消えていく誘拐犯
「よし、拘束したことだし。こいつらを後はどうするかだな」
「連れて行くのちょっと面倒くさいよね」
「ああ。 大都に連れていくにもこいつらが大人しくついてくるとも限らないからな」
「こんな時にアイテムボックスに収納できればなぁ………」
魔物の死体は入る。当然アイテムも食料も入る。だが人間はどうなんだと、ふと疑問が浮かぶ。収納するにも条件があるのではないか?だとしたら、もしかして人間でも入るんじゃないかと。
「なぁリーファ。 人間って収納したりした事あるかい?」
「うーん。 やってみたことないから分からないけど、もしかしたらいけるかも」
だろうな。アイテムボックスの中がどんなふうになってるか分からないからな。異次元なのか異空間なのか?物も腐らないとか、訳が分からない事だらけだ。当然無理なものは無理だよな。
………ん? 今イケるかもって言った?
「出来るかもしれないの?」
「やってみる?」
「あ………ああ。 ものは試しだ。 この伸びた変態を試しに収納してみてくれないか?」
リーファは手をチカチロに向け、目を閉じ集中する。次第にチカチロが光を帯び、半透明になっていく。
『 収納っ 』
その場にいたチカチロは一瞬で消え、その場からいなくなった。逃げたのではなく、その場からなくなったのだ。
「えっ? もしかして収納できたの? 成功したのか?」
「うん……出来たよ。 人間も出来るみたい」
「おおおぉぉぉぉいっ!! 人間も収納出来るのかよ!!」
こんな事も出来るのかよ。もうなんでもありだな。リーファが凄いのか、アイテムボックスが凄いのか訳が分からん。頭が変になりそうだ。
でも、これならこいつらを連行するのも大分楽になる。
それに、まだリーファでも知らないアイテムボックスに隠された使い方が色々出てきそうだ。帰ったらロシアナに相談して使い道を聞いてみる事にしよう。
その光景を離れた所から見ていた誘拐犯達も動揺する。チカチロがその場から陰も形もなくいなくなった事に不思議というより恐怖を覚えたからだ。
「おいっ!! チカチロを何処にやったんだ! アイツを光魔法で殺したのか? もしかして俺達も同じようにするつもりなのか? 頼む、殺さないでくれ。 金ならいくらでもやるから」
金は確かに大事だ。俺も少しばかり金がなかったら靡きそうだった。だが、こいつらと口約束したところでまともな金が入ってくるとも思えない。それに真っ当に稼いだ金じゃないだろ。
「リーファ。 こいつらもやってくれ」
「ヒイィィィっ!!」
『 収納っ!! 』
「………ん?」
唱えたはいいが、悪党共は収納されずにその場で拘束され震えたままだ。
もしかして失敗したのか?
「リーファ。 失敗したのか? なんか収納するのに変わった事でも起きたか?」
「うん。 収納しようとしたら弾かれた。 さっきの人はそのまますんなり収納出来たから出来ると思ったのに………」
違いと言えば、彼奴等は騒いでいて、変態野郎は失神していた。失神が条件なのか?
だったら話が早い。多少傷物になっても文句も言われないだろうし丁度いい。
「おい。 お前ら、死にたくないなら黙って俺にぶん殴らせろ」
「ハイケル………怖いよ」
「ヒィィッ!! 勘弁してくれぇ。 なんでも言う事を聞きますから、チカチロみたいに消さないでくれ!」
「ちっ…………流石にぶん殴るは駄目か。 いい案だと思ったんだけどな」
「念の為、もう一度やってみる………」
そう言うとリーファは誘拐犯に向け、もう一度唱えてみる。すると……
『 収納っ 』
隣でリーファがアイテムボックスに収納をかけると誘拐犯は光を帯びながら収納されていった。
「収納…………出来ちゃった、ハイケル」
「何っ?! 一体どうなってんだよ!」
「分からないけど、今度は弾かれなかった」
理屈は分からんが、条件が揃えば人も収納が出来るって事は分かったが、とんでもないスキルだよ。
アイテムボックスってマジでこぇな!!
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