ピクニック気分のリーファ
王都から出て半日位のところだろうか。俺はリーファの実力を測るために一緒にクエストに来ていた。
ふむ。初心者が先ず最初に受けるクエストといったらスライム討伐だろう。
スライムは知能が低く、基本雑食だ。稀に動物や魔物の死骸も食べる事もあるが、自分から進んで生きている動物や魔物には挑んでこない。多分効率の問題だろうと思うが、そこら辺に生えている草や花、実や苔といった沢山の運動エネルギーを使わなくても簡単にありつけるものを食べていた方が安全に飯にありつけるからだろう。
それに半透明の身体の中に心臓とも呼ばれるコアが丸見えになってしまっているのも最弱と言われている所以だ。本能的に自分は弱い生き物と知っているのかも知れない。
そんなことでスライムならリーファでも簡単に討伐することが出来るだろう。うん。
「もうそろそろだよ。リーファ。 疲れてはいないかい?」
「うん。大丈夫だよハイケル。 お出かけ楽しいっ!」
リーファはピクニック気分か。まぁ子供なのだから仕方もないか。それに楽しそうにしているのならそれはそれで出かけた甲斐もある。
王都近郊は騎士団もいることから安全に人々が行来することができ、商人や旅人などが多く利用している。特に整備された街道付近には強い魔物は粗出てこない。
本当はもう少し早く着く予定だったのだが、リーファの足に合わせている事で寄り道などもあって目的地付近まで時間がかかったのだ。
それにしてもリーファのトコトコ歩く姿は小動物みたいで本当に見ているだけで癒される。
これが子供を持つ親の気持ちなのだろうか。今までは子供に触れ合う機会も無かったから全く関心もなかったが、リーファと一緒に住み始めてからというものの、どんどんリーファの可愛さに引き込まれていっているような気がする。
うん。要するに親バカみたいになっているということだ。いかんいかん。
「リーファここらへんで休憩しようか」
「うん。リーファお腹減った。 早くハイケルと食べたい」
「分かったよ。 準備するから待っててくれるか」
「うん」
そういって俺はリーファから出して貰ったアイテムボックスから昼食に一緒に買ってきたサンドイッチが入った弁当と2人分の水筒を取り出す。
いや、ホントに便利だよこのスキルは。旅をするに手持ちに何もいらなくなるなんて。
何泊するかも分からないクエストでも気兼ねなく行けてしまえるようなそんな気分にさえさせてくれる。
しかも亜空間にしまっている間は食べ物や討伐した魔物は腐敗が進行しないのも凄い。冒険者や商人にとって喉から手が出るくらい欲しいスキルだろうに。
胡座をかいた俺の膝の上にちょこんとリーファは座り、俺を見て今かと待ちわびている。
あぁ。ほんと可愛いなぁ。リーファは。
「食べようかリーファ」
「うん。 オリュムポス神に感謝を」
「オリュムポス神に感謝を」
ここのアーマリア大陸では古くから食べる前に神に祈りを捧げる。食の女神オリュムポス様が生命に加護を与えた事がきっかけと言われいるらしいが俺も話が古すぎて詳しい事は知らない。
「サンドイッチ美味しいっ」
「そうだな。外で食べるご飯は美味しいな」
「うんっ!」
ぱくぱくぱくぱくっ
「こらこら。喉に詰まらせるといけないからゆっくり食べなリーファ」
「ふぁい…じょう…ぶ」
本当に美味しそうに食べるリーファはパクパクとサンドイッチを口に入れ、喉にも通していないのに次から次へと運んでいく。
まるでリスみたいだな。
「ほら。お水飲みな」
「う……ん……」
ごくっ……ごくっ
「ぷはぁっ! びっくりした」
「だから言ったろ。 ゆっくり食べなって」
「うん。 ゆっくり食べる」
頭を撫でると嬉しろうに微笑んでくれるリーファはまるで天使のようだ。
そんなスキルをサンドイッチや水筒を入れる為に使っているのは少し気が引けるが。
ほんと全く贅沢な使い方だよ。うん。
これが食べ終わったら次はいよいよスライム討伐だ。リーファの実力が如何程のものか見せてもらおうじゃないの。
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