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青い流星ウェンツ・クラネルド

「大丈夫なの? ロシアナ」

「ハイケルなら大丈夫ですよ。あの方は天才剣士ですから」


 心配を尻目に俺はウェンツ・クラネルドと会話を交わしていたが、どうも断れそうにない雰囲気だ。しかも嫁のロシアナは俺に少しの期待も寄せている。確かに俺は元A級冒険者だが、相手は現役バリバリのS級冒険者のウェンツ・クラネルドだ。俺が太刀打ちできるは正直難しいだろう。まぁでも、負けても何も失う訳じゃない。特にリーファには冒険者とは何かを感じて貰えるならやる価値も少しは出るかもしれない。

 それであれば


「はぁ…………分かりました。 一度だけですよ。この闘いウェンツ・クラネルドに何の意味があるかは私には正直分かりませんがこの闘い受けてたちましょう」


「ありがとう御座いますハイケルさん。そう言って頂けると思いました。 それに剣士とは強者の前では己を試したくなるものでしょう?」


 いや…………それは君だけだよ。

 若かった時は俺もそんな感情があった時期もあるが今となっては余計な事には時間をかけたくなくなったというのが本音だ。


「はは………そうですね。 ここで闘うのは家も人の目もありますので、王都から少し出た所でもいいですか?」

「かまいません。 それでは行きましょうか」


 歩きながら身体を温めていく。現役トップ相手にどこまで通用するかは分からなが、始めは様子伺いで闘うなどの選択はないほど相手はあまくないだろう。

 であれば選択肢は一つしかない。始めから全力でいこう。


 そう思いながら足を運ぶ。家から5分くらいの所には東区の出口がある。住民プレートを提示すれば門兵の許可を得て外に出ることが出来るからだ。

 門を潜って出たら、そこにはただ広がる冒険者の闘う大地が待っていた。


「さあ。始めましょうかハイケルさん」

「ああ……」


 構えてウェンツ・クラネルドを見る。真っ直ぐな眼。あの青い瞳、あれが[青い流星]と言われる所以。そして数々の敵を葬り去った両手剣ファルシオン。

 流星のような剣撃を放つウェンツ・クラネルド。それ以外のメンバーも攻撃魔法特化のバーバラ・モノリス。 回復魔道士のミンシア・フラン。盾役のバレーノ・オーガスタ。支援魔道士のコロニ・ダイアルがいる。パーティーメンバーからもウェンツ・クラネルドを中心に攻撃編成を組んでいる事が分かる。逆を言えばウェンツ・クラネルドが崩れればパーティー全滅すらあり得る、ウェンツ頼りの構成だ。それ程にウェンツ・クラネルドは剣に自信があるのだろう。


「では…………いきます。 フィジカルブースト!」


「むっ!」




 一瞬だった。 

 瞬き一つ許されない程の速さで懐にウェンツ・クラネルドが入り込む。

 立ち位置から5メートル以上はあった筈だが、これを一瞬とは恐れ入る。流石はS級ランクの冒険者と言えるだろう。


 ガキンッ!


 剣と剣がぶつかり辺りに乾いた音が響き渡る。寸前のところを抑えて躱すが、衝撃で後ろに身体ごともっていかれそうだ。


「くっ………」


 立ち位置を変え、俺も反撃しようとするが、ウェンツ・クラネルドはそのまま連撃に入っている。この位置からまたも剣を放てるとは身体の柔軟性があるからだろう。


 右上、左中段、左下段、右上段、左下段、右中段、左上段と1秒に満たない間に無数の剣撃が放たれ続けている剣を、俺は寸前の所で避け続けてはいるがウェンツ・クラネルドは反撃する隙すら与えないつもりなのだろう。


 剣術の動き、身体の使い方から基本も出来ている。だが、剣士とは剣を交えた一瞬で相手の力量がどれ程のものか大凡(おおよそ)分かる。ウェンツ・クラネルド程になればそれこそ針の穴ほどの小さな隙しかない。当たり前だが…………強い!

 ウェンツ・クラネルドの得意とする極め技『不可視(ヴェリタス・)領域(レルム)閃光斬(・ルクス)』が使われる前に闘いを終わらせる必要があるが、この流れは使わずに終わらせる気でいるのだろうか?


 まだ俺は一撃すらまともに剣を振ってもいないというのにそれはないだろう。だが俺も元A級ランクの冒険者だ、意地を見せなくては。


「ハイケルっ、頑張れっ!!」


 見ると横でリーファが心配そうな顔して見ているじゃないか。そりゃそうだ。まだ始まったばかりなのに一方的に押されてては。


 ふぅ……………身体も温まった。


 針の穴程の小さな隙。 そこを突いていくしかない。


 ならば、ここからは俺の反撃だ。


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