第080話
フランドールは部屋に戻ると、早速装備である金属鎧を脱いだ
それは丈夫な牛の皮を鞣して、その周りに金属のプレートを貼り付けた物である
しかしそんな金属鎧であっても、あの魔物の前には無意味であった
殴られた兵士は木に叩き付けられて、そのまま血反吐を吐いて絶命していた
その光景を思い出すと、次は自分じゃないかと身震いをしてしまう
愛用の剣を引き抜いて確認したが、ヒビこそ入っていなかったが傷や刃が欠けていた
これは最後のオークとの戦いでなったのだろう
オークという魔物は、彼が思っていた以上に危険で強力な魔物であった
あの時、守備部隊の兵士達の助けが間に合ってなければ…
思い出しただけでも身震いがする
剣を収めても恐怖と悔しさは収まらず、思わず壁を殴ってしまった
フランドールが湯浴みをして、夜着のガウンに着替えている間に夕食の準備は整っていた。
そこには珍しい料理が出ており、フランドールはその説明が始まるのを待っていた。
それは牛でも豚でもない、変わった姿の動物の丸焼きであった。
どうやら内臓だけ取り出し、そこへ香草や野菜を詰め込んで焼き上げた様だ。
良い匂いに誘われて、フランドールとアーネストは先に席に着いていた。
ギルバートも湯浴みをして着替えたらしく、簡素なローブを着て現れた。
「やあ
お待たせして申し訳ない」
「いや
今しがた来たところだよ」
「いいから、早く始めようぜ
セリアが泣きそうな顔をしてる」
見ると本当に泣きそうな顔をしている。
しかしそれは恐らく、アーネストに言われて恥ずかしくて泣きそうになっているのだろう。
「ははは
これはすまなかった
それでは始めよう」
そう言ってギルバートがグラスを差し出し、軽く打ち合わせて夕食が始まった。
グラスにはダーナで採れた葡萄から作られた、葡萄酒が入れられていた。
それは芳醇な香りを放ち、渋みは少なく甘みが強い酒であった。
アルコール度数も低く、食前酒の様な感じの軽い酒だ。
「それで…
これは何の肉なんだい?」
フランドールの質問に対し、アーネストが答えた。
「ああ、そうそう
これの紹介がしたかったんだ」
アーネストは合図を出して、メイドが丸焼きの肉を切り分けて香草や野菜を添えて配っていった。
配られた皿からは香草の芳しい香りが漂い、肉の香りと相まって食欲をそそった。
見た目は豚の丸焼きに似ていたが、その容姿は異様で、大きさも2周りは大きかった。
そして出された肉も、豚にしては脂の乗り方が異なっている。
どちらかというと、牛の肉に見えなくもなかった。
「これは…」
「うん
実に旨そうだ」
「兄さま
もう…食べて良い?」
フランドールは厚く切った肉から滴る肉汁に目が行き、かぶりつきたい衝動に駆られた。
セリアも目を輝かせていて、今にも飛び掛からんとナイフとフォークを構えていた。
ジェニファーやフィオーナも唾を飲み込んで我慢していた。
「早速頂こう」
ギルバートがそう言ってナイフを入れ、みなもそれに従った。
暫し無言で肉の旨味を堪能していた。
やがて一心地着いたのか、アーネストが口を開いた。
「文献で知ってはいたが、これほどとは…」
「文献?」
「ええ
実はこれは、古い文献に出ていましてね」
「ん?」
アーネストは勿体ぶらせてから、その生き物の話を始める。
文献という下りから、ギルバートは予想が付いていた。
そもそもがこれは、ギルバート達が倒した獲物である。
「最近…
ワイルド・ボアという魔物が現れる様になりましてね」
「まさか…」
「いえ、そいつは違います」
「ワイルド・ボアって、あの美味しい猪だよね
わたし大好き」
セリアが嬉しそうに言う。
どうやら既に食べた事があるらしい。
一度だけ、少量ながらその肉が出回った事があった。
旅の隊商が、別の街で手に入れた珍しい肉だという触れ込みだった。
確証は無かったが、それは恐らくワイルド・ボアだろうと推察されていた。
しかし残念ながら、まだこの周辺では生きたワイルド・ボアは発見されていなかった。
「魔物の肉を食べたと言うのか?」
「ええ
古い文献にありましたから」
「いや、文献に載っていたと言っても魔物だろ?」
「そうですね
でも、魔物と言っても猪ですよ?
