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聖王伝(修正中原稿)  作者: 竜人
第三章 新たなる領主
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第070話

領主の葬儀は恙無(つつがな)く終わり、反乱勢力はギルバートの知らぬ内に排除された

それによりギルバートは、そのまま代行が来るまでの繋ぎとして執務に就く事となった

その陰ではギルド長達が動いていたのだが、ギルバートがその事を知る事は無かった


父の葬儀が無事に終わった翌日、ギルバートは執務室に入った

領地の経営等はした事は無かったが、少しでも現状を維持しなければならない

出来ないなりにも、次の領主代行が到着するまでをどうにかしなければならないのだ

溜まっていた書類を広げ、問題の無さそうな物からチェックしていく


「今年の農業支出は…

 去年の資料を探さないと」

ガサゴソ!


「商工ギルドからの陳述書?

 生産の遅れと開発中の資材について…」


必死に羊皮紙にメモを走らせ、問題が無さそうな書類から決裁の印可を押して行く。

しかし数が多く、中には同じ様な書類も混じっている。

ここ数日中に再提出された書類だ。


「ふう

 この新しい素材での武具の作成は急がないとな

 また、いつ魔物が現れるか分からないからな」


ギルバートが独り言をブツブツ言いながら書類を見ていると、外から駆けて来る音が響く。

執事が叱責し、外で口論している声が聞こえる。


「…ですから…魔物の…今すぐ…」

「廊下を…今は坊ちゃまが…」

「ん?」


魔物という言葉が聞こえて、ギルバートは立ち上がる。

小型ならいざ知らず、大型なら手早く対処せねばならぬ。

城壁は万全とは言えないのだ。


「何事だ?」

「坊ちゃん!」

「坊ちゃま」


ギルバートはドアを開け、執事と言い合っている兵士に向かった。

兵士は直ちに状況を説明する。


「坊ちゃま、この男が廊下を…」

「ええい!

 今は魔物が出て緊急時なんだ、そんな事を言っている場合じゃない!」

「魔物が出たのか?」

「はい」


ギルバートは執事に目配せをして、執事は不承不承といった感じで引き下がる。


「状況は?」

「はい

 将軍が騎士団の24名を率いて出ております

 騎兵隊は人数が足らず、また練度も足りておりません」

「うん、そうだろうな

 先の戦闘で、犠牲者が多く出過ぎた」

「はい」


「魔物の種類と数は?」

「コボルトが30ほどと、オークが10

 後はオーガですか?

 大型が5匹います」

「オーガか…

 将軍だけでは無理かも知れんな」

「はい

 ですのでアーネストが、坊ちゃんに連絡をと」

「分かった

 すぐに向かう」


ギルバートは頷くと、執事に書類の束を渡して支度に掛かった。

支度と言っても、鎧は既に身に着けていた。

後は武器の用意だけだったが、新しく打ち直した剣を手に持った。


「オーガか

 この前の残りだろうな」

「その可能性は…

 なんせ正確な数は判明していませんですし

 逃げた魔物が居ても分かりません」

「ああ

 だが…

 父上には良い手向けになる」


ギルバートは好戦的な笑みを浮かべて、邸宅を後にした。

広場を抜けて南門に向かう間も、戦闘の音は響くが城壁の破砕音は聞こえなかった。

どうやら将軍が善戦して、城壁には取り付かれていない様だ。

城門からは負傷した騎士が運び込まれ、新たに集まった12名が出撃して行った。


「準備は良いな」

「おう!」

「将軍の援軍に向かうぞ!」

「行くぞー!」

「おう!」


その様子を見詰めながら、ギルバートは負傷した兵士達の下へ向かう。


「負傷者の数は?」

「坊ちゃん!

 現在は11名になります

 死者はまだ出てません」

「そうか」


ギルバートは城壁に上がる階段に向かう。


「将軍とアーネストが頑張り、現在は森に押し返しています」

「どれどれ

 ふーむ…」


城壁の前には、3匹のオーガが倒れている。

どうやらその様子から、アーネストの火球で打ちのめされ、止めを刺された様だ。

その周りにオークやコボルトの死体も散らばっており、現在2匹のオーガと交戦中だった。

それも追撃の騎士が加わり、将軍が1匹のオーガの足を切り裂いていた。

ほどなく戦闘は終了するだろう。


「なんとかなりそうだな」

「ええ」


将軍もアーネストも、前回の戦闘の経験がある。

念の為にギルバートを呼んだのだろうが、なんとかなりそうであった。

そこへ、広場を駆ける兵士の声が聞こえてきた。

何事か大声で叫び、必死にこちらへ駆けて来る。


「何だ?」

「さあ?」


「…へんだ!

