが俺の呟きに反応して説明してくれる。

 説明はありがたいのだが……よりにもよって初期武器が出てくるとは思わなかった。


「特にその者にとって『思い入れの強い武具』が選ばれる傾向にあります。中には複数の武具を同時に具現化する英霊もおりますが……私が知る限りでは三人だけです」


 俺は「なるほど」と頷いてゲームで愛用の銃を思い浮かべる。

 しかし初期武器の出し入れはスムーズに行えるものの、他の武器が出てくる気配が一向にない。

 色々と試してみるが何も起こらず首を傾げる。


「さっさとしろよ」


 しばらくそうしていると堪え性がないのかデイデアラが苛立った声を上げる。

 仕方なしに俺は初期武器を構えて1マガジン分の弾を柱に叩き込む。

 撃ち切った空の弾倉を自然な手付きで取り外し、弾薬パックの中から新しいものを取り出して銃に取り付けリロードを完了させた。


「……12、です」


 英霊たちもその数値が予想外だったのか、首を傾げたりポカンと口を開けたりと様々な反応を見せている。


「あの、本気でやっていただけますか?」


「少し待て」


 先ほど俺は初期武器を撃ち終わった後、リロードして空になった弾倉を地面に落としたはずだ。

 ではその弾倉は何処にある?

 何処にもない。

 腰に装着した弾薬パックから新たな弾倉を取り出し、リロードを完了させる一連の流れはゲーム時代のままだった。

 では今の弾薬パックはどうなっている?

 パックの中身は空っぽだ。

 俺はアサルトライフルの引き金を引いて一発だけ柱に弾を当てる。


「……12」


 表示された前回と同じ数値を俺は呟く。

 そして弾倉に弾を残したままリロード。

 床に落ちた弾倉は消え、弾薬パックには真新しいそれが入っていた。

 その結果に俺は「なるほど」と声に出し、柱に近づくと逆手に持ったコンバットナイフを体重をかけて刺し込む。

 柱に映った別の意味で見覚えのある自分ではない自分の顔。

 驚愕はなく「そうだよな」と思うだけに留まった。


「8です」


 アリスの声に俺は「やはり」と頬を僅かに吊り上げる。

 俺はこの青い柱を「攻撃力を測る装置」と認識していた。

 そこに初期武器の「12」という数値に加え、コンバットナイフの「8」だ。


(初期武器の攻撃力は120。ナイフは80だからゲームの武器攻撃力の十分の一がこの柱の表示となる。となればカスタムパーツとレベルアップで攻撃力を最大まで上げたあの武器ならば……)


 使い勝手は良くないが、攻撃力だけを追い求めたロマン砲は単発85000という数値を叩き出す。

 柱での表示は8500と最高記録の約四倍である。

 さらにDPSを重視するならこれよりも強力な武器は幾つもある。

 とは言え、俺が愛用していた大型スナイパーライフルはフルカスタムで12400の攻撃力。

 敵の小型宇宙船を確殺できる一撃を放てるように調整したとは言え、英霊という存在はこれに匹敵する攻撃力を持っていることになる。

 DPSで負ける気はないが、英霊というのは本当に同じ人類なのか疑わしく思えてきた。

 その英霊たちからの視線が厳しいものになっている。

 それを無視して俺は壁に向かって歩き出す。

 しかしそれを妨害する人物が一人。

 俺の前に立ち、両手を広げてアリスはこちら睨む。


「悪いが、まだ手の内を明かすつもりはない」


 俺の淡々とした言葉にアリスは大きな溜息を吐く。


「本当にいるんですね。こういう人……」


 どうやら実力を隠す英霊は毎回何人かはいるらしい。

 アリスは英霊召喚に立ち会うのは初めてだそうだが、前任者やこれまで記録から大抵数人はこちらを信用せず、実力を隠すような素振りを見せるそうだ。

 ただ俺のように「ここまであからさま過ぎるやり方は今までなかった」とのことである。

 流石にこのままでは心象が悪いと判断。

 俺は具現化したアサルトライフルをアリスに見せる。


「こいつはな、俺が兵士となった時に支給された武器だ」


 言葉の意味がわからないであろうアリスに俺は補足する。


「確かに思い入れは強い。だが俺が戦場で使っていた武器は、敵の技術を解析して作られた武器だった。流石にこれでは力不足だとわかっている。他にしようと思ったのだがな……」


 上手くいかなかった、と肩をすくめてみせる。


「……強力でも思い入れはなかった、ということでしょうか?」


「わからん。だが、今はまだ使えないことと無関係ではないだろう。とは言え、今の手札をさらけ出す気がないのも事実だ」


 俺の釈明じみた説明にしばらく無言だったアリスは深く息を吐く。

「仕方ない」とは口にしなかったものの、それ以上の追求は諦めてくれた。

 しかし最後にアリスから一言あった。


「自己紹介を忘れないでください」


 そう言えばそうだった、とこちらを見ている英霊たちに向き直る。


「地球軍参謀本部、特務強襲部隊スコールチーム所属――」


 本名か、それともゲーム名か?

 どちらを名乗るかという一瞬の迷い。

 だが、答えはすぐに出た。


「スコール1だ」


 思うところはある。

 だがこの姿ならば、こう名乗るのがきっと正しい。

実は初代と4しかやっていない。

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― 新着の感想 ―
わーれらは、ほーへーいー〜♪
EDF!EDF!
EDF!EDF! いや、何故か言わなきゃいけないような気がして。 気のせいですよね、はいw
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