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聖王伝(修正中原稿)  作者: 竜人
第三章 新たなる領主
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第061話

魔物は討伐出来たが、被害は大きかった

街を守る城壁は一部が崩され、守備する兵士も多くの者が命を落とした

魔物は居なくなったものの、いつ他の魔物が現れるか分からない

将軍は崩れた箇所の見張りも決めて、一先ず宿舎へ向かった


崩れた城壁の向こうで、ギルバートは横になっていた

隣には兵士が立ち、周囲を警戒している

ギルバートは力を出し尽くし、その場で寝ていた

正確には気を失っていたのだが、兵士は気付かずに起きるのを待っていた


「う、うう…」


ギルバートは呻き声を上げ、頭を振りながら起き上がった。

地面に寝ていたのもあるが、スキルの乱発のツケなのか?

彼は全身に倦怠感を感じていた。

身を起こすとギルバートは、周囲を見回して状況を確認する。


「オレは…」

「坊っちゃん、気が付かれましたか?」

「寝てたのか?」

「はあ、多分

 戦いの後に来てみれば、坊っちゃんは休まれていましたので…」

「そうか

 見張っていてくれてありがとう」

「はい」


ギルバートは兵士に礼を言うと、崩れた城壁を潜って中へ入った。

最後に戦いに向かった状況を、思い出しながら城壁を潜る。

父の事も心配だったが、その場は騒然としていた。

あの時は魔物の攻撃で、多くの兵士が負傷していた筈だった。

そしてその多くが、亡くなってもおかしくない重傷であった筈だ。


城壁の中へ入ると、既に負傷者は運ばれた後であった。

そこには亡くなった兵士の、遺体が並べられていた。

彼等は瓦礫から出されたものの、既に息を引き取っていた。

よく見ると上半身だけの者もあり、下半身は食べられたと思われる傷痕が見える。

他にも遺体の欠損が激しく、戦闘中に食い付かれて亡くなってしまった様に見える。

オーガは戦闘中でも、腕や脚を千切って食べていたそうだ。

そのせいでオーガに襲われた兵士は、遺体の損傷も激しかった。


その隣には、オークと戦っていた兵士の遺体が並べられていた。

こちらも損傷が激しいが、食われていない分欠損は少なかった。

その代わり人数は、オーガの被害者の倍以上並んでいた。

こちらは歩兵の遺体で、オークを城壁に近付けまいと奮戦したのだろう。

激しい戦いによって、あちこちが叩き潰されていた。


歩兵は150名近く参加していたらしいが、生きて帰れたのは30名ほどであったらしい。

それだけオークとの戦闘が、激しいものだったのだろう。

その後に向かって来たオーガに、残された兵士達も襲われた。

ギルバートが倒していなければ、さらに死者は増えていただろう。


今も兵士が運ばれて来るが、怪我人はほとんど居なかった。

運ばれて来るのは、いずれも無残な、物言わぬ遺体ばかりであった。

稀に息をする者も居たが、ほとんどが助かりそうに無いほどの傷を負っている。

そして傷を塞ごうにも、ポーションや薬草が不足していた。

多少の余剰は用意されていたが、ここまでの被害は想定されていなかった。

ここ数ヶ月の戦いで、魔物との戦闘に慣れてしまっていた。

それで兵舎の備蓄も、普段と変わらぬ程度の量しか用意されていなかった。

ここまで強い魔物が、現れる事は想定されていなかったのだ。


「早く!

 もっとポーションを!」

「こっちも足りないぞ!」

「もう在庫がありません」

「くそっ

 店からありったけ持って来させろ!」

「駄目です

 ここぞとばかりに値を吊り上げやがって…」


商人達は、ポーションの値段を上げているらしい。

これが領主の命令ならば、商人達も黙って従っただろう。

しかし肝心の領主が、今や負傷して運ばれている。

それを良い事に、彼等はポーションの値を釣り上げていたのだ。

また持って来たポーションでも、重傷者には効果は望めなかった。


「くそっ

 こいつももうダメだ

 早く楽にしてやってくれ」

「はい」

「そいつはポーションでも、どうにかならないか?」

「ダメだ、もう息をしていない」

「くっ

 遅かったか…」

「無理だ!

