リーファの風魔法
隠れた岩陰から指示された方を覗くとアースドラゴンは特に何かをしている様子はなく、地形に溶け込むように擬態していた。
よし。まだこっちに気付いている様子はないな。
「リーファ。 あれがアースドラゴンだよ」
横たわって寝ているアースドラゴンは硬い岩のような外皮を纏い、その硬さは鋼よりも硬いとされている。そのうえ一度暴れだすとその巨体から手がつけられず街を一つ破壊したと言われるほどの狂暴な大型地竜を二人は二匹同時に相手をしようとしていた。
「凄いでっかいね…………しかも二匹もいる」
「あの感じだと番だろうね。おそらく二匹とも寝てる。距離としては約40メートル程だけど、リーファなら使う魔法は何を撃てばいいと思う?」
「う〜ん。 得意な魔法は風魔法だから風属性魔法かな………………?」
「うん。 そうだな。 あいつには有効なのは風魔法だ。 硬い外皮に覆われているアースドラゴンは火属性は通りにくい。 それ以外にも水属性も、土属性も、雷属性も、物理も通りにくい。 普通に戦うと意外と厄介な相手なんだ」
「凄いアースドラゴンて強いんだね……」
「でも弱点もちゃんとある。 何だと思う?」
「う〜ん。 わかんない。 風属性が有効なのは分かるんだけど………」
腕を組み暫くの間リーファは考え込むが、これというようないい案は浮かんできそうになかった。
まぁ、初めて戦う相手だ。特徴も癖も分からなければ中々対策もしようもないからな。
それに俺も正解を望んでいる訳ではない。
「うん。 大丈夫だよ。 正解が分からなくても考える事が大事だからね。 正確には風属性でも使う魔法によってはダメージが入らない。でもリーファの高位風魔法ならそれが可能なんだ。 それが斬撃系の風魔法だ」
「斬撃ってなに?」
「剣で鋭く斬るような攻撃のことだよ。 あいつらは中途半端な攻撃は一切通用しないけど、外皮を貫通するくらいの高強度で練り上げた斬撃をもらうとダメージが入るんだ」
「そうなんだ。 でもあんなに分厚い背中とかだとリーファの風魔法でもムリかもしれないよ………?」
「それも大丈夫だよ。 あいつらは首だけは鱗が薄くできてるからそこをリーファは狙うんだ」
「そっか。 首はよく動かすから薄くできてるんだね!」
「流石リーファは賢いね。 今回はその弱点を狙う練習だよ。 リーファはここからでも狙えるかい?」
「うん。 大丈夫だよ。 でも失敗しちゃったらハイケルはどうするの?」
「俺が二匹とも倒すから大丈夫だよ。 動きもそれほど速くないからね。 失敗したらそのままリーファは岩陰に隠れていればいい。 だから安心して全力で撃ち込んでみればいい」
「うん。 分かった!!」
リーファは集中し、全身に力を込め始める。
光を発しながら魔力は次第に両手に集まっていく。魔力を圧縮させるように繊細にコントロールをしながら高密度の風の刃が目の前に出来上がっていく。
「……………出来た」
光を発した瞬間、斬撃音等とは程遠い爆撃音にも似た音を響かせアースドラゴンに向かって魔法が放たれた。
『聖高なる風の刃!!』
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