ハイケル、アイテムボックスの中に入る
「ほんとにいいのハイケル?」
「いいぞ、リーファ。 俺にやってみてくれ」
俺達は家からすぐそばにある空き地に来ていた。誰も住まなくなって解体された場所だ。王都でも中心地から離れた地区ではこういったところが幾つもある。買い物に不便で足に自信がなければ、お金を払い送迎馬車を使わないと売店すらないと、住まなくなる理由は色々出てくるが、俺としては静かで気に入っている。
アイテムボックスの可能性を探る為に、自分から収納される行為がどれほど危険か分からない。おそらく誘拐犯達が生きていたことから死なない事は想像がつくが、異空間の先に別の世界があるのか、倉庫みたいな場所があるのか全く想像がつかない。
「一分後にまた俺を呼び出してくれ」
「うん。 わかったよ」
リーファが『収納』と唱えた瞬間、俺の身体は半透明になり、その瞬間、俺の意識は途絶えた。
◇
「ハイケル? ハイケルっ!! もう一分経って出したんだよ!! 大丈夫だった?」
「……………えっ?! もしかして成功したのか?」
「うん。 ちゃんと収納出来て、ハイケルがアイテムボックスに入ったのを確認したよ。 その後に一分数えてから出したよ」
一分?もう一分経ったのか? てっきりリーファに呼ばれた時、俺は弾かれて失敗したのかと思った。だが、そうじゃなかったというのか。
成功したとリーファに言われたが、俺はアイテムボックスに収納されてからの記憶が一切ない。 異空間の中に移動する瞬間から記憶がないのだ。
俺が想像していたのとはまるで違う。何の感覚もない。そこには異世界も異空間もない。ただ収納された間は何の感覚もなく、時間だけが過ぎていたのだ。
だた、辻褄は合う。あの時、誘拐犯達はまるで瞬間移動したかのように出されて事に驚いていた。
それと俺の感覚とも一致する。現実世界では時間だけが経過していて、アイテムボックスの中では時間が止まっているのだ。
野菜を入れても腐らないこと、魔獣を入れても腐敗しないことはアイテムボックスの中では時間の経過が一切ないことを身をもって証明できたのだのが。
「何で俺も収納できたんだ?」
疑問が浮かぶ。俺以外にもアイテムボックスに収納出来た誘拐犯たちも。汚れた心があると入れないとか分かりやすければ弾かれていたはずだが、そうではなかった。弾かれた時と、成功した時の差が何なのか、俺のスキルではないから成功した時の感覚的なことが分からない。
「本人の意志…………じゃないかな?」
リーファの言葉にハッとする。
本人が拒絶しなければ入れるということか?
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