さすがにオークやゴブリンとは違いますよ?」
「いや…
大丈夫なのか?」
「ええ
既に住民も食べていますし、王都へも干し肉にして献上しました
今頃は王にも届いているかと」
「そうか…」
少量であったが、それは王都にも献上されたった。
多く獲れるのであれば、食事事情も改善されただろう。
しかし現状では、それも難しい事である。
どの様な環境で、その魔物が生育されているか判明していないのだ。
フランドールは、魔物が食用に狩られると聞いて驚いていた。
今まで魔物が居なかった事もある。
しかし魔物がそこらにいる猪や豚と変わらないという感覚が、さらに理解出来なかったからだ。
だが感想は兎も角、この肉は間違いなく美味しかった。
「ワイルド・ボアが見付かれば…
あるいは違って来るのですが」
「え?」
「あ!
これは違いますから
ワイルド・ボアは一昨日の祝賀の料理にも出しています」
「え?」
「これはアーマード・ボアって言う、もう一ランク高い魔物です」
「な…」
「そうそう
こいつが手強かったんだ
アレンが吹っ飛ばされて大変だったよ」
「それはまた…
後で謝っておけよ」
さらに驚いた事に、フランドールは既に食べていたという事だった。
確かに一昨日の料理には、豚の様な美味い肉が提供されていた。
てっきり豚と思っていたのが、どうやらワイルド・ボアの肉だったらしい。
しかし珍しい魔物なので、そんなに量が無かったのだ。
今回丸々一頭だったのも、アレンが吹っ飛ばされながらも倒したからだ。
当のアランは、吹っ飛ばされたので狩る事は出来なかった。
それで勝負の結果には、この魔物の事は含まれていなかった。
しかし同行した兵士達が、何とか囲んで討伐していた。
「なかなか頑丈な皮でな
兵士の剣が折れてしまって…」
「それは…
危険じゃ無いのか?」
「将軍が最後に、捕まえて転がしたんだ
腹は頑丈な鱗の様な皮は無いからね
それで兵士達が囲んで…」
「なるほど
腹が弱点だったのか」
「ええ
ですがそのままでは…」
「狙うのも難しいな」
「ううむ…
転がしたというのが…」
「将軍だからな」
「おじさんは腕っ節だけは強いからな」
「おい
それは可哀想だろう?」
「だって本当だろう?
頭の方は…」
「ん
こほん」
「あ…」
そこでメイドの一人が、咳払いをして警告する。
その場にはエレンは居なかったが、聞かれたら叱られるだろう。
アーネストはそれ以上、将軍の悪口を言うのを止める事にした。
一皿目が空になった為、再びメイドが切り分けて行く。
再び更に乗せられた肉が配られる。
その匂いに惹かれて、みなが自然とナイフとフォークを手に持っていた。
子供であるセリアも、二皿目を目の前に涎を垂らしそうになる。
「本当に…
魔物なんですか?」
「ええ
手強かったですよ」
「アレン部隊長が戦ったって話だけど、止めはギルが刺したんだよな?」
「いや
さっきも言ったけど、オレは手を出さなかった
将軍がひっくり返したからだ」
「でも、ギルなら…」
「うーん
でもあの硬さだからな
オレの剣でも斬れたか…」
「それはまた…」
「アレンが逃げた時に、大木をへし折っていたよ」
「そんなに頑丈なんですか?」
「そうらしい
さすがアーマードなんて言われるだけあるよ」
「アーマード…
鎧って事か」
「こいつの皮を剥ぐのも一苦労でしたよ
継ぎ目から切り取るのでも、ナイフが何本かダメになりましたよ」
「死んだら魔力が無くなるから、少しは強度が落ちる筈なんだけどね」
「それでも硬かったぞ
一層オレの剣で、叩き切ってやろうかって程にな」
「しなくて良かったな」
「ああ
してたら香草焼きに出来なかったよ」
どうやら相当に頑丈らしく、調理の前に皮を剥ぐのにも苦労した様だ。
そこら辺も資料があったらしく、剥いだ皮の使い道も調べられていた。
アーマードの名の由来も、頑丈な皮鎧の素材になるかららしい。
「この魔物の皮は頑丈で、鎧や盾に使えるみたいですよ
それに筋肉も固いらしく、強力な弓がつくれるって」
「でも、あんまり強いと引けないんじゃないか?」
「そうか
今はオーガの素材で作った弓も使えていないんだよな」
「そうだよ
作るのは良いけど、使えないと意味がない
先ずは兵士を鍛えないとな」
「ふむ
私も早急に、私兵達を鍛えないといけない
よろしければ、また一緒に討伐に出てもらえないか?」
「ん、ん!」
三人がそんな話をしていると、小さく咳払いがされた。
「三人共、今は食事中です
そういう話は他でしてもらえませんですか?