 こんなのポーションじゃ…

 血が止まらない!」

「う、うう

 腕が…

 オレの腕はどこへ行った?」

「すまない

 見つけられなかった…」


重傷者も多く居るが、一部の欠損ならポーションで出血を抑えられる。

しかし腹部が裂けていたりする者は、どう見ても手遅れとみなして(とど)めが差された。

ギルバートは邪魔にならない様に移動しながら、死体を運ぶ兵士に声を掛ける。

父の事も気になるが、今は目の前の命を繋ぐ必要がある。

自分の権限で、何か出来ないか考えていた。


「どのぐらいの被害が出ている?」

「こっちは出て行った奴等のほとんどが殺された

 コボルトに当たれば良かったんだが、その向こうに大型の魔物が居たから…」

「こっちは将軍に頼まれて、豚に当たっていたんだ」

「豚も数が少なければ…

 何とかなったかもな

 でも、100は居たから

 生きてる奴が居るのが奇跡だよ」

「あの大型の魔物が居なければ…

 城壁から攻撃出来たんですが

 城壁も攻撃されていましたからね」


中には口惜しそうに、手当ての手伝いをする弓兵もいた。

今回の戦いでは、彼等はほとんど何も出来なかった。

弓を射るにしても、その場所が無かったのだ。

城壁は攻撃され、下からでは仲間が邪魔になっている。

下手な場所に撃てば、仲間にも被害が出てしまう。

それで彼等は、城壁の内側で待機していたのだ。

中にはそれでも、崩れた城壁に巻き込まれた不運な者も居たが…。


やはり被害の原因は、大型の魔物に襲撃されたからだろう。

城壁が崩されれば、魔物の侵入を容易にしてしまう。

それに弓兵や、魔術師の攻撃が困難になってしまう。

今後も来るなら、大型の魔物に対抗する手段が必要になるだろう。


「そう言えば、弓兵の姿が少ないが?」

「ああ

 弓兵は北門に、主に集められましたからね」

「こっちは城壁を、いきなり攻められましたからね」

「あいつ等も城壁を押さえられちゃあ…」

「それで将軍が、北門に向かえって」

「あっちはゴブリンとコボルトでしたから

 時間を掛けてでも城壁から攻撃しろって」

「向こうもそれなりの数が居ましたからね」

「なるほど

 そうすると、北門の被害は?」

「ほとんど無かったみたいです

 魔物も先ほど逃げ出したって聞きましたし」

「そうか

 ありがとう」


ギルバートは兵士に礼を言い、負傷者を運ぶ先を見た。

アーネストも父親も姿が見えない。

考えられるのは救護所に運ばれて、治療を受けているのだろうか。

父親の姿を探して、ギルバートは救護所の方へ向かった。


救護所に向かう間も、応急手当を受けた者が次々と運ばれる。

包帯を巻いた者や担架に乗せられた者、負傷者同士で支え合って歩く者も居た。

その先には宿舎の入り口で、指示を出す者の姿が見えた。

片方は戦場に出ていた、エドワード隊長であった。

もう一方は非番で休んでいた、エリック部隊長である。

彼はパーティー会場での姿のままで、兵士達に指示を出している。


「隊長」

「おお、坊っちゃん

 よくぞ御無事で」

「アーネストと父上は?」

「…」


隊長は一瞬迷い、話を逸らす様に話題を変えようとする。

エリックもその視線に気が付き、兵士への指示に忙しいフリをしていた。


「その箱は奥に運べ」

「はい」

「足りないポーションの数は気にするな

 今は他の城門からも搔き集めろ」

「はい」

「この度は…

 佳き日にも関わらず、とんだ災難でしたなあ」

「隊長」

「まあ、無事に魔物を討伐出来…」

「隊長!」

「…」

「坊っちゃん…」


ギルバートは堪らず、エドワード隊長の肩を掴む。

隊長は少し躊躇い、優しくその手を押さえる。


「父上の事は…

 残念です

 今はあちらで休んでおられます」


そう言ってエドワードは、救護所の一つに視線を送る。

そこには兵士が近付かない様にして、静かに休める様にされていた。

その光景が異常に感じて、ギルバートは思わず駆け出しそうになる。

しかしそれを、隊長は手を掴んで止める。


「坊っちゃん…」

「放せ!」

「坊っちゃん」

「放してください」

「坊っちゃん!」

「父上が…」

「落ち着きなさい!」

パシン!