 東門に、東門に魔物が」

「何だと!」


微かに聞こえて来たのは、東門に魔物が出たという言葉だ。


「急ぎ兵を向かわせろ!」

「はい

 残った騎兵を掻き集めろ!

 東門の防備に回すんだ!」

「はい!」


兵士達が慌てふためく。

慌てて兵舎に向かって駆け出すが、それでもせいぜい20名ぐらいしか居ないだろう。

ギルバートはその様子を確認して、城壁の上を駆けだす。

このまま城壁を渡って行けば、数分で東門に着けるだろう。

ここからは見えないが、急がなければ再び城壁が壊される。

ギルバートは城壁を駆け抜けて行った。


東の門が見え始めると、その近くに歩いて来る大きな影が見えた。

やはりオーガが居る様だ。

その数は3匹確認出来た。

足元にはコボルトの群れも見える。


数は50匹を超えないだろうか?

これなら何とかなりそうだ


城壁の上の兵士が、必死に矢を射掛けて応戦していた。


「坊ちゃん!

 危のうございます」

「良いから、矢をコボルトに集中しろ

 オーガはオレに任せろ!」


走り出しながら3mもある城壁から飛び上がり、ギルバートは剣を抜き放ちながら飛び降りる。


「うおおおお!

 バスター!」


空中で大剣は弧を描き、スキルの力を借りて勢いよく叩き付けられた。


ブォン!

ズドーン!

グギャアア

ギャワン


オーガの足元に着地し、勢いで数匹のコボルトを切り飛ばす。

その音にオーガの視線が集まり、足を止める事に成功する。

土煙が収まる前に、次のスキルの構えを取る。

狙うは目の前のオーガの左脚だ。


「スラーッシュ!」

ズバーッ!

グオオオ


オーガの左足が切り裂かれ、大きく左に倒れ込む。

スラッシュの威力は十分で、オーガの左足はほとんど千切れている。

オーガは吠え声を上げて、苦悶にのたうつ。

それを見て、もう1匹のオーガが棍棒を振り翳す。


ガアアア

ズドーン!


「甘い!」


それを見てギルバートは、素早く右に踏み出して躱す。

ギルバートは余裕で躱し、剣を構えて再び駆け出す。

打ち下ろされた大木の様な棍棒に飛び乗ると、再び持ち上げる勢いを使って宙に跳んだ。

そのままの勢いで、ギルバートは3匹目のオーガに向けて跳躍する。


グガアア

ブン!

「はあっ」


ギルバートは3匹目の左肩に目掛けて、剣を構えて宙を舞う。

剣を右肩に担ぎ、そのまま力を溜める。

スキルの構えに反応して、身体が引っ張られる様に捻られる。

その勢いを使って、ギルバートは棍棒に剣を叩き付ける。


「うおおおお

 ブレイザー!」

ゴガン!


一振り目は魔物の構えた棍棒に当たり、そのまま亀裂を入れて振り抜く。

そこから返す一撃で、今度は左腕に切り掛かる。

逆袈裟懸けに振り抜かれた剣は、魔物の左腕を二の腕から切り裂いた。

魔物は悲鳴を上げて、斬られた左腕がちぎれ飛ぶ。


ズバッ!

グガアアア

「ちっ!

 甘かったか」


魔物は深手を負ったが、斬れたのは腕だけだった。

左腕一本では、まだ攻撃は出来るだろう。

このまま着地したら、2匹のオーガに挟まれる事になる。

そう思っていたら、2匹目のオーガが棍棒を振り被って投げて来た。


グガアアア

ブオン!

