マチルダ・アーロン
「これでわかったじゃろ。我には普通の生活程度しか出来ん。 魔女とは言っても今は人族より長く生きれる程度じゃ」
俺が知っている歴史だと魔女は歴史上、恐ろしい魔法を使い、人を苦しめたと小さい頃から教えられてきたが、それはバーバラ・アーロンだけで、もしかしたら俺の勝手な先入観で魔女は危険と決めてしまっていただけかもしれない。
ここにいるマチルダ・アーロンは確かに始めから俺達に敵意など向けてはいなかった。俺が魔女と聞いて警戒しただけで攻撃する素振りは店に入ってから一度たりともなかった。だとしたら俺は酷いことをしてしまったことになる。
「いや、俺もすまなかった。 こちらも守らなければならない子がいたからな。 過敏に反応し過ぎてしまった。 それに他人に見せたくない事もさせてしまったよな、本当に申し訳なかった」
年頃の女の子が服を脱ぐのには抵抗があるだろう。ましてや、呪印が施された身体なんて俺だったら絶対に他人には見せたくないだろう。
「まあ、それでお主が納得してくれるならいいわ」
「お前の全てを信用した訳じゃない。 だが、それなりの覚悟は見せてもらった」
「それなりって、それはないじゃろう? 我の裸体をまじまじと拝んでおいて、依頼を受けてくれんとはお主は人でなしか?」
「ぐっ………そう言われると返答に困る」
確かにまじまじと見た事は本当だ。
だがそれは施された呪いに驚いて見ただけで、裸体をまじまじと見ていた訳ではない。
いや、まぁ、ちょっとだけ……見たけど。
「ハイケル……話だけでも聞いてあげようよ。 これじゃ私達が悪者みたいになっちゃうよ」
「そうじゃ。 来て早々に訳も分からん喧嘩を吹っ掛けられて、見せたくもない裸を見られて、我はなんて可哀想な女子なんじゃ」
「ゔ………分かったよ。 理由を話してくれ」
俺達にも非がある事は確かだ。魔女だからといって依頼を受けないのはそれこそ差別だろう。俺は基本的に誰であろうと討伐依頼以外は依頼主の話を聞いて判断する。
金額の問題じゃない。 リーファが将来冒険者になった時に物事を見極めれる冒険者になってもらうためだ。
バーバラはやっと本題に入れる事に安心したのか、椅子に座り直しハイケルに話始めた。
「我は錬金術で色々な物や回復薬などを作っておってな。それで今回、薬草を使いポーションを作ろうと思ったのじゃが、材料が尽きてもうてな。 それで取ってきて欲しいと依頼をかけたのじゃよ」
錬金術か。最近では薬師が増えてきたこともありめっきり見なくなった職業とも言える。薬師は魔力を使わない。調合だけでどんな人間でも回復薬や、色々な薬を作る事のできる職業だ。だが調合するのに知識を持たないとなれない職業でもある。それに素材の調達や、レアな素材など、季節で採れる採れないと、知識以外にも金と用意するのに手間もかかる職業だ。
だが錬金術は違う。大量の魔力と素材を掛け合わせ、新しい物質を作り出す事が出来る謎の多い職業だ。
「なら何で、死の樹海の薬草なんだ? 別にそこら辺に生えてる薬草でもいいだろ」
正直イカサマをしようとしても分からないだろう。死の樹海に行って取ってきたと言われれば、それを信じるしかないからだ。
別に俺はイカサマをしようとは思ってないよ。
俺の冒険者としての信用に関わってくるからな。問題は単純にやれてしまうからだ。
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