隊長の叱責の声に、辺りは静まり返った。

隊長はギルバートの頬を叩き、落ち着く様に諭す。

その間にエリックは兵士を一人呼び、何事か指示を出した。

命じられた兵士は、頷いてギルバートの前へ来る。


「坊っちゃん

 何があっても、落ち着くのです」

「しかし父上が…」

「それでも…です

 坊っちゃん…

 いえ、殿下」

「っ!」

「あなたは…

 それだけの責任があります」

「坊っちゃん

 どうぞ、ご案内します」

「あ、ああ」


エドワード隊長は、何故かこの時に殿下と言い直していた。

その事が逆に、ギルバートに冷静さを取り戻させていた。

ギルバートは隊長が、何かを知っていると感じていた。

しかし今は、父親の容体が心配であった。


ギルバートは兵士の後に着いて、今度は静かに着いて行った。

救護所の様子が、騒ぐ事を許さない様な静けさを見せている。

エドワード隊長は、それを見送ってから再び指示を出し始めた。

エリックもそれを見て、再び指示を出し始める。

兵士達は指示に従って、兵士や資材を運び始める。

それはあまり声を出さない様に、静かに行われていた。


「坊っちゃん、こちらになります」

「ああ

 ありがと…」

「お待ちください

 良いですね?

 決して大声は出してはなりません」

「え?」


兵士はしっかりとギルバートの手を押さえ、静かに続ける。

それは領主の息子でも、許さないという強い意思を感じさせた。


「容体は…思わしくありません

 それでも…

 良いんですね?」

「な!」

「静かに!

 大声や揺すったりしてはいけません

 頭を強く打っています

 兎に角安静にして…

 それでも、もって数日が山場です」

「そ、そんな…」


兵士は静かにする様に注意して、音を立てない様に慎重にドアを開ける。

中はカーテンを閉めて薄暗くしており、ベットの傍らでは司祭と魔術師が見守っていた。

少し離れたテーブルには、アーネストが突っ伏していた。

彼の前には多量のポーションが、空になって置かれていた。


兵士が静かに近付き、司祭や魔術師とヒソヒソと小声で会話をする。

暫く話すと、入り口のギルバートの側へ戻って来た。

彼は手招きすると、小声でギルバートに説明する。


「魔術師の話では、かなり生命力も弱っていると」

「そんな…」

「アーネストが必死になって頑張り

 今は落ち着いています」

「ポーションは?

 傷を癒すポーションは…」

「既に試しました

 しかし、効果は…

 最初運ばれた時は、もう駄目かと思われました

 今は少しだけですが、持ち直しました」

「それではポーションは?」

「頭への怪我では、ポーションの効果も期待出来ません」

「王家からの支給のポーションは?」

「あれも効果は高いんですが…

 傷を塞ぐのが手一杯なんです

 頭の傷は、どの様な状況か分からないんです」

「そ、そんな」

「分かってください、坊っちゃん

 みんな手を尽くしたんです

 それでも…

 いつまでもつかは…」

「ちち…うえ…」


兵士は首を振る。

ギルバートは一瞬、怒りに殺気を漏らす。

その様子に、思わず兵士も後退る。

しかしすぐに、ギルバートは何とか殺気を押さえる。

彼が言う様に、みなも懸命な治療を施したのだろう。

見れば司祭や魔術師も、消耗して眼の下に(くま)を作っていた。

ギルバートはすぐに自分を押さえようと、呼吸を荒くして堪えていた。


「ぼ、坊っちゃん

 いけません」

「ぐ、くうっ

 はあはあ…」

「落ち着いて…

 落ち着いてください

 今の坊ちゃんの殺気では、アルベルト様の寿命を削ります」

「くっ…」

「隊長が止めたのが、分かりましたか?」

「…」

「行きましょう?

