店の奥に座る女の子
「依頼主の住んでるとこはここか………」
「………なんか変わった店だね」
王都商店街に向かって暫く歩いただろうか。昔に何度か入った事のある店が立ち並んでいる。
年を取ってからは最近はめっきりこの商店街にも足を運ぶことも少なくなった。
全部近場で済ませてしまっているからな。体力的なものじゃない。端的に言うと流行りに関心がなくなったからだ。とは言え、リーファと一緒にいるようになってからは、だらしないとか、格好悪い父親の姿は極力見せたくないのも事実。それにロシアナという俺には勿体ないような美人な妻がいる。二人に比べれば俺なんて、ただの何処にでもいるような普通のオッサンだ。
たまにはこういった所で服や買い物をしてイケてるおじさんを保たないようにしておかないと、いつか『ハイケルの格好ダサいから一緒にいたくない!』なんて言われてしまいそうだ。そうなったらショックで寝込むだろうな。
オッサン本気で身だしなみには気をつけよ。
にしても、こんな所にいつからあるかも分からんような変わった建物の店があるなんて知らなかった。薬屋か、雑貨やかも分からない。窓からは見える店内は見たことない商品が並んでるな。
ドアを開け店内に入ると、店の奥には10代後半と思われる可愛らしい女性が暇そうに座っていた。
「おや…………いらっしゃい」
おそらく雇われた非常勤の子だろう。店内に客1人いないような店だ。適当に小銭を稼ぐには丁度いいんだろうな。
にしても、入ってきて出迎えもなしに手に本を持ったまま、客と目も合わせずに挨拶とは店主はどんな教育してるんだ。
こんな風にリーファは育ってほしくない。
おっさん礼儀がなってない子は苦手なんだよ。
「この店の店主と話がしたい。 ギルドから依頼書を持ってきたハイケルだ」
隣を見るとリーファの顔付きがみるみる変わっていく。
何か様子が変だ。ただの普通の女の子に怯えているようにも見える。
アースドラゴンや、殺人鬼チカチロでさえ臆せず戦っていたリーファが少し年齢が上くらいの女の子に怯えるなんて只事じゃない。
俺は奥に座る女の子に目を向け直し、最大級の警戒をした。
俺には分からないがリーファだけは感じ取っている確かな異変。魔力操作や、気配に敏感なリーファだ。この店という空間に何かがあるのか、女の子に何かがあるかは分からない。だが、もし何かあってからでは遅い。俺はいつでも対処出来るように鞘に収まった剣を握った。
「この女の人…………魔女だよ………」
「何っ!?」
「ほぉ……………」
リーファの一言に俺は背筋に寒気が走る。
魔女と言えば、600年前に大陸を震撼させた【最悪の魔女バーバラ・アーロン】を思い出させた。
この女の子が魔女だと? 魔王と同等と言われた程の強さを持ち、かつて悪魔と契約を交わしたと言わる魔女がこんな王都の中心地に?
混乱と緊張と共に、俺は興味本位で依頼主の元へ来たことを後悔した。
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