ユニークスキル
あれから数時間。よく眠っていたリーファも起きてきた。
安心し過ぎたのかリーファは気付かない間に隠蔽魔法が解けていたのに自分でも驚いたのだろう。
必死に隠そうとするリーファの姿は可愛かった。
「なぁ。 リーファ。 君はその、エルフなのか?」
魔法適性がある。しかもかなりの高位魔法を。
子供の頃から扱えるということはエルフに間違いはないだろうが、念の為確認しておく必要がある。
エルフは魔法が得意だ。精霊に愛され、人間には持てない森の加護を持っている。
高位の魔法まで使え、弓術から剣術まで器用に扱える極めて特殊な種族、それがエルフだ。
人族と比べその美しい容姿からも闇市では高値で取引され、奴隷として扱われる事も多いと聞く。
特にリーファのような子供は狙われやすく見つかったら最後、囚われ高値で取引されてしまう。
だからもし俺と一緒に暮らす事になったら周りには絶対にエルフと知られる訳にはいかない。
「……うん。 おじさんに黙っててごめんなさい」
「そうか。 正直に言ってくれてうれしいよ。 それに俺はまだおじさんでもないし、ハイケルって名前があるんだ」
「おじさん……」
「ハイケル」
「…………」
「……ハ……イケル」
「そう。 ハイケルだ」
よかった。とりあえず名前で呼んでもらえる事に成功した。それに36歳でおじさんはこの年齢だとまだ微妙に傷つく年頃だからな。
ほんと自分ではおっさんと言ってもいいのに、他人にはおじさんと言われるの駄目なの分かるよね。
「よし、今日はリーファの服を買ってくるからな。 楽しみに待っていてくれ」
「いいの? 服貰って」
「いいに決まっているだろう。 楽しみに待っててくれ」
「分かった。 ここで待ってる」
本当は連れて行きたいが、あまりにも俺がぼろぼろの服を着たリーファを隣に連れて歩いていたら目立ち過ぎる。
この年になると王都でも知り合いが多いからな、色々な人を当たってみるとするか。
顔馴染みの武器屋の店主ホーガンに聞くと、商店街に子供服を売っている店があるというので早速足を運びリーファに合いそうな服と下着を何着か買う。
武器屋のホーガンにはいきなりどうしたんだよと色々聞かれたけど今度リーファわ連れて行った時にちゃんと説明する事にしよう。
服を買って帰るとリーファは大人しく部屋で待っていてくれた。何もない部屋で少し退屈だったとは思う。
まぁ、午後からはリーファを連れて気晴らしに出掛けてあげるのもいいかもしれないな。
「リーファ。 服を買ってきたよ。 着てみな」
「ありがとう。 その…ハイケル」
「どういたしまして」
早速着替えさせてみたが
いや、めちゃくちゃ可愛いな。
くりくりのお目々に金髪の髪。
女の子らしいフリルのスカートがよく似合っている。隠蔽魔法で耳は隠しているが、これはエルフだと知られたら本当に誘拐されてもおかしくない。
「リーファ。 めちゃくちゃ可愛いよ!!」
「えへへ。 ありがとうハイケル」
あまりの可愛いさに俺もテンションが上がってしまう。
これは大人になった時、とてつもない美人になるな。
「他の服や下着はそこの棚の引き出しにしまっておきな」
「えっ……と……その…」
何やら身体をもじもじして言い出し辛そうにしている。トイレにでも行きたいのかと一瞬思ったがそうではなさそうだ。
「どうしたリーファ? 何か気に入らなかったか? それとも欲しい服でもあるのか?」
「そうじゃない。 あの……私、他にまだ魔法やスキルがある」
「スキル? どんな魔法やスキルなんだ? よかったら俺にも見せてくれないか?」
そう言うとリーファは意を固めたのか、スキルを発動させ、俺の前に小さな亜空間を現せた。
「リーファ。 これはまさか……アイテムボックスか?」
「うん。 そうアイテムボックス」
「いやいや、またとんでもないユニークスキルを……」
冒険者の中でも本当に一握りしか持たないとされる希少なユニークスキルのアイテムボックス、このスキルがあるだけで一生遊んで暮らせるくらいの価値があるスキルだ。
「もしかして誰かに話したりはしてないか?」
「してないよ。 知ってるのはパパとママと、それにハイケルだけ」
「でも、そんな大事なスキル、俺に見せてもよかったのか?」
「ハイケルなら大丈夫と思ったから……」
「そうか。 こんな大事な事を話してくれてありがとな」
不安そうなリーファの頭を撫でて一つの決心をした。この先どんな事があってもリーファを一人前の大人にする。そう、俺がこの子を育てると。
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