「うわっと!」


ギルバートは空中で身を捩り、慌ててそれを躱す。

跳んできた棍棒は肩を掠める様に飛んだが、何とか躱す事が出来た。

棍棒はそのまま飛んで行き、3匹目のオーガの頭に直撃した。

この事で3匹目のオーガは、頭を抱えて隙を見せる。


ゴン!

ウガア

「お?」


この棍棒が、思わぬ好機を与えてくれた。

どうやらこのオーガ共は、あまり賢くないらしい。

連携の取れないオーガは、闇雲に攻撃するだけである。

1匹目のオーガは、片足で何とか棍棒を振り上げる。

ギルバートはオーガの振り降ろした棍棒を、そのまま跳躍して躱した。

そうして跳躍しながら、オーガの顔を目掛けて切り裂く。


ウガアアア

ブン!

「せりゃああ」

ザクッ!

グガアアア…


ギルバートは上手く懐に入り、オーガの両目を切り裂く。

オーガは顔を覆って、苦悶の声を上げる。

これで1匹は目が見えず、片足も動かせない状態となる。

3匹目は片腕で棍棒には亀裂が入っているし、2匹目は棍棒を失っていた。

戦況はかなり有利になってきた。


加えてコボルトは、城壁からの弓に攻められて思う様に動けない。

もう少しすれば、城門から騎兵も出て来るだろう。

そうなれば、コボルトは騎兵に任せても良かった。

ギルバートは戦況を見回して、次の一手を考えた。


相手は思ったより愚鈍と判断し、先ずは素手のオーガに向かって駆け出す。

大きく身体を沈めると、跳躍すると見せ掛けてそのまま前方へ飛び込む。

相手のオーガも身構えていたが、ギルバートの構えに頭上を警戒して手を挙げる。

そのままギルバートは前方へ飛び込むと、低い体勢から横薙ぎに剣を振り抜いた。


「ぬああああ

 スラーッシュ」

ザシューッ!

ガアアアア


横をすり抜ける様に、見事に一閃が左足を切り裂く。

再びスラッシュが決まり、オーガの左足が大きく切り裂かれた。

頭を庇った体制のまま、オーガは横向きに倒れ込んでしまう。

そのまま踏み切ると、ギルバートは後方へ跳躍する。

倒れたオーガの胸元へ目掛け、大剣を下向きに突き刺す。


「ふうん」

グサリ!

グオオ…グハ


心臓に一突きが決まり、オーガは血反吐を吐いた。

返り血にも構わず、ギルバートはそのまま剣を捻って抉る。

そして剣を引き抜くと、迫る片腕のオーガに振り向いた。

オーガは残る右腕で、壊れかけの棍棒を掲げている。


ウガアアア


その横で1匹目のオーガが、目に血が入って見えなくなっていた為に、出鱈目に棍棒を振り回していた。

振り回した棍棒がもう1匹のオーガの脚に当たり、オーガはバランスを崩す。

その隙にギルバートは、オーガの死体を踏み台にして跳躍した。


「うりゃあああ

 ブレイザー!」

ズバッ!ザクッ!

グガアアア


一太刀目が右肩から切り付けて、肋骨を砕きながら肺を切り裂く。

そのまま胸元から剣を返して、左肩まで切り上げた。

再び骨が砕ける音がして、オーガの胸から上がずり落ちた。

ギルバートは振り抜いた勢いを使い、オーガの首なし死体を踏み台にして飛び上がる。

ギルバートは宙を舞い、最後のオーガの脳天に剣を突き立てた。


最後のオーガは目を切り裂かれて、視界を奪われていた。

両腕を振り回して、何とか攻撃しようとしていた。

しかしギルバートは、その上空から脳天へ目掛けて剣を突き立てる。

頭蓋は分厚く硬かったが、ギルバートは渾身の力を込めて突き立てた。

ゴリっと鈍い音を立てて、剣は魔物の頭頂部に突き刺さる。

それで魔物は、意識を失って倒れた。


ウガアアアア

ブンブン!

「せりゃああ」

ドス!

ゴリゴリ!

ゴガン!

