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MP5の腰撃ち特化をもっと早くに知りたかった。
今回のリザルト
・Tier3スナイパーライフル
・Tier8ショットガン
・Tier8アサルトライフル
この結果に大きく息を吐く。
ようやく出てきた高ランク武器。
喜ぶのは当然だが、出てきたのはTier3のスナイパーライフルである。
Tier3以上の高ランクにはこのスナイパーライフル「センチュリオン」のように英数字ではない名前が付くものがある。
そういう武器は得てして高性能なのだが……このセンチュリオン、非常に癖が強い。
強いか弱いかで言うなら間違いなく強い。
こいつは威力に特化したスナイパーライフルであり、その数値は未強化で8800というTier2の攻撃力8500を若干上回る。
但し装弾数がたったの4発しかなく、マガジン火力ではTier4は疎かTier5にすら及ばない。
おまけに反動が非常に大きく、理論値以外でのDPSには期待できないときた。
ただ攻撃力はでかいので、一撃で確殺することが求められる場面では重宝される高ランク武器である。
今回は武器が三つだけだったが、被った武器はリザルトに表示されないとかあるのだろうか?
まだまだ試行数が少なく確実なことは言えないが、敵が弱くとも高ランクが出ることがわかったのは僥倖である。
しかしそうなると如何なる条件で出るのかを知りたくなる。
ゲームでは敵の強さに応じて出るランクが決まり、何が出るかはランク毎にランダムだった。
この法則が適用されないとなった場合、全武器がランダムに出る、ということになるような気がする。
その考えに「まさかガチャなのか?」と動悸がおかしくなる。
爆死経験者ならば誰しもが持つトラウマが蘇りそうになったので、慌ててその可能性を否定する。
そう、今回はきっと僕っ子の加護がはたらいた結果である。
ならば俺がすべきは今後も加護があることを祈るだけだ。
ちなみにTier8のショットガンとアサルトライフルは威力を強化したくらいしか変化はないので割愛する。
ということで早速試射のために訓練場へと足を運ぶことにした。
予想外の欠点……いや、欠陥が判明した。
この新スナイパーライフルの反動がでかすぎて今の強化服では扱いが難しい。
重量はあるが、そちらはこれくらいならまだ大丈夫だ。
だが反動が「マジでヤバイ」と思わず口から弱音が出るくらいにはきつかった。
撃った反動で180度回転しそうになる。
つまりぶっ倒れそうになる。
これを無理に抑えようとすると背骨が折れるのではないか、というくらいには背中に負荷がかかるのだ。
(こういう時は逆に考えるんだ。折れちゃっていい……わけないから、反動の方だな)
つまり反動で大きく上体が後ろに反れるのであれば、いっそのこと加速してやろうと考えたのだ。
結果、撃った反動で後ろに飛んで一回転という回避行動も兼ねた狙撃になった。
背中に問題はないが、中々に意味不明な動きである。
現状俺の射程で撃ち合うような敵がいないので、本当に「無駄な動き」以外に感想がない。
背中に負担をかけるか、無駄な動きをするかの二択かと思われたが、ここで俺は新たな選択肢を見つけ出す。
それがこちら――俺はスナイパーライフルを構え、的に向けて撃つと同時に武器を変更する。
そしてすぐにまたセンチュリオンを取り出して反動を最小限に抑えることに成功した。
これは過去作のゲームでも使われていたテクニックである。
大きすぎる反動を武器の切り替えで消すやり方はVR化する前の作品ではできていた。
四作目以降はVR化によってこの手の挙動はできなくなっていたが、エモキャンができるのであれば、十分可能性はあったので試した甲斐があったというものだ。
的を見るときっちり破壊されており、武器の変更で撃った弾が即座に消失するようなこともない。
これならば地雷のような時間差で使うタイプの武器も使い方次第で化けそうな予感がする。
ともあれ、成功したのはまだ一回のみである。
続けて正常に射撃ができるのか?
