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残存するデペスの処理を開始したのは良いのだが、如何せん元の数が多い上にそれらの一部が散らばってしまったことで移動に時間を取られている。
戦争においては撤退する敵への追撃こそが大きな戦果となるが、それは人間同士の場合であり、引くことを知らないこいつらはどんな状況であっても突撃あるのみとなっている。
にもかかわらず俺に向かって突撃してくるわけではないのだから余計に時間がかかる。
(これまでの動向から考えると俺に向かってきてもおかしくないんだがなぁ)
この状態に疑問を感じて首を傾げつつ、俺はスナイパーライフルの引き金を引いてはぐれた小型デペスを一体倒す。
バイクのエネルギーは有限であるため、さっさと終わらせたいのだが……こうして群れからはぐれる個体がいる所為で、敵の位置を把握するためジェットパックへの換装とビークルの呼び出しを交互に行い、発見したデペスを処理している、というわけである。
勿論群れとしてまだ存在している団体様が二つほどある。
だが、こいつらを放置して見失うのも後々考えると面倒なことになりそうなのだ。
だからはぐれ個体を処理しつつ、残った群れに向かっているのである。
(しかしこいつらはどういう理屈で群れから外れるように動いているのか……)
滅殺ミサイルの爆風と衝撃で何か狂ったのだろうか?
それで俺に向かうでもなく変な方向に進んでいる。
「まあ、有り得るか?」と首を傾げつつもはぐれ個体を撃破。
これで見えていた周辺の群れにいない個体は処理が完了したはずである。
確認のためにジェットパックに換装して上空へと飛び立つ。
やはり周囲の散らばった個体は全て処理が完了している。
但し、遠くに見える何処に行ったのかわからん連中までは手が出ない。
流石に距離があり過ぎるし、何より下に見える群れを無視することはできない。
「急いで終わらせれば間に合うか?」
豆粒のように小さく見えるデペスを見ながら俺は呟く。
どちらかと言えば間に合わない。
しかしここで残してそれが面倒なことになれば後悔する――その可能性が頭を過った俺は文字通り敵の全滅を目指すことにした。
そうと決まれば話は早い。
近い方の群れへと全力でブーストを吹かし、エネルギーが無くなれば別のジェットパックへと換装して飛行を続ける。
そして十分に距離が近づいたところで取り出したるは重力砲。
広範囲の敵を手早く倒すならこれに限る。
当然敵のど真ん中に撃ち込んで最大効率を叩き出す。
俺自身は自然落下で高度を落とし、着地の衝撃をブースターを使って緩和。
地面に足を突くと同時にバトルアーマーへと換装し、四門のガトリングによる一斉掃射を開始する。
射程内のデペスを殲滅すればバトルアーマーを解除してバイクを出す。
ここからはロケランとグレネードによる爆殺タイム。
元の規模からすれば確かに小さいが、小規模襲撃くらいの数はいるのでレーザースライサーを前方に向けて二発使用して時間短縮を図る。
そんな感じに周囲のデペスを一掃した。
「まあ、手早く処理できたのではなかろうか?」とジェットパックで上空から確認する俺は満足気に頷く。
(残るもう片方の群れもこの調子で対応するとして……ああ、やっぱりもう見えないかー)
もう片方の群れからはぐれた連中だが、この高度ではもう確認できない位置まで離れてしまっていた。
こうなるとそちらは諦めざるを得ない。
もしかしたら正気を取り戻して群れに戻った可能性もあるが……流石にそちらは期待薄である。
「こうなるなら中型を少しだけでも残しておくべきだったか?」
中型がいれば小型の統率が取れる。
それを利用すればこのようなことにはならなかったのではないか?
「失敗したな」と口に出して反省するが、これと同じ状況が果たして再び訪れることがあるのか?