グガ…ガ…


3匹のオーガが倒れると、ギルバートはその頭を蹴って跳躍する。

剣は深々と刺さっているので、一旦手放して着地する。

それから力を込めて、突き刺さった剣を引き抜いた。

剣には魔物の脳漿と血が着いていたが、それを払って剣をしまう。


「ふう…

 やれやれ、何とかなったな」


見回すといつの間に出ていたのか、騎兵がコボルトを蹂躙していた。

被害も少なく、倒れているのは2人だけであった。

このまま数刻も経たずに、魔物は討伐出来るだろう。

ギルバートは戦闘が終わったと判断して、そのまま城門に向かった。


「坊ちゃん、ありがとうございます」

「流石ですな

 あの化け物をお一人で倒すとは…」

「さすがアルベルト様のご子息です」


戦闘を終えた騎兵達が、ギルバートの近くへ集まって来た。

魔物の残党も、森に向かって逃げ始めていた。

しかし戦闘が終わっても、まだ油断は出来なかった。

先ずは体制を整えて、次の襲撃に備えなければならない。


「オレの事は良い

 負傷者の手当と、周囲の警戒を頼む」

「はい」

「負傷は2名です

 怪我の具合は…」

「すぐにポーションで手当てをしてやれ」

「はい」


倒れている二人はピクリとも動かない、息はしている様だが重傷だろう。

少しでも助かるなら、それに越した事は無い。

今は少しでも、戦力を温存しておきたい。

騎兵達は負傷者を、馬に乗せて運んで行く。

それを見ながら、ギルバートは城壁を潜った。


「っと…」


しかし気が抜けたのか、スキルの連投の反動でギルバートはふらついた。

城門の壁に手を着いて、ギルバートは頭を軽く振る。


「坊ちゃん?」

「大丈夫だ!

 少し休めば回復する」


ギルバートは心配して駆け寄る兵士を制し、皮袋を受け取って水を(あお)った。

皮袋の中の水は、生温くなっている。

しかし乾いた喉には、それでも美味く感じられた。


「ふう

 やはり、スキルの多用は注意しないとな

 身体に反動が来る」

「はあ…」

「それが出来るのは、坊ちゃんぐらいですよ」

「そうですよ」


ギルバートは城門の壁を背にして、一人呟いた。

暗い城門の壁は、ひんやりと冷たくて気持ちが良い。

ギルバートはその冷たさに、疲労が少しだけ回復した様な気がした。


現状ではスキルを、連続で放てる者は少ない。

それでも何とかなっているのは、まだ魔物の数が少ないからだろう。

これがオーガの様な、大型の魔物が群れで来ては勝てないだろう。

オーガほどの魔物になると、単発のスキルでは倒せないのだ。


しかしスキルの連発は、思ったよりも疲労が蓄積する。

特に連発した後は、反動の様な疲労感に襲われる。

ギルバートですらこの様になるので、一般の兵士では連発は出来ないだろう。


この先この様な大型の魔物が多く現れたら…

街は守れるのであろうか?


