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ヲシリが征く【少年期編】  作者: そうじ職人
第一章 山門國の陰謀

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第六話 ウシ家の特殊な事情

「お兄様、今日はどんなお話をいたしましょうか?」

 マリアとの会話は、いまや食後の日課のようなものになっている。


 そう、会話も立派なリハビリの一環だ。

 この世界の言葉も、徐々に思い出せるようになってきたし、何より家族などの身近な人々の情報が分からないままでは、直ぐに支障をきたすことは目に見えている。

 もっとも父王からは、多少記憶に障害が残ってるくらいには、説明がなされているらしい。


 今までの会話から、少しづつこの国のことや家族構成などが分かってきた。

 先ず俺なんだが、真っ先に知りたい内容なのに、どうにもストレートには聞きづらい。

 そこで周辺の情報から、回りくどい思いをしながら大体のことは聞くことが出来た。


 先ず、これが一番大事。

 俺の名前は、『ヲシリ』で間違いないらしい。

(声に出すときは、《《うぉしり》》って感じなんだよなぁ)


 俺はマリアに、なんで『ヲシリ』って名付けられたのか?訊いてみた。

 マリアも軽く首をかしげて、何でなのか考え込んでしまった。


「お父様が名付けたんだから、直接お聞きになられては?」

 ひとしきり考えた挙句あげくに、そんな風に返されてしまった。


(それもそうだな、いずれ父王には色々と訊くことになるんだろう)


 そんな風に素直に納得してしまった。


ちなみにウシ國の『うし』って、モーモーってく、大きな動物の『牛』で合ってる?」

 それを聞いたマリアは、ツボったのかコロコロと笑い出してしまった。


(うーむ、結構真剣に訊いたんだけどなぁ)


 マリアにはそのギャップが、逆に新鮮で面白かったのだ。


「じゃあ、俺の名前の『ウシノヲシリ』って、牛の尻尾しっぽって意味なのかな?」

 とうとうマリアは、おなかを抱えて大声で笑いころげ出してしまった。


(そんなに俺の名前で、笑い転げなくたっていいだろう)


 そんな俺の表情を見て取ってか、笑いを奥歯でみ殺すように抑えて答えてくれた。

「わたしたちは王家の一族なのですから、国の名前をかんするのは当然ですわ。わたしも正式には『ウシノマリア』ですのよ」


「じゃあ、父王ちちぎみの『ウシノデヲシヒコ』ってどういう意味?」


 マリアは得意気に解説し始めた。

父王ちちぎみの名前は『デヲシ』でしょ? だから『ウシノデヲシ』なんですけど、国王になると尊称として『ヒコ』を名乗るならわしがあるから、合わせて『ウシノデヲシヒコ』になるのですわ」


(なるほど、そういう感じで名乗ってるんだな)


 俺もようやく合点がてんがいったので、深く頷いて見せた。


「そう言えば父王ちちぎみも、時々この部屋に顔を出してくれてたけど、最近はあんまり顔を見せてくれないね」

 話が自然に父王にれてしまったので、ついでとばかりに訊いてみた。


 するとマリアは、チョッと心配そうな表情を浮かべながら教えてくれた。

「最近は急にご公務こうむがお忙しい様子で、なんでもどこかの国からの使者と面会しては、難しそうな顔をなさってますわ」


 俺は悪寒を覚えると共に、ヤマトの國の宗女サグメの冷ややかな目を思い出していた。


 俺は話題を変えて、家族の年齢などの話を訊いてみた。

 そこで初めて判明したのだが、俺は今年で13歳になるらしい。


(これまで自分自身をしっかり見た訳ではないけど、てっきり10歳くらいだと思ってた)


 改めてみても、妹のほうがしっかりして見えてしまう。

 ちなみにマリアは、今年で10歳になるとのこと。


(ただ、妙に10歳をアピってくるんだよなぁ……)


 そして家族は自分の他には、

 母が三人、15歳の兄が一人そして、妹のマリア、そして年の離れた弟が二人いるらしい。


(むむむ、母親が三人?)

 実はこの部屋に移ってから、家族とは一通り挨拶をかわわしたはずだった。


(たしかに普通に母親らしく振舞っていた、女性が三人いたなぁ)


 しかし俺が生きていることを、心から感情をあらわにしてまで、喜んでくれた人がいたようには見えなかった。


(嫌われてたのかなぁ?)


「ところで俺を産んでくれた母さんって、三人の内の誰だったのかなぁ?」

 結構聞きづらい質問だったが、意を決して訊いてみた。


「お兄様の母上は、産後の肥立ちが悪くって……。お兄様をお産みになって直ぐに、お亡くなりになったと聞いておりますわ」

 マリアは気まずそうに答えてくれた。


「それでも父上は、お兄様の母上のことを心から愛していたのだと思いますわ。王家としての世継ぎが少ないのに、つい数年前まで側室すらお迎えになられませんでしたもの」


??????……


「あれ? マリアって俺の妹なんだよね?」


「もちろんですわ」

 マリアはニッコリと微笑ほほえみながら、続けて言った。


「お兄様はお亡くなりになられた、正室がお産みになられた嫡子ちゃくし。わたしと長兄あには、当時側室だった母上が産んでくれた庶子しょしになりますわ。もっとも今でこそ、わたしの母上が正室となっていまけど……」


「ち、ちょっと待って」

 俺も頭の中が混乱してきて、話をさえぎって疑問の核心に切り込んだ。

「ひょっとしてマリアって?」


 マリアは飛びっきりの笑顔を見せて、こう言った。

「はいっ、お兄様の異母妹いもうとですわ」

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