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殺人鬼チカチロ

「お前は、殺人鬼チカチロだな」


「へえ、よく私の名前を知っていますね」


 薄気味悪い笑みを浮かべるその男は二本の剣を構え直し、何かを見定めるようにじっくりとアナスタシアを見た。


「指名手配の内容とてめえが一致してるからだよ。その二刀流の趣味の悪い赤龍と青龍の双剣を使っているのはこの大陸でもてめえくらいなもんだからな」


「よくご存知ですね。これは赤龍を倒した時に作った炎を纏う剣に、もう一つは青龍の特殊効果を施した剣。二本とも殆ど市場には出回ってはいない業物です。 この最高級の剣を使って人間を斬ると、 本当に最高なんですよ」


「このイカれた変態野郎が」


 コイツは思った以上にヤバい。過去に冒険者を50人以上殺害した事のあるチカチロはギルドを永久追放された上に指名手配までされた本物のクソ野郎だ。

 犠牲者は身体を何箇所も刺され、切り刻みまれ、切断された状態で毎回発見される事から、周りからは殺人鬼チカチロと恐れられるようになった。

 よりにもよって一人の時にコイツと出会うとは本当についてねえ。


「ギルドを裏切って、指名手配までされて、しかも人拐いまで加担してテメェは一体何がしてぇんだ?!」


「人拐いは別に私は興味はないんですけどね。 でもここにいたら退屈しないと思ったからですよ」


「なんのだよ?」


「そんなの決まっているでしょう…………人殺しですよ」


「………クソ野郎が」


 人を斬ると快感を覚える奴も冒険者の中にはいる。魔物と人間では斬る感触が全然違うからだ。

 だが、こいつはそんな中でも突き抜けて快楽や快感を覚えてしまった奴だ。

 いちど盗賊や野盗など斬った時の感触をずっと忘れられずに持ち続けていたんだろう。

頭のネジがぶっ飛んでやがる。


「始めは盗賊狩りをしていたんですけどね。 なんの歯ごたえもなくなったんですよ。だから途中から物足りなくなってきたんです。 で、その時に思ったんですよ。 同じ冒険者を斬ったらどうなのかなってね………」


「それだけの理由で斬ったのかよ」


「ええ。それはもう最高に気持ちよかったですよ。あの斬られた時の顔、憎悪に満ちた顔、そして絶望に満ちた顔、どれも盗賊では味わえなかった快感です」


「どうしよもねえヤツだよテメェは。 ここで私が始末してやるよ!」


「いいですねぇ!! 私に出会った冒険者は皆同じような事を言う。 でも、いつも最後に立ってるのは私なんです。 あなたも先程から私に一撃も当てれなかったのにまだ諦めてない。 まだ奥の手があるなら早く見せて下さい! さぁ、私を楽しませて下さい」


 両手を広げて舐めた顔で挑発をしてきやがるが、あいつはまだ一撃も出してないのに、こっちの攻撃は全くといっていいほど当たってねぇ。

 しかも、こっちは既に肉体強化まで使ってる。残りの連中もまだ一人も始末出来てない状況なのに、なんでこんなイカれた奴がこんな所にいるんだ。早くカミラとミリスを助けなければいけないのに、このままじゃ私の命さえ危うくなってきた。


「あなたの綺麗な顔を見て、絶望に染まっていく顔になるのが本当に楽しみです」


「ほざけよっ!!! お前を殺って私は二人を助けに行くんだよっ!」



 アナスタシアの攻撃をチカチロは受け流しながら、隣にいた主犯格と思われる男が声を大にしてチカチロに注意を促す。ここでの作業が遅れ始めたからだ。本来であれば待ち合わせの場所で合流して、直ぐにでもその場を離れる予定だったのだが、アナスタシアの追ってにより足止めされたからだ。

 それにアナスタシア以外にも追手がいるかもしれない状況に、男は焦りを感じていた。


「おい、早く済ませろ! 他に支障が出ると困るんだ」


「分かっていますよ。 少し待っていて下さい。 楽しい殺し合いの最中なんです。 例え、あなたでも途中で止めることは許しませんよ」


そういって男に鋭い目を向ける。チカチロからすれば利用目的で手を組んでいるだけであって、誘拐が手段ではないからだ。男もその事を分かっているのだろう。大人しく頷いた。


「分かってるよ。 だから早く済ませろと言っている。 それに仲間に来られると厄介だ」


「仮に他に来たとしても安心してください。 死体が増えるだけですから」


「分かっている。 だが念の為だ」


 ちっ!!


 不意をついたつもりで懐に踏込み剣を振るが、アナスタシアの攻撃はチカチロに当たる前にまたもや簡単に避けられてしまう。


全然レベルが違う。A級の私ですら、元S級の相手に互角にすら渡り合えないのかよ!!

本当に笑えない冗談だ。


「ハァ………また同じ攻撃ですか。 大体底が見えましたね。 なら今度は私からいきましょうか……………シュッ!!」


 チカチロから繰り出された変則的な斬撃にアナスタアは全く反応出来なかった。それどころか、目でも追いきれていなかった。A級の前衛で戦う冒険者が何一つスキルも使っていないチカチロに圧倒されていたのだった。


「ぐっ…………」


「解体ショーの始まりです!!」

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