娘達に悪影響ですよ」
気が付けばジェニファーが冷たい視線でみており、フィオーナも嫌そうな顔をしていた。
ただ、セリアだけは美味しそうに肉にかぶりついていて、皿も3皿目になっていた。
それに気が付き、みなが視線を向ける。
「あむあむ…
んにゅ?」
「ぷっ…くく…」
「これは…」
セリアはみんなに注目されている事に気付き、どうしたの?といった感じで周りを見る。
それを見てジェニファーは頭を抱え、ギルバート達は笑いを堪えていた。
フィオーナも2皿目を食べ終わっていたが、次の皿を頼むか悩んでいた。
しかしセリアの様子を見て恥ずかしくなったのか、俯いて困った顔をしていた。
「ほら
これぐらいなら大丈夫だろ?」
ギルバートが合図をして、小さく切った肉が用意される。
フィオーナは躊躇ったが、嬉しそうにナイフで肉を切り始めた。
がっつくのは恥ずかしいが、それでもこの肉は魅力的だったのだ。
彼女は小さく切ってから、淑女らしく口に運んだ。
それからは暫くは、止め処ない会話が続けられ、食事は楽しく終わった。
食後の葡萄酒を飲みながら、ギルバートはフランドールを執務室へ誘った。
「フランドール殿
よろしかったらこれから話したい事があります」
「分かりました」
二人は執務室へ向かい、アーネストも書類を取りに席を立った。
ジェニファーもフィオーナを椅子から降ろし、セリアは最後の一切れを頬張っていた。
気が付けば、皿は4皿重なっていた。
その様子に呆れながら、ジェニファーは娘達を部屋に送って行った。
執務室に入ったギルバートはソファーに座り、フランドールもその向かい側に座った。
「で?
お話とは?」
「そうですね…
そろそろ…」
コンコン!
ドアがノックされて、アーネストが入って来た。
「お待たせしました
こちらが資料になります」
アーネストは名簿と日付や時間の記された、羊皮紙の束を机の上に置いた。
そこには騒ぎを起こして収容された私兵達と、彼等が接触した人物の名前が記されていた。
日付や時間は彼等が密会した時の記録で、不自然な接触が数回行われている事が分かった。
たった3日だけで、これだけの接触が行われていたのだ。
特に問題なのは、ギルバート達が狩りに出掛けた後だった。
「これは…」
「あなたがここに来られて、まだ3日しか経ってません
その間に行われた密会の記録です」
「まさか?
既にこれだけ動いていたんですか?」
「ええ
こちらが気が付いていないと思ったんですかね?
