A級のプライド
あの後、俺とリーファは無事二人を救出して王都に戻っていた。
アナスタシアはというと。誘拐犯を収納してからずっと質問攻めにあったいたのだが、助けてやった代わりに黙っててくれないかと強引に口を塞いでおいたのだ。
全然納得していない様子だったが、しかたないだろう。こっちにも都合があるしな。
いっぱい質問されると、おじさん疲れるんだよ。
孤児院の扉を開けるとディアナさんは待ちわびていたかのように急いで奥から走って現れた。
「ディアナさん。 カミラとミリスを助けて来たよ」
「ディアナねーちゃん。ごめんなさい。心配かけて……」
「本当に…………ああっ、カミラ、ミリス、それにロシアナ。 本当に無事で良かったわ!!」
ディアナは安心したのか二人を強く抱きしめ泣いて喜んでいる。
こういった光景を見ると俺も二人が無事で本当によかったと思う。この世界じゃあ簡単に人拐いが起きる。拐われたら大半はもう見つけられない。
奴隷になっているか、売られているかのどちらかだ。だからこそ、こんな風に優しく抱きしめて出迎えてもらえるのは珍しいケースなのだ。
なんか見てたらこっちまで目が潤んできてしまうじゃないか。
「アナスタシアも今日はゆっくり休んだ方がいいぞ。 傷は治ったとはいえ、万全じゃないからな」
回復で傷は直せても、精神的疲労や、失われた血液などは簡単には戻らない。だから今無理をされても逆にこっちが迷惑だ。
「おねえちゃん。 無理は禁止だよっ。 しっかり栄養とって休んでね。 そしたらまた元気になるからっ」
眩しすぎる笑顔でリーファから言われるとアナスタシアは目を背けて返事をした。
「なんでお前らはそんなに強いんだよ。 私なんて何の役にも立てなかった。 A級の私ですらまるで刃が立たなかった相手だったんだぞ。 それをこんな小さな子供が一人で………」
確かに殆どリーファがやったようなものだ。俺がやったのは殺人鬼と呼ばれていた変態をストレス解消に殴ったくらいだ。
だが、本当は違う。リーファ一人では勝てなかった。あの場所に仮に一人でリーファが立ち向かっていたらアナスタシアより酷い状況になっていた。自力ではチカチロの方が経験も実力も遥かに上だからだ。サポートがあるからこそ安心してリーファは全力で戦えるのだ。
それとアナスタシアは自分では気づいていないかもしれないが頭に血が登っていて冷静ではなかった。一人とはいえ、おそらく本来の実力の半分も出せていなかっただろう。だからこそ負けた。
だが、負けたということにA級のプライドが許さないのだろう。俺に何か言えることなんて大してないがこれだけは分かることがある。
「強さなんてものはそんな簡単に計れるようなものじゃない。それにアナスタシア。俺には分かるよA級の凄さが。 どんな時でも王都から要請があれば命を掛けて戦う。並大抵の志がなければ出来ることじゃない。 それをずっとやってるんだ、誇っていいことだぞ」
「おっさん…………」
俺には無理だった。連日、連夜、時間問わず要請がかかったら王都に向かって、魔物と戦って、帰ってきたらまた次のところに向かってと、金の為に生きているのか、名誉が欲しくて戦っているのか自分でもよく分からなくなってしまった。だから続けていられるだけでも本当に尊敬するに値する。俺に出来なかった事をアナスタシアは普通にしているのだから。
「………ありがとう」 ボソッ
「ん………?」
何か聞き取れないような小声で言っていたような気がするが。まぁ、いいか。
アナスタアは恥ずかしかったのか、耳を真っ赤に染めて家の奥に入っていった。
「おねえちゃん、ハイケルにお礼を言ってたよ」
「ハイケルさん。 本当にありがとうございました」
「いや、これも依頼だからね。 あ、それとこれよかったら。 リーファ、例のアレを出してあげて」
ロシアナからも了解を貰っていたビックボアの肉を孤児院の子供達にも分けてあげようとアイテムボックスから肉をディアナさんに差し上げた。
依頼料よりも高いものだが、値段よりも価値があるものをリーファにも知って欲しい。
俺とロシアナはそう思ったからだ。
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