それを確かめるべく、俺は射撃訓練場で練習をすることにした。
予想通りと言うべきか、ゲームで知っていた知識を実際に使用する場合、思い通りに体が動くとは限らない。
それを示すようにこの射撃法を完璧に続けることが今の俺にはできなかった。
凡そ五回に一回くらいはタイミングが僅かにずれ、大きな反動が俺の体に残ったのだ。
「ま、これは要練習だな」
失敗はあれど成果はあり。
俺は気分良くそう呟くと時間が近いので、訓練を終了して作戦室へと向かった。
相も変わらず集まりの悪い戦闘詳細報告。
特に今回は十人くらいしか参加していない。
「まあ、あれが相手では仕方ないか」と思うし、気持ちもわかる。
ボリボリと昼食代わりのレーションを食べながら、モニターに映る戦況を解説するジェスタの話を聞く。
「ここでエルメシアの広範囲攻撃で大体半数が消えたな」
ジェスタの言葉に一人の女性へと周囲の視線が集中する。
そう、なんとエルメシアが初出席である。
「戦果の独り占めはよくない、と聞いていましたから、ここは潔く引かせていただきました」
「何か問題でも?」と言わんばかりにこの後の勝手な撤退を弁明する。
これに関してはジェスタも少し困り顔。
これが苦戦をするような相手ならば問題になった。
だが、敵はいやらしいだけであって苦戦は疎か、怪我人が出るような相手ですらなかった。
そのため、ジェスタとしてもエルメシアの言い分を聞き入れる外なく、この撤退は彼女の言い分が通ることとなる。
彼女が残って戦っていれば、あの毒液を食らうことがなかったかもしれない者には不満が残るだろうが、優先すべきはデペスの殲滅である。
今回の件は戦果以外で問題にできる部分はなく、その戦果の大部分をエルメシアが持って行ってしまっている。
これが今回の無断撤退は不問という流れの大きな理由だ。
その決定が下された時のエルメシアの「それ見たことか」という見えないドヤ顔に周囲がイラっとしているのがわかった。
それを見てさらに彼女がいい気味だとばかりに上機嫌になるのだから火に油である。
どうやら俺の知らないところで小さないざこざでもあったようだ。
「煽り耐性が低かったり意外と精神年齢低いな、こいつ」と俺はいつものポーカーフェイス。
本当に英霊という連中はどいつもこいつも一癖も二癖もある。
(このやり取りを俺からレーションを強奪して笑いながら見ているお前のことだぞ、デイデアラ)
口には出さないが、黙って睨むくらいはしてもこいつは動じないし気づきもしない。
「そう言えばこいつも初出席な気がするな」と初回にいなかったくらいしか記憶がなかったことに気が付く。
こんな具合に今回の詳細報告も無事……と言ってよいかはわからないが、大きな問題が起こることもなく終わりを迎える。
問題があったのは終わった後、である。
俺が名前も知らない英霊――和風のような中華風のような、そんな感じの要素が混ざり合った武士のような男が、エルメシアに対して一言嫌味を言ったのだ。
「気まぐれで戦われては、こちらもたまったものではないのだがな」
わざとらしく溜息を吐いて聞こえるように独り言を吐く武士もどき。
「ああ、安心していいわよ。今後はちゃんと戦うから」
それを「しっかり聞こえてますよ」とばかりに煽るエルメシア。
「信用できるか」という声が何処からか上がったが、それに全く反応しない辺り「戦うこと」に関してはどうやら本当のようだ。
「何が目的だ」
疑いの眼差しで追及する武士もどきだが、それを挑発するような口調でエルメシアが答える。
「あら? 戦って得られるものなんてポイントくらいしかないじゃない。もしかしてあなた……」
「ポイントの使い方がわからないの?」と馬鹿にするように笑みを浮かべるエルメシア。
漂い始めた険悪な雰囲気……そこに俺が空気を読んで参戦する。
「つまり、お前は戦果ポイントのうまい使い道を見つけた、というわけだな」
俺の言葉にエルメシアは面白くなさそうに鼻で笑うと無言で背を向けて去って行く。
どうやらいきなり正解されたのが気に食わないようだ。
武士もどきは武士もどきで考えを同じにする連中と一緒になって非難している。
「あれのどこが英霊だ」という怒りの声が聞こえるが俺はこれを無視して廊下へ出た。
「あーあー、群れなきゃ何もできない連中は大変だねぇ」
これを見ているだけだったデイデアラがそう言って笑う。
確かに彼らはまだ俺が名前すら憶えていないくらいには目立ったところがない。
何か問題を起こすわけではなく、行儀よくエデンで共に戦っているが……華々しい戦果も功績もあるわけではない。
そんな彼らから見て、明らかに頭一つは抜けている実力者……しかも非協力的であるとくれば、力不足を自覚する者たちで徒党を組むことは間違いではないと思う。
俺のように力もないくせに孤立する方がおかしいのだ。
とは言え、彼らの危惧も理解できる。
彼女は色々な相手から危険視されている。
俺自身、一度エルメシアと模擬戦をしており、彼女に対してあまり良い印象はあるけどない。
恐らく向こうもこちらに対して良い印象などないだろうが、二度目があるかと問われれば「多分ない」くらいにはエルメシアについて知ったつもりだ。
だが、これが間違っている可能性だって十分ある。
なので俺は動くことにした。
俺はアリスを探してエデン内部をうろついた。
通信手段はあるが、記録に残る可能性が高いのでそちらは使わない。
ということで廊下でばったりとアリスに出くわすことに成功した俺は彼女を呼び止める。
話すは本日の作戦詳細。
そこで起こった小さな諍いとエルメシアの不穏な言動。
「彼女がポイントを何に使っているかを教えてほしい。情報料としてこれまで稼いだポイントを全て支払おう」
俺は幾分表情を引き締め、キリっとした顔で支給されている端末をアリスに差し出した。
アリスは頷き、俺から端末を受け取る。
やはりこういう使い方もできるようだ。
あのエルメシアが何かを企んでいる可能性がある。
ならば少々財布に痛いが、これは必要な出費である。
端末を操作するアリスが俺を見上げて口を開いた。
「あの……ポイントが、足りません」
アリスの申し訳なさそうな言葉に、俺は思わずポーカーフェイスを崩してしょんぼりとしてしまった。