堂々と密会していました」
「しかし、そうなると
単に何かの用事があったのでは?」
「フランドール殿
ここに来たばかりの兵士が…
それも田舎者とか言っている者が住民と接触するのは、不自然ではありませんか?」
「ううむ…」
そう言われれば、確かに不自然ではある。
娼館に向かったのはまだ分かる。
しかし初日から、数件の商人との接触が記録されている。
王都の兵士が、地方の商人との接点があるとは思えない。
そこには単純な接触では無く、何某かの謀議が行われていたのだろう。
「兎に角
こちらの人物達も怪しいので、警備兵や騎士団でも調べています
これは今後のあなたの統治にも影響するので、早急に対処したいと思っています」
「そうですか
ありがとうございます」
「いえ
これは私達の為でもあります」
「と…言いますと?」
「実は、父上の葬儀の際にも不自然な動きがありました」
「なんと!」
「恐らくは以前から潜入していると思います」
「そうですか…」
挙がっている商人の中には、以前の反乱分子と繋がりのある商人も含まれている。
彼等は直接動いてはいなかったが、その商家に援助などを行っていた。
それも不自然に、必要以上の援助も行っていたのだ。
それが単純な援助では無く、謀略の準備の資金であるとアーネストは睨んでいた。
「この街を守る為にも
そして、母上や妹達を守る為にも
不審な勢力を見逃す事は出来ません」
「そうですね
私も黙って見ていられません」
ギルバートの真剣な眼差しを見て、フランドールも頷く。
アーネストは黙っていたが、その真剣な眼差しからも同じ気持ちだと判断出来た。
「やるなら徹底的にです」
「ああ
私で出来る事なら協力するよ」
「もしかしたらフランドール殿の私兵達から、更なる逮捕者が出るかも知れません」
「それは仕方が無いでしょう
寧ろ今後を考えて、怪しい者は全て捕まえてください」
「分かりました
それでは、明日から動かします
数日中には方が付くと思います」
「よろしくお願いします」
フランドールが頭を下げ、ギルバートも頷いて握手を交わす。
そうして密談は完了した。
街に潜むであろう危険思想の勢力を捕まえる為の、共同戦線が結ばれたのだ。
アーネストは書類を片付けると、次の資料を取り出す。
「さて
これは次の話題になるんだけど…」
「なんだ?」
「これは?」
「先ほど食べた魔物と、その他に最近確認された魔物の資料だよ
どうやら狩猟する場所の相談も必要だろうからな」
「ふうん」
「どれどれ」
ギルバートとフランドールは資料を手に取り、机に置かれた地図と見比べる。
しかし肝心の場所に関しては、未だに確認がされていない。
これから兵士を差し向けるにしても、周りの魔物が邪魔になる。
そう簡単には、件の魔物の捜索は出来そうには無かった。
「今日の狩猟結果から見ても、以前とは魔物の分布範囲が変わっているな」
「私がここでゴブリン、こっちでコボルトを見掛けたが…」
「最近はオークが増えてきたから
ゴブリンやコボルトは徐々にこっちの…
南の草原に移動している」
「ワイルド・ボアも草原に増えてきているみたいだ
この周辺では未発見だが、東の草原で発見されているからな」
「草原か…」
「ああ
これは元々、この魔物を家畜として扱っていたのが原因だと思うんだ」
「なるほど
その魔物はゴブリンやコボルトの家畜だったわけか」
「そうらしい」
「そうなると…
アーマード・ボアは?
あれも家畜だったのか?」
ワイルド・ボアに関しては、家畜である可能性が高いのだろう。
しかしアーマード・ボアに関しては、未だに発見報告は無かった。
今回の発見は、初めての報告であった。
「アーマード・ボアは、まだよく分かっていないんだ
ただ、肉は今日味わった様に非常に美味だ
魔力の多い魔物は、その分肉も美味しくなるらしい」
「ふうん…」
「この欄外に書かれた魔物は?」
フランドールはフォレストウルフとワイルド・ベアという名前を示す。
それは地図上には記されていなかった。
「ああ、それはまだ未発見なんだ
資料には出ているが、実物は見付かっていない」
「それはアーマード・ボアも…」
「アーマード・ボアは、今回発見されたからね
だけどこいつ等は…」
「記録はありますが、発見報告が無いんですよ」
「フォレストウルフはランクGだが、ワイルド・ベアはランクFだな
となると…」
「そう
ベアというだけあって、熊の魔物だ
本当に出たら、恐らく危険な魔物だろう」
「そう思うと、同じFランクの魔物でも、アーマード・ボアはまだ戦い易い魔物なのか?」
「あれで?」
「そうかも知れないな
ギルの話を聞いてるだけだけど、突進しかしないなら…
それに毒とか持っていないし」
「毒?」
「そう、毒を持った魔物もいる
まだ未発見だけど、コモドドラゴンって大トカゲの魔物がそれだ」
「大トカゲの魔物ねえ」
まだまだ未発見の魔物は、この世界には無数に存在するらしい。
言われてみれば、フランドールもここに来るまではオークすら知らなかった。
そう考えると、今まで見た魔物もほんの一部なのだろう。
「あれ?