 今の私達に、出来る事は有りません」


兵士に肩を叩かれ、ギルバートは素直に従った。

喚き散らしたかった。

泣いて縋りたかった。

しかし、それすら許されないほどに、父親の容体は危険であった。

顔は蒼白になり、呼吸は静かであったが目を覚ます気配は無かった。

それならば、今の自分に出来る事は無い。


救護所の一室を出ると、ギルバートは力なく歩く。

兵士はそんなギルバートを見て、支えようか悩んでいた。

隊長からは今の領主の様子を見せて、後は関わらない様に言われていた。

しかし息子とそう変わらない年齢の青年の、打ちひしがれる姿を見ると放っておけなかった。


「ぼ…」

「…」

ズガッ!


ギルバートは少し離れた宿舎の壁にもたれ掛かり、その壁を殴った。

そこは石を組み上げた、頑丈な壁になっていた。

元はしっかりとした、ドワーフ製の家だったのだろう。

その壁には、ギルバートの殴った拳の跡が残されていた。

そしてギルバートは、泣き出したいのを必死に堪える。

そこへ大股で歩く足音が、彼に近づいて来た。


「坊っちゃん

 こちらに居られたか」


将軍が来て、ギルバートの肩をガッシリと掴んだ。


「お父上の事は伺いました

 しかし、火急の業務が御座います

 よろしいですね?」

「な、ちょっ

 将軍!」


落ち込んでる者に容赦なく仕事をさせようとする将軍を見て、思わず兵士は声を上げる。


「分かっている

 しかし、彼は領主の息子だ

 悲しんでいる暇は無い」

「しかし!」

「例え親が死のうと

 領民の為に働かなくてはならない

 それが領主と云う物だ」

「将軍!」


無礼とは思ったが、兵士は思わず将軍の胸倉を掴む。

しかしそれを黙って見ていた、ギルバートが止める。


「坊っちゃん?」

「良いんだ

 確かに、将軍の言う通りだ」

「しかし、他に言い様が…」

「構わない

 オレは…

 オレはやるべき事をする」

「ではこちらへ」


将軍に連れられて去って行くギルバートを見送ってから、兵士は壁を殴りつけた。

そこは先程、ギルバートが殴ったすぐ隣だった。

しかし大人の彼が殴っても、そこには跡も残されなかった。


「将軍になったら、ああなるのか?

 見損なったぜ」


兵士は将軍が、守備隊長をしている頃から知っていた。

だから今の将軍の、言動が許せなかった。

あんなに部下思いで優しかった大隊長が、将軍となったら変わるんだ。

兵士は腹立たしく感じると共に、悲しいとも思った。


ギルバートはそんな将軍に連れられながら、注意点を伝えられる。

これから会う者に関しては、ギルバートでは先ず間違い無く言いくるめられるだろう。

それほど相手は、油断のならない人物たちだった。

しかし領主が居ない今、ギルバートしか命令を下せる者が居ないのだ。


「これから会うのは、商工ギルドの長です

 城壁の修復に当たり、殿下には決済の印を押していただきたく…」

「オレが…ですか?」

「ええ

 殿下が現在の領主代行ですから」

「計画の企画書は?」

「オレとギルド長で作成しました」

「信用して…良いのか?」

「そこは…

 信用してくださいとしか

 殿下には知識が有りませんでしょうから」

「それは…まあ」


ギルバートは城壁の構造は元より、掛かる経費や時間を聞いても分かる訳が無い。

だからと言って、軽々しく決済は出来ない。

書類に印を記せば、後には退けなくなるからだ。


「母上は?」

「ジェニファー様ですか?

 確かに権限は御座いますが…

 坊っちゃんと…

 殿下とそう変わらないかと

 失礼ですが女性ですし、何よりも知識は御座いませんでしょう?

