大切な時間
「いや〜楽しかった。 瞬間移動がこんなに楽しいとは。 いい大人が子供みたいに夢中になっちゃったよ。 ごめんなリーファ。 疲れなかったか?」
「大丈夫だよ。 集中は必要だけど、魔力消費自体は多くないから。 ハイケルが楽しそうにしてたからリーファも楽しかった。 こんな使い方もあるんだって」
遊び感覚で出来たのなら何よりだ。何でもそうだが基礎を疎かにすると、限界が早い。
このスキルも簡単そうにリーファは使っているが、空間把握能力や、座標をしっかり定めないと的外れなスキルになる。それを簡単そうにやってるからリーファは凄いのだ。
相手に対し、武器やアイテム、衣服までを奪う【スティール】の上位互換に、瞬間移動や救出まで出来る破格性能。
負傷しても収納して後で治療が可能な事や、人を収納しての移動もコストがかからない事。
そして状況に合わせて武器の入れ替えまで瞬時に可能とか、もう伝説級のスキルといっても過言じゃなくなってきた。
だが、これだけの性能だ。もう冒険者クラスの器では収まりきらない。始めは秘密にしておくべきかとも考えていたが、俺の一存だけで収まらない。王都に報告でもしたら、直ぐにでも宮廷魔術師に間違いなく入れるレベルだ。そうなった時にリーファはどう思うのだろうか。
俺は一流の冒険者にはなれなかった。理想と現実の差に嫌気がさしたからだ。だからこうして適度に遊べるような毎日を送っている。おそらく王都に行ったらそんな日はなくなるだろう。
リーファには幸せになって欲しい。
夢と希望もあるリーファにとって、なにが最善かロシアナも含め一緒に話し合いをしないといけないな。
「リーファ。 今日はここまでにしようか。 色々収穫もあったし、ロシアナも直に帰って来るだろうから家で待ってよう」
「うん。 洗濯物取り込んでロシアナのお手伝いするっ」
駆け寄ってきたリーファの手を繋ぎ、俺は家路に着いた。
その手は温かくて、俺よりもずっと小さくて、歩く歩幅もずっと短くて、リーファはまだ、たった9歳の子供なんだと再認識させられた。
冒険者登録まで残り6年、長いようで短い。これから過ごす時間がリーファにとって大事な時期だ。リーファの事を真剣に考えてやらなくちゃいけないな。
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