でもその魔物って、確か美味だって話じゃなかったか?」
「お?
よく覚えていたな
確かに美味しいらしいが、牙に毒があるから危険なんだよ」
「毒があるのに食べられるのかい?」
「牙と毒を出す内臓に気を付ければ、食べられるみたいですよ
ただし殺す時には気を付けないと
なんせ強力な毒で、すぐに処置しないと痺れて動けなくなる
放っておけば数日で亡くなるって書いてありましたよ」
「うえ
そりゃあ食べる時も気を付けないと
うっかり処置を誤れば、毒の入った肉を食べる事になるな」
まだ見た事もない大トカゲの話に盛り上がったが、それから話は元に戻された。
今度は食用の魔物では無く、危険な人型の魔物の話しである。
「こっちの草原にゴブリンやコボルトが多いんだよな…
それならフランドール殿の私兵達は、こっちで訓練されてはどうですか?」
「と、言うと?」
「ゴブリンやコボルトなら倒せそうですし
スキルや戦闘訓練となるならその方が良いでしょう」
「なるほど」
「逆に、フランドール殿の訓練となると、こっちが良さそうですね」
「いや…
オークはまだ自信が無いかな」
「大丈夫ですよ
一緒に騎兵部隊から数人出します
今日みたいに待ち伏せをされなければ、フランドール殿の腕なら十分戦えます」
「そうかなあ…」
ギルバートが頷くのを見て、フランドールは渋々と頷いた。
これ以上尻込んでいては、臆病風に吹かれたみたいになる。
それはフランドールの、プライドが許さなかった。
そのまま戦うのは怖いが、逃げ出すのはもっと嫌だった。
「ただし、数日は待って頂きたい
今日の魔石で武器を強化して欲しいので」
「あ!」
「そうです
武器の強化が出来れば、もうオークも怖くないでしょう」
ギルバートの言葉にフランドールもニヤリと笑う。
確かに武器の新調はしたいと思っていた。
それに、身体強化の付与は魅力的である。
それが可能であるのなら、オーク討伐にも自信が持てる。
「明日は商工ギルドで武器の強化の話をします
申し訳ないんですが、朝の10時頃にギルドに来てもらえませんか?」
「分かりました
私も剣の強化をしていただけるのなら、これほど嬉しい事はありません
よろしくお願いします」
「序でに、今日のアーマード・ボアの素材で鎧も作りませんか?」
アーネストが調子に乗って、そう相談してきた。
「良いんですか?」
「そうですね
まだ作った事が無いので試作品となりますが、その機能も試してみたいですね
明日ギルド長に話してみます」
かくして、急遽新しい装備を作る事となり、フランドールはギルドに向かう事となった。
その夜にフランドールは、グラスを片手にバルコニーで涼んでいた。
思い出すのは、昨日のギルバートの剣技だ。
今日の戦闘でも、彼ほどの剣術があれば苦戦はしなかっただろう。
それが悔しくもあったが、あの恐ろしい魔物と毎日の様に戦ってたのだ。
彼があの様な力を手にする事も、納得する事が出来た。
あの少年に負けたくない
このまま負けたままではいられない
オレは一回りも年上なんだ
いちまでも子供に…
少年に守られた領主代行では…
その為には自分をもっと追い込んで、魔物との戦いで鍛えるしかないのだろうな…
新しい目標が出来て、フランドール目には強い決意が宿っていた。
その目的は、既に領民を守る事では無かった。
ギルバートを超える事で、強い領主であると証明する事に変わっていた。
そうして彼の目には、強い野心の輝きが宿っていた。
まだまだ続きます。
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