 財政状況も恐らくは…」

「善くも悪くも、父上が一人で仕切っていたからな

 仕方が無いか…」

「ええ

 ジェニファー様を呼ばれるよりは、ここに居らっしゃる坊っちゃんに頼む方が宜しいかと…

 差し出がましいですが愚行しました」

「いや

 それは賢明な判断だと思うよ」

「え?」

「それと…

 オレが落ち込まない様に、仕事に(かこつ)けたんだろ?」

「むう

 お見通し…でしたか?」

「いや

 今気が付いたよ

 将軍はいつもそういうの気にしてるからな

 先のは違和感しか無かったよ?」

「はははは

 そうですか」


将軍は頭を掻きながら、我ながら浅はかだったかな?と反省していた。


「それでは、こちらに」


将軍が執務室に案内し、ギルド長に面会を促す。


「既に顔は知っているかと思いますが

 商工ギルド長です」

「よろしくお願いします」

「ああ

 ギルドには幾度か通っている

 剣や鎧の事でも相談に乗ってもらったからな」

「はい」

「それでは、こちらが書類になります

 費用は来年の予算から、期間は…

 来月一杯を見ていただければ」

「ふむ

 オレでは分からないが、貴方を信用するしか無いな」

「そうですね

 それに…

 急がなければなりませんから

 魔物がいつ来るか分からないですからね」


ギルバートは書類を見ると、ざっと内容を読んでみる。

特に不審な点も見つからず、決済の印を手持ちの指輪で押す。


「これで良いのかな?」

「ええ

 お手数を掛けてすいません」

「良いよ

 貴方も将軍とグルなんでしょ?」

「バレていましたか

 それでは私はこれで…

 そうそう、領主様が目を覚まされたらお呼びください

 失礼します」


ギルド長は深々と頭を下げて、部屋を辞した。

将軍は頭を振りながら呟く。


「あのおっさんも素直じゃないなあ

 領主様の事心配してたのに」

「そうなんですか?」

「ああ

 領主様には世話になってるからな

 ほとんどの奴が領主様の事が好きで、心配しているだろうな」

「へえ」

「ただし、一部の者には気を付けてください

 中にはこの機に乗じて…

 一儲けしようと企んでいる奴も居ますからね

 詳しくはアーネストに…

 ってアーネストは?」

「さっきは父上の病室に居ました

 必死になって父上の治療をしてくれたと…

 暫くは起きれないでしょう」

「そうか…

 なら、後ほど聞いてください

 オレよりはあいつの方が、そういうのは詳しいですから」

「はあ…」


将軍は、どちらかといえば戦士である。

騎士団を率いる様になってからは、それなりに頭も使う様にはなっていた。

しかし性格の問題で、腹芸はあまり得意では無い。

そういうのは、どうしてもアーネストの方が得意だった。


「それで…

 要件は以上ですか?」

「そうだなあ

 当面は危険も無いし、屋敷に戻って休んでいて欲しいですかな

 オーガは一部が逃げ出したし、他の魔物が来るかも知れません

 いざという時の為にもね」

「分かりました

 それでは帰りますね」

「ええ

 それではお気を付けて

 後でアーネストが起きたら向かわせます」

「ええ」


ギルバートは執務室を出ると、宿舎の出口に向かった。

こちらは騎士団の宿舎なので、死者が多く出た分宿舎の人気は少なかった。

簡単に聞いただけでも、騎士団の約半数が命を落とした事になる。

王都に応援を呼んだとは聞いてはいるが、暫くは当てには出来ないだろう。

そうなると、街の防衛は守備隊のみになる。


不安を覚えつつも、今は休みたいとギルバートは思った。

大型の魔物と戦い、必要以上にスキルを乱発していた。

それで少しは休んだが、体力は消耗している。

それに加えて、父の容体の事もあった。


父が亡くなれば、この街は大きく混乱するだろう。

それを考えれば、今から憂鬱な気分になる。

何よりも父の死よりも、儲けに目が眩む商人が多く居るという事実に気が重くなる。

これから起きるであろう混乱を考えれば、今は静かに休んで眠りたかった。

まだまだ続きます。

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