大きな不安が付き纏うが、今は信じて戦うしか無かった。

アーネストの魔法を頼るにしても、アーネスト一人では限界がある。

だからと言って、将軍の様な戦士も少ない。

部隊長達ですら、スキルは3連続が限界だと言っていた。

今は戦闘を繰り返して、スキルに慣れる必要がある。

それから連発して、スキルを使える様に訓練すべきだろう。

ギルバートには、それ以外の方法は思い浮かばなかった。


少し休んでから、ギルバートは騎兵隊に指示を出して、魔物の遺骸を集めさせた。

コボルトの毛皮も大事だが、一番はオーガの遺骸だ。

大きな身体から取れる骨は、丈夫で使い道が多い。

魔石も大きな物が取れるので、魔法の触媒に重宝するだろう。


今ギルバートが持っている大剣も、先の戦闘で手にいれたオーガの魔石が使われている。

そのお陰で身体強化と、耐久性や切れ味の向上の魔法が掛かっている。

魔法自体は、魔導書に書かれていた初歩の魔法である。

これは魔導王国が、初心者魔術師に教えていた付与の魔法の手引きに書かれていた。

だから効果も、それほどの物は期待出来ない。


しかし初歩の付与魔法でも、使用者によっては効果も高くなる。

ギルバート自身の力も上がるので、その分攻撃力も上がっているのだ。

今までは傷を付けるのがやっとだったオーガにも、致命傷を与えられる様になっていた。

先の脳天への一撃も、この強化があってこその物である。


これだけでもかなり有用なのだが、更に身体能力の強化によってより大きな剣が持てる様になった。

今まででも長剣までは持てたが、今回の魔石の性能から1mの大きな大剣が持てるまでになっている。

これは純粋に攻撃力も上がるので、今回の戦闘が楽になったのはこの辺も関係していた。

大きい剣であれば、その分重量や強度も増している。

その分一撃の威力も、以前に比べれば格段に上がっているのだ。


問題はその威力に、剣の方が耐えられるかという事だ。

今の剣では、そこまでの負荷は掛かっていないと思う。

しかし魔物の種類によっては、剣が耐えられない可能性もあった。

ギルバートはまだ無銘の大剣を持ち上げ、その魔石を撫でる。

何とかオーガへの攻撃にも、剣は耐えてくれていた。


「良い剣ですよね」

「ああ」

「名前は決められたんですか?」

「いや、まだだ」

「どうせなら…

 鬼を打ち倒す者(オーガ・スレイヤー)とかどうです?」

「そうですよ

 将軍の剣が狼を打ち倒す者(ヴォルフ・スレイヤー)でしょう?」

「うーん

 今一なんだよな」


ギルバートは首を傾げて悩む。

オーガ・スレイヤーとなると、鬼を打ち倒す者という意味になる。

確かにギルバートは、オーガを打ち倒していた。

しかしそれでは、オーガまでしか倒せない気がして来る。


「お前のセンスでは、殿下は納得せんだろう」

「ひでえな

 じゃあ、お前なら良いのがあるのか?」

「オレなら、鬼を破壊する者(オーガ・バスター)だな」

「あまり変わらんな…」

「あ…」


兵士達が笑い出す。

どちらもオーガを倒した者と言う意味にはなるが、今一しっくりしなかった。


巨人殺し(ジャイアント・キラー)

 それなら巨人を殺してみないとな

 無理だろうし…」

熊殺し(ベア・キラー)では?」

「馬鹿!

 価値が下がってるだろ」

「あ…」

「はははは」


兵士達は勇ましい名前を考えて色々と挙げてはみたが、どれも良い名前が浮かばなかった。


「取り敢えずは…

 鬼殺し?

 オーガ・バスターとでも名付けておくか」


ギルバートは当面はそう呼ぶ事にした。

また良い名前が浮かべば、その時改名すれば良い。


「では、鬼を打ち倒せし者(オーガ・バスター)

 そう呼びましょう」

「良いなあ、オレも欲しいや」

「馬鹿、お前には無理だろ

 殿下用に作られた剣だ、お前みたいに酒代に使う奴では買えんだろ」

「それに…

 重くて振り回せんだろう?」

「確かに」


兵士達の装備は、ここ最近の戦闘で向上していたが、それでも長剣や鎌がせいぜいであった。

身体能力の向上が付与されても、元々の力量の差が出ていた。

ギルバートが急激に力を着けたのは、恐らく称号が与えられたからだろう。

実際に大剣を使いこなせた者は、戦士や騎士の称号が与えられた者であった。

天からの声を聴いてから、彼等は力が強くなっていた。


「称号の謎は、まだ解明されていませんが

 恐らくは魔物との戦闘の経験が必要かと

 今回の戦闘でも、何人か戦士の称号が与えられています」

「この先、活躍に期待されています」

「そうか…」


ギルバートは新たな戦士が誕生していると聞き、魔物との戦闘に少しだけ希望が持てた気がした。

彼等が魔物との戦闘を重ねて、いずれは将軍に匹敵する戦士に育つ。

そうなればダーナも、安泰であろう。

しかしそれには、誰も欠ける事無く勝ち続ける必要があるだろう。

今日の戦いでも、数名が命を落とし掛けていたのだ。

相手がコボルトでも、油断は出来ないだろう。


このまま、何事も無ければ良いのだが…


ギルバートはそう思いながら、城門を潜って街に入って行く。

今日の戦闘で、再び魔物の素材が手に入った。

商人や工房の職人達が、素材を引き取りに集まっている。

この素材を使って、もっと良い装備が出来れば良いのだがと、ギルバートはそんな事を考えていた。

まだまだ続きます。

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