それを考え、頭を振った俺は地上に降りるとバイクを出してもう一つの群れへと向かう。
残業はさっさと終わらせるに限る。
エネルギーは心許ないが、俺は全速力でバイクを走らせた。
ロケットランチャーの爆風がこちらにまで届く。
これで最後と思って少々雑に撃ちすぎてしまったようだ。
反省しながら周囲を見ると敵影はなし。
結局、こちらでも重力砲とレーザースライサーを使用した。
思ったよりもこちら側は数が多く残っており、レーザースライサーとガトリングが弾切れ。
重力砲も残すは一発のみの大暴れであった。
ジェットパックへと換装し、上空から見下ろすも敵影はなし。
どうやらこの一帯は殲滅が完了したようだ。
(やはり散らばった一部を取り逃がしたのが気になる)
いっそのこと追撃してみるか?
そんな思考が一瞬頭を過ったが、それでおかわりが発生するのは勘弁してほしい。
敵の主力はこちらだろうが、他の方角からも来ている可能性が高い。
何百万といる中の七割……下手をすれば八割を一撃で消し飛ばし、地形を変えたミサイルの威力を改めて上空から見下ろす。
「やっべぇな、これ」
思わず口に出る感想だが、語彙力が不足しているのかそれくらいしか出てこない。
食レポとか一生無理だろうな、と思いながら戦闘終了の合図を待つが……そこでこの戦闘が一方面のものであり、他はまだ戦っていることに気が付いた。
いつもそうだったので信号弾を待ち続けるところだった。
「いやはや、慣れというのは怖いものだ」と地上に降りてバイクに跨る。
戦闘開始はこちらが一番早く、切り札を切った上に時短狙いで全力を出したのだ。
恐らく今回は一番最初に戦闘を終わらせたはずである。
俺はこの戦闘の報告をどうするかと考えながらバイクで荒野を走る。
滅殺ミサが思った以上に強力であり、予想を超えた戦果となったことを話すか否か?
あれを脅しの道具として使ったことに関しても、何か言われそうなので考えておく必要がある。
そもそもあの威力ならば事前に報告しておいてほしかったとか言われそうである。
(となると「使ったことがないのでわかりませんでした」は通用するかどうか……)
少なくとも、こちらに来る前……俺が召喚される直前までプレイしていたデータでは使っていない。
(ならいけるか? いや、いっそのこと「シミュレーターのようなもので威力は知っていたが、実際に使用したら全然違っていた」というのはどうだろう?)
もしくはある程度スペックを聞かされていたでもいけそうだ。
嘘を見破られることを考えると下手な誤魔化しは通用しない。
なので「これならばなんとかなるのではないか?」と思える説明をエデン到着までに考えなくてはならない。
そんな中、俺は考えないようにしてきた部分と向き合う時間がやってくる。
どうあっても威力の部分で考えてしまうのだ。
(強化された……にしては違いがあり過ぎる。前作の強化システムならば10%の上昇が限界だったはずだ)
仮に被りによる強化であったとしても、明らかにその上限を超えているとしか思えない威力だった。
(以前調べた時、他の武器は予想通りだった。ルールが変わったのか? それともアレだけが特別なのか?)
或いは別の理由があるのか?
その答えが出ることはなく、俺はエデンへと帰還する。
しかし、ゲートを潜った俺を待っていたのは質問ではなく救援要請。
どうやら南西の戦場が少々苦戦しているらしい。
北部は俺が殲滅し、東部はフィオラが戦闘中。
残りの南部と西部を残る英霊で対処しているらしいのだが、西側が北西の殲滅に動いたことで、敵の一部が南西へと流れ、南側が苦戦する羽目になったそうだ。
「何やってんだか」と言いたくなるが、ここまで大規模な襲撃は珍しく、数だけで言うなら記録を更新したとのことである。
この規模の襲撃を対処した経験がある人材などエデンに残っているはずもなく、司令部の方も大分混乱していたらしい。
「南部は第七期と第八期が対処しています。救援をお願いします」
そう言って深刻な表情で俺を見上げるアリスにただ黙って頷く。
最新作のスコール1は友軍を見捨てない。
残業確定、やってやろうじゃねぇか。




