才能の塊
「なんだ…………こりゃ……どうなっているんだ!?」
驚くのも無理もない。そんな事が出来るなんて、聞いたことも見たこともない。俺ですらまだ信じられないくらいだ。だが、実際に出来てしまっている。何の条件かは分からないが人間も収納出来てしまった。
もはやアイテムボックスの概念を完全にぶち壊す事をリーファは起こしてしまったのだ。
正直に言えば、こんな便利スキル俺だって欲しかった。剣士として今の職業に別に不満があるわけじゃない。だが、もし俺にも特別な才能が他にあったら、違う人生もあったのではないかと考えてしまう。
考えるだけ時間の無駄な話だが。おっさんになると今の生き方が本当に正しいのかと、ふと疑問に思う時だってあるんだよ。
色々な才能があるってのは羨ましいよな。
「リーファが収納した誘拐犯に指名手配のヤツもいてな、偶然だったが捕まえておいた」
「こっ………コイツは元S級の冒険者だぞ! しかも殺人鬼チカチロじゃないか!! こんな危険な奴を相手にハイケル一人で捕まえたのか!?」
まぁ…………正確にはリーファ1人で、なんだけどな。それをこの場で言うとガジェットさんも流石に頭がパンクするだろう。
元S級冒険者を相手に9歳の子供が完封で捕まえたなんて言ったらギルドランクの信用に関わってくるもんな。それに、そんな報告書をあげさせたら王都から呼び出しがあるかもしれない。それこそ避けたいところだ。
リーファを王都の道具のように使われる訳には絶対にいかない。
そこら辺リーファはグイグイ来ずに大人しく空気を読んでくれている。
「………………まぁ、上手いこと作戦がいってな。 無傷で捉える事ができたよ。 偶然アナスタシアも居合わせたけど、あの子は怪我をしたからリーファが治療しておいた」
「白銀の剣のアナスタシアが?! あいつもいたのか! それでアナスタアは大丈夫なのか?」
「大丈夫だよっ。 ちゃんとリーファが治したから。 でもちゃんと休まないとまた怪我しちゃうから休息も必要だよって言っておいた」
うんうん。出来る娘を持った俺は嬉しいよ。ちゃんと後のことまで考えてアドバイスまで出来るなんて9歳の子供とはとても思えない。立派なもんだ。俺はその頃なんて鼻水垂らしてたぞ。
「そ……そうか。 すまないな譲ちゃん。 アナスタシアはこのレガイアでも16人しかいない貴重なA級冒険者の内の1人なんだ。 治してくれてありがとな」
「うんっ。 どういたしましてっ」
「それでコイツラのことだが―――」
持っていても危ないし、コイツらはギルドによって然るべき対応を取ってもらうべきだろう。
これで人身売買を行っていた組織が公になれば王都レガイアも動くことになる。
王都では人身売買を禁止してる。連盟で加入している王国も多数あるが、殆どが水面下で幾つもの犯罪組織と複雑に繋がっていて尻尾切りにあう難しい問題なのだ。
今回の件も氷山の一角かもしれないが、俺もロシアナもリーファという愛娘を持ったことで、こういった子供たちが拐われる問題が身近に思えるようになった。
誘拐犯達は突然ギルドに到着して出された事で騒いでいたが、ガジェットさんに取り敢えず黙らせてもらった。でも、それと同じくらいリーファのアイテムボックスにも驚いていた。
前例にないアイテムボックスの使い方。アイテムボックス持ちのユニークスキル自体が戦闘職に殆どいないから分からない事だらけだが、リーファが人まで収納したのは、おそらく世界初だろう。
俺はガジェットさんに黙っておいてくれと頼んだが、ギルドは守秘義務があるからリーファの事が他人に漏れることはまずないだろう。
それに相談することで何かあった時にガジェットさんは俺達に力を貸してくれる。この人はそう言う人だ。ロシアナが信用しているのも頷ける。漢なんだよなこの人は。
俺が女だったら惚れてるね。
ロシアナに事情を説明して俺達は早めにギルドから解放してもらった。面倒くさかった訳じゃない。リーファのアイテムボックスの可能性を検証してみたかったからだ。
謎に包まれた希少なスキル【アイテムボックス】を俺自身にかけたらどうなるのか?やってみたいと俺の好奇心が擽られたからだ。
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