アイテムボックス
リーファの倒したアースドラゴンを見てハイケルは考えていた。
「…………この異常な切れ味は。外皮から何の抵抗もなく綺麗に切断されている」
おそらくあの魔法は斬撃系でも最高位魔法に近い風魔法。俺の倒したアースドラゴンと見比べてもこれほど綺麗に切断されてはいない。
しかもだ、俺は今回リーファのアイテムボックスから取り出したロングソードよりも更に大きいバスターソードを使っていた。
何故普段使わないかというと、それは単純に使い勝手が悪いからだ。
森や洞窟では振りにくく、移動では子供の背丈程ある剣を背中に担いでとなると、てつもなく重い。
長旅になればなるほどそれだけで疲労は重く伸し掛かってくる。
使う場所も限られるし、戦闘でも小回りが利かない。とデメリットも多く存在する使う場面が限られる特殊な剣。
そんな事から本当は好きなのだが普段は使わないし、使う気にならなかった。
だが、リーファのアイテムボックスによりそんな悩みは皆無になった。
理由は戦闘に応じて剣を簡単に変えれるからだ。罠も張れれば、道具の出し入れも自由。食事の出し入れも自由。手に持つ物なんて必要最低限。
うん。マジでチート。
と少し話が逸れたが、剣の重さと全体重を乗せて攻撃出来る破壊力抜群のバスターソードを使ってもリーファの切り口には遠く及ばない。
となると首以外の外皮に攻撃をしても通る可能性が出てくる。
まぁ俺もアースドラゴンにバスターソードを使ったのは今回が初めてだから、本気で斬ったらどうなるか分からんが。
「でも、これで纏まった金が入るな」
「いっぱいハイケルお金使ってたしね!」
「そうだな……色々、出費やら出来事が多すぎて頭がおかしくなりそうだったよ。 思い出したら頭が痛くなってきた……」
「ハイケル貧乏?」
「いや、リーファのおかげで何とかなりそうだ」
「リーファの? もしかしてこの地竜? 高く売れる?」
「うん、そうだよ。 このアースドラゴンは高く売れるからね。 アイテムボックスに何処まで入るか分からないけど、可能な限りアースドラゴンを収納したいんだ」
「ハイケルの役に立てて嬉しい! リーファ頑張ってみるっ」
ぴょんぴょんとハイケルの隣で飛び跳ね、子供らしく身体全体で喜びを表現している。
こういうところは周りの9歳位の子達と何ら変わらない反応だから少し安心するな。
バスターソードで何処までダメージを通せるか試す価値はあるが今回はやらない。いや、正確にはやれない。
金がない。いや、冗談抜きで本気で金がないんだよ。
ロシアナという綺麗な嫁さんを突然迎え、引っ越しに、新居にと恐ろしい勢いで金が減っていった。嬉しい事だけども。
だから今回普段受けないようなアースドラゴンの討伐を選んだ。地道に普段はD級のクエストで稼いでいた俺が家族を養わなくてはならなくなったからだ。
それと選んだ理由として俺とアースドラゴンは相性がいい。他の冒険者の斬撃が通らなくとも、俺の斬撃は通る上に討伐後にはデカい魔石が手に入り、簡単に大量の報酬が手に入るからだ。
それが今回何処まで収納出来るか分からないがアイテムボックスにアースドラゴンを入れる事が出来ればしばらくの生活は安泰になる。
俺は密かに期待していた。リーファの収納の可能性に。
「いくよハイケル」
「ああ………頼むリーファ」
手を広げ対象のアースドラゴンに照準を向ける。
いけ! いってくれ! 今後の生活がリーファのアイテムボックスの広さにかかっている。
額に少しの汗をかきながらリーファのスキルに期待を寄せた。
「収納っ!」
対象物をアースドラゴン二匹に合わせた瞬間、見事に2匹に同時にボックスに丸ごと収納されていた。
あのデカいアースドラゴンが丸まる二匹入る広さとは、期待したとはいえ期待以上の成果だ。
よしっ!! まさにチート!!!!
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