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お久しぶりです。活動報告に少しあれこれ書いているのでよければそちらもどうぞ。

あとカクヨムの方でも書いておりますので好きな方でお読みください。

 目も眩むような眩い光――目を閉じてそれを遮るように顔の前に手をかざす。

 それでも眩しさから顔を背け、薄っすらと目を開けるとそこは先ほどまでいたはずの自室ではない。

 光が止み、周囲を見渡すとそこは学校の体育館よりも広く、四本の柱が支えるとても高い天井の青白い構造物の中だった。

 目の前には見たこともなければ記憶にもない台座のような巨大な装置。

 齢35のややオタクの知識を総動員して「なんかワープ装置みたいだな」と感想を頭に浮かべるのが精一杯という非現実な光景にしばし呆然としていると周りにいた人たちも声を上げ始める。

「ここは何処だ?」という誰かの言葉を皮切りに各々がこの状況を判断する材料を探して周囲を見渡している。

 それに倣うように左を見ると「漫画やゲームにいそうな戦士」としか言いようのないイケメン。

 右を見るとこれまた「アニメやゲームにいそうな魔法使い」にしか見えない美女。

 他にも色々な人がいるのだが、わかったことはファンタジーの住人とSFの住人が混在しているように見える、ということだ。

 それなら俺は何なのか?

 二年前に仕事を辞めてほぼニートの状態のゲーマーにこの集団との共通点を見出すのは無理がある。

 そう思って自分の姿を確認したところ、明らかに着ていた服が普段着でもなければ部屋着でもない。


「なんじゃこりゃ……」


 俺が驚くのも無理はない。

 先ほどまでゲームをしていたはずの俺が全く別の場所におり、何処からどうみても軍服にしか見えない自分の姿に慌てて服を触って確認する。

「こんな服は持っていない」と確信するも、俺にはこの服に見覚えがあった。

 そう、この服は先ほどやっていたゲームで最初に着ていたものだからだ。

 だとすれば、今ここにいる俺は?

 そこまで考えたところで思考を中断させる声が響いた。


「皆さん、まずは落ち着いてください」


 そちらを見ると現代風……というよりも「映画で見た近未来風の衣装」といった感じの服装の女性がいた。

 ビジネススーツに白衣を組み合わせたかのような服装だが、眼鏡をかけた知的な金髪美女というのが第一印象。

 見慣れぬ服装よりも顔に目が行くこの顔面偏差値よ。


「質問はおありでしょうが、説明をいたしますので、まずはこちらの話を聞いてください」


 どうやら彼女がこの状況の元凶のようだ。

 周囲の視線が厳しくなったのを感じる。

 すると何処から取り出したのか槍を手にした者や銃を構える者、光の玉を生み出し前に出る者が現れた。

 剣呑な雰囲気が漂い出したが、まずは話を聞くべきだろう。

 そう思っていたところ、一番前にいた人物が振り返った。


「まずは話を聞こう。斬るかどうかはその後だ」


 イケメンが腰に差した剣に手を添えて全員を制した。

 正にそう言う外ない威圧をこの剣士からはっきりと感じた。

 俺のような一般人にもわかるのだ。

 恐らくなんかそれっぽい周囲の人間なら「相手の実力がわかった」とかそんな感じなのだろう。

 この一言で殺気立っていた連中が引き下がり、イケメンの行動に眼鏡の美女が頭を下げて礼を言う。

 そして語る。

 この状況は如何にして起こったのかを……その理由を含めて彼女は語り出した。


「この世界……いえ、ここにいる全員を含めた全ての世界は今危機に瀕しております」

 

 その一言から始まった説明は、正直に言えば「頭がおかしい」と疑われても仕方のないものだった。


「まずこの世界は『浸食』されています。我々人類種の天敵……通称『デペス』によって」


 彼女がそう言うと突如空中に現れた画面が奇妙な形をした何かを映し出す。

 例えるなら菌糸類に寄生された昆虫。

 冬虫夏草に近しいものを感じ取ったのだが、どうやらそれはアタリのようだった。


「あらゆる生命を食らい、その養分で自己増殖を行う寄生生命体。それがデペスです」


 そして次に映し出された映像には見覚えのあるものが映っていた。

 彼女はそれが「デペスであり、肉眼で確認するには困難なほどに小さな生命体である」と説明するのだが、俺は別の感想を抱いていた。


(すんごいマクロファージっぽい見た目してんな)


 結局、あれは地球外生命体だったのかそうでなかったのか?

 特に興味があったわけではないので調べなかったが、別世界の話なので関係はないだろう。

 色々と疑問はあるが、今は彼女の話を聞くことに集中するべきだ。

 彼女の語る言葉の中に結構……というよりかなりヤバイものがあった。

 どうやらその寄生生命体は人間の脳から情報を抜き取ることができるらしく、自分たちが増殖するために文明の利器を利用しているとのことである。


「デペスが何処から来たのかは我々にも詳細はわかりません。しかし繰り返された戦闘と研究の成果で、奴らが別次元からの来訪者であることを突き止めました」


 さらにデペスを研究することで別世界へと繋がるゲートを作り出すことに成功する。

 しかし物質を移動させることは未だ叶わず、こうして死者の魂を呼び出して仮初の肉体を与えることで俺たちを召喚している、とのことである。


「最初は本当にただの偶然でした。デペスの力を研究し、別世界へと繋がるゲートが誕生した。当初はこれを以てどこかにいるであろうデペスの本体を叩く、という構想だったと記録には残っています。しかし未だ物質を移動させることすらできていないことからわかる通り、それはただの誇大妄想と言えたでしょう。しかしある日、そのゲートを通ってある人物がこの世界へとやってきた」


