スライムとリーファの魔法
街道から少し離れた森の中に入ったところだろうか、リーファから「あっち」と促され連れて来られた場所はスライムの集う苔の生えた場所だった。
「これはまた、いっぱいいるねリーファ。 何故スライムがここにいると分かったんだい?」
「森が教えてくれた。 リーファ森の声聞こえる。 ハイケルも聞こえた?」
「ううん。残念だけど俺には聞こえなかったよ。なるほど。 エルフは森の守り人とも言われてるからなぁ。森の加護の恩恵もあるのかもしれないね。偉いぞリーファ」
「えへへ。 森の中ならリーファ得意」
いや、森の声ってなに? おじさん何も聞こえなかったし、一度だって聞いた事もないんだけど。
「それでどうしようか。 この数は想定してなかったからな。 少し離れた所に1、2匹くらいいてくれるといいんだけど。 探してみようか?」
「リーファ大丈夫だよ。スライムなら何度も倒したことある」
いざとなったらスライム程度だ。俺が薙ぎ払えば一瞬で片がつく。しかしそれを当たり前にしてもらうと後に強い魔物たちと対峙した時に油断にも繋がる。そういった判断を子供の頃に覚えさせてしまうといけないからな。本当は俺が教えていかなければいけないんだろうけど、ついついリーファの前だとに甘い考えが出てきてしまう。
「でもな。 流石にこの数は……」
「見ててハイケル」
そう言うと、リーファは両手を前に構え集中し始める。光輝く魔力が手のひらに集まった時だった。風がスライムの群集を竜巻のようにぐるぐると囲うように回り始め、やがて勢いをつけながら刃のようにスライム達を巻き上げていく。
お、おい、おい、おい、おい。風魔法が得意とは言ったけど、こんな範囲魔法を子供が使っていいレベルじゃないだろう。
リーファの発動した魔法に巻き込まれたスライムの群集は、空高くまで巻き上げられその間、無数の刃で切り刻まれ続けていたのだろう。暫くすると頭上からパラパラと宝石のように魔石だけが落ちてきた。
大雑把に見えたかもしれないがその実違う。スライムを正確に計る技術に繊細な魔力コントロール。そしてそれを簡単に扱う膨大な魔力量。
「ほら。 ハイケル。 一匹も残さずキレイさっぱり」
「はは……見事だよリーファ」
俺もかつては天才剣士とも神童とも呼ばれていた時期もあった。周りからも持て囃されて自分が強いと錯覚し、自惚れるほどに。
ただ実際には勝てない魔物なんて何処かにいるし、単に出会わなかっただけだ。
だが、しかしだ。リーファはかつての俺よりも遥かに強い。魔法使いと剣士、単純に対峙する事はない。だから比較する事は出来ないがそれを差し置いてもだ。
これが天才というのだろう。
おじさんびっくりドン引きだよ。
リーファの頭を撫でると嬉しそうにニコニコと微笑んでいる。
だけど、これだけは伝えておきゃなかならない。かつての俺のようにならないためにも。
「リーファ。 この魔法は確かに凄い。だけど凄いからって絶対に自惚れちゃいけないよ。 戦う時は慎重に俺と作戦を考えるんだ」
「うんっ!」
破壊力抜群の天使の笑顔。
ダメだこりゃ。 可愛さには勝てん
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