二人の行方
「ハイケル、次のクエストで受けて欲しいのがあるの」
寝る間際になってロシアナがハイケルに話しかけてくる。
上の部屋ではリーファはすやすやと寝ているが、いつもこの時間ならとっくにロシアナも寝ている時間だ。おそらく俺と話すタイミングを伺っていたのだろう。
でも何だ。 タイミングを計らないといけないほどの事でもあるのか?俺は妙な胸騒ぎを憶える。
「何かあったのか?」
「最近、西区の協会に住む子供達の何人かが行方が分からなくなってるの。 協会のディアナさんから依頼がきてるのだけれど誰も受けてくれなくて」
「……人拐いか」
ちっ……嫌なことを聞いたな。
アーマリア大陸の中でも比較的このレガイアは安全な部類に入るが、他の大陸では日常的に人が拐われ、人身売買や奴隷など、非人道的な行為が行われていると聞く。
レガイアではこういった行為を禁止しているが、裏ではまだ犯罪行為が行われていたりする。
くそったれめ。
しかも今回は西地区ときた。おそらく国も力を入れて探す気はないのだろう。
西地区にある協会には国からそこそこの援助金も出ている。だらかこれ以上費用をかける気はない。そういう地区と思われているからだ。
西地区は王都の中でも貧困な人たちが集まっている。
他の大陸から流れて来た人など多民族まで受け入れ暮らすことを許している。だが反面、言葉が通じない、仕事に有りつけないといった職に付けなかった人達が協会の元に集まり援助をしてもらわないと暮らせないような人も多くいる。
協会の孤児もそうだ。身寄りのない子供達がシスターの援助を受けて生活をしている。
確か、浮浪者は何年かして働ける見込みがない者はレガイアから入国禁止になるらしいが、詳しくは俺も知らない。
ハァ…………リーファがいた地区か。
前回はたまたまクエストで訪れたが、普段であればまず行くことはないところだ。
それに今回のクエストは人を探すと謳ってはいるが、人身売買をする誘拐犯と対峙する可能性が非常に高い。
しかも一人だけではなく複数人とだ。
こういった場合、単独で動いているケースはまずない。何人かのグループで犯行が行われているからだ。
クエストの難易度は高くないのに、誰も受けない理由は対人戦になる可能性が高いにも関わらず、報酬が安すぎる事だ。
人との対人戦は魔物と違い、野盗から冒険者崩れ以外にもプロの殺し屋も混じっている可能性もある。
対峙する相手で難易度が跳ね上がるリスクの高いクエストといっても過言じゃない。
普通だったら誰もが見て見ぬふりをするクエストになる訳だが。
「クエストが受注されたのはいつだ?」
「今日よ」
「一日経ってるのか。 であれば探すのはもっと難しくなるな」
「分かっているわ。 でもこんな事で動いてくれそうなのは、もう他にあなたぐらいしか残っていなくて」
「だろうな。 リスキーな仕事を好んで受けるやつなんていないだろう。 でも西地区はリーファと出会った地区で、俺にとっては思い出の場所だ。 分かった。 その依頼受けることにするよ」
「いいの? ありがとう。 じゃあ早速朝ギルドにいったら受注しておくわね」
「ああ。 頼んだよロシアナ」
「ごめんなさいあなた。 こんな危険な仕事をお願いしちゃって」
「いいんだよ。 でも過度な期待はしないでくれよ」
「うん。 分かっているわ」
ロシアナのお願いもあるし、西地区は俺にとってもリーファとの出会った場所だ。
俺は貴族でもなければ富豪でもない。何かしてやれる事は少ないが捜索自体は出来る。
明日、依頼書を持ってディアナさんのとこにでも行ってみるとしよう。
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