 デペスが映し出されていた画面が切り替わり、如何にも研究者という恰好をした一人の初老の男性が映し出された。


「我々は彼を『英霊』と呼びました。魂だけの存在であった彼は我々の技術を用いて言葉を交わすことに成功したのです」


 そこからは正にトントン拍子に進んだそうだ。

 この別世界から英霊の魂を召喚する技術、そこに肉体を付与する技術も彼の着想によるものだそうだ。

 彼は自らの知識を使い次々と新技術を生み出した。

 これにより、劣勢だった人類はデペスとの戦いに見事勝利を収めることに成功したらしい。

 だが、ここで問題が発生した。


「我々は長きに渡りデペスと戦い続けてきました。その歴史の中で一度だけ不可解な現象が発生しております。それは大規模な次元の揺らぎと異常なまでのデペスの増加。研究者たちはこれを『総力戦』の前触れと捉え、同時にこれを『好機である』と時の司令官は訴えました」


 周囲から「なるほど」とか「そういうことか」という声がちらほら聞こえるが何がなるほどなのかさっぱりわからない。


「奴らの次元移動を封じ、この世界を連中の墓場にする!」


 そう演説する一人の男の映像が流される。

 デペスが他の次元から仲間を集結させたとこの時代の人間たちは考えたようだ。

 全てのデペスがこの世界に集まっているのであれば、ここで殲滅してしまえば脅威は消え去る。

 ただの願望と思われたこの説はこの後の観測で真実味を帯びることとなる。

 こちらの世界に渡ろうとするデペスが一切観測されなくなり、敵の攻撃が激化したのだ。

 この事実を以て、人類はデペスを殲滅する機会が訪れたことを確信する。

 しかしそれだけの戦力が当時の人類にはなかった。

 それどころかこの場所を守り切らねばデペスは再び次元を渡る。

 それだけは何としても阻止しなくてはならない。

 戦場は激化の一途を辿り、最早手段を選んでいる余裕すらなくなった人類は別世界に助けを求めた。

 それが英霊召喚の始まりだと女性は語る。

 

「あらゆる世界、あらゆる時代の英霊を召喚し、我々は一時的に危機を乗り越えました。しかし、増殖し続けるデペスは我々と戦いながらも未だその数を増やし続けています。このままではいずれここも飲み込まれてしまいます。人類種の天敵を撃ち滅ぼすため、どうか我々に力をお貸しください」


 そう言って深く頭を下げる女性。

 しばしの沈黙が流れ、一人の英霊が口を開いた。


「言葉に嘘はありません」


 そちらを見ると目隠しをしたゲームに出てくる神官のような恰好をした女性。

 恐らく「嘘を見破る」とかの能力者なのだろう。


「しかしそれが真実だとは限らねぇ」


 上半身がほとんど裸に近い「ザ・蛮族」という見た目の大柄で髭を生やしたおっさんが笑う。


「そこに助けを求める者がいる。ならばこの剣を振るわぬ道理はない」


 腕組みをしていた鎧姿の金髪イケメン騎士が目を瞑ったまま応えた。


「研究の続きができるなら、待遇次第で力を貸してあげてもいいわよー」


「俺は戦えればそれでいい」


「死してなお救世ですか……何故神は拙僧にこうも試練を与えるのか」


「あー、流れ的に断れなさそう? 俺っち、あんま戦いに向いてないんだけどなー」


 英霊たちが次々に賛同の言葉を口にし始める。

 それぞれが愚痴のようなものを言葉にしつつも、なんやかんやで理由を付けて参戦を表明している。

 結果、三十名ほどの英霊たちの意見はほどなくしてまとまった。

 その代表とばかりに一番前にいたイケメンが一歩前に出る。


「意志はまとまった。我々は世界を救うために尽力しよう」


 そう宣言するや否や、英霊たちの中から「任せておけ」だの「仕方がない」だの声が上がる。

 信用したわけではない。

 だが、ここに救うべき人がいるというだけで彼らは戦うと決めたのだ。

 恐らく生前は英雄と呼ばれるほどの実績を持ち、何かを成した者たちだからこその決断なのだろう。

 しかし、だ。

 この中にはそうでない者もいるのである。


「盛り上がってるところ悪いんだけどさ、俺まだ死んでないんだけど?」


 その言葉を飲み込み、俺は何とも言えない表情でこの熱狂を見つめていた。

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― 新着の感想 ―
それ、キャラクターの方を英霊として召喚しようとしてプレイヤーの中身を抜いて来ちゃったってことですかー、ヤダー! やー、確かにRPするキャラクターの中の人のことを魂と呼んだりもしますけども!
 微少ながら厄介な寄生体との対抗のために、複数の戦力を招いてのコミュニケーションとる間すら怪しいうちに戦線投下ですか。  まだ戦闘技能はおろか、名前すら表に出されず、年齢と一人称くらいしか情報明かせ…
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