ギルドマスターのガジェット
「それにしても久し振りだなハイケル。 ロシアナとは上手くやれてるか? いきなり結婚したと聞いた時はたまげたぞ」
「ええ………なんせ急だったもので」
いつもながらに思うが、昔からこの人は威厳があり過ぎる。今は顎髭に、白髪も増えて一層貫禄が増した。ギルド職員の服は着ているがシャツから見える腕なんかは無数の傷跡が今でも残っている。
どれだけ戦えばああなるんだ? 逆に聞いてみたいわ。
今話をしているギルドマスターのガジェットさんは俺が新人の頃からギルドにいた責任者だ。この人は俺の過去も当然知っているし、ロシアナから聞いた話だと、俺の処罰を軽くする為に暗中飛躍してくれた人なのだ。
もしかしたらこの人がいなかったら俺はライセンスを取り消しになっていたかもしれないと思うと、偶然知ったとはいえ、この人にはもう頭が上がらない。
「ギルド長。 今日は私達の話で呼び出した訳ではないんですよ。 私達の子、リーファの事で話があるんです」
こほんと咳をたて、ロシアナは本題に戻した。
「ああ、すまんすまん。 話が逸れてしまっていたな。 なら本題の話を聞こうじゃないか。 まあ座ってくれ」
このまま話してたら昔話に花が咲きそうな雰囲気だったしな。俺もガジェットさんに二人の馴れ初め話をしに来た訳じゃない。それにロシアナもそんな話をしたくないだろう。ナイスだロシアナ。
ソファに座ったガジェットと、対面にハイケルとリーファを座らせると、用意した紅茶をロシアナから配られた。それをガジェットは一口飲んだあと、再び話始めた。
「で、ロシアナとハイケルのとこのお譲ちゃんがどうかしたのか? 養子を取った話は知っているが、そんな簡単な話じゃないんだろう」
「ええ。 そうなんです。 ギルド長にはちゃんと話しておきますが、リーファはユニークスキル持ちなんです。 しかもかなり珍しいケースの」
リーファには俺達が家族で生きていく中で、信用に足る人物には話をしていいことを事前に了承してもらっている。だから今回の件もロシアナからの人望もある人だ。だから大丈夫だと判断した。
「ほぉ。 神の贈り物持ちかとは珍しいな。 スキルは職業や親からの遺伝でも発現するが、神の贈り物はその中でも発現が特に難しい。 あまりにも発現条件が不明確なところがありすぎて発現した際はユニークスキル、もしくは神の贈り物と呼ばれているがお嬢ちゃんは何を持っているんだい」
「リーファはアイテムボックスを使えるの」
「アイテムボックスか。 確かに稀なギフトだ。 だが、他にも鑑定や解析、心眼など戦闘以外でも役に立つようなギフトは幾つもある。 珍しいとはいえ相談する程のことではないだろう?」
確かに戦闘職以外で便利なユニークスキルは沢山ある。だが、リーファのユニークスキルは俺から見ても異質だ。個人差はあるが普通は馬車の積み荷、あっても2台分くらいだ。だが、リーファはそれを優に超える量を収納出来る。
それ加え、生きた人間もだ。
これが問題だ。生きた人間を仮に何人も、何十人も、下手をしたら軍まで収容出来たら、戦闘の常識が覆る事になりかねない。
「今から見せることは他言無用で頼みます。 それくらいリーファのアイテムボックスは異質なものなんだ」
「なるほど。ハイケルが言うほどなら余程のことなのだろう。 なら見せてみろ」
俺はリーファに合図をすると、リーファもそれを察したのか、アイテムボックスから収容された誘拐犯を出す準備をする。
「これが今回捕まえた誘拐犯だ。ちゃんと捕縛してあるから安心してくれ」
ガジェットがリーファの指摘した場所を見ると、一瞬で応接室に誘拐犯が8人拘束された状態で現れたのだ。
「なっ…………なんだこれはっ!?」
そりゃビックリするだろな。ただのアイテムボックスだと思ってたら、まさか人まで収容出来るなんて誰も思わないしな。
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