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聖王伝(修正中原稿)  作者: 竜人
第三章 新たなる領主
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第059話

ギルバートの誕生日を祝うパーティー

その祝賀ムードを嘲笑(あざわら)うかの様に、魔物の群れが襲い掛かって来ていた

その魔物達は(かつ)て無い規模で侵攻して来て、ダーナの街は危機を迎えていた


ギルバートはアルベルトとアーネストと共に、領主の邸宅を出て守備隊の宿舎に向かっていた

宿舎に向けて街中を走る内に、東の城門から大きな音がして兵士が駆けて行くのが見えた

ギルバートは兵士の一人を捕まえると、状況を聞こうとした


「すまない

 君は東の城門に向かっているのか?」

「はい」


「戦闘は東の城門で起こっているのか?」

「そうです

 既に騎士団も出ています」

「分かった

 ありがとう」

「はい

 失礼します」


兵士は礼をすると、慌てて東の城門に向かった。


「どうしますか?」

「うむ

 騎士団も出ているなら、既に討伐しているのでは?」

「魔物は大型のもいるらしいです

 兎に角、東の城門に行きましょう」


三人は行き先を変更して、東の城門へと向かった。

城門の前の広場に到着すると、既に魔物は城壁に取り付いており、城壁は魔物の攻撃で軋んでいた。

アーネストは駆け出し、城壁の上に身を乗り出した。

そしてそこから見える光景に、思わず言葉を失っていた。


そこには3mにも達する大型の魔物が多数居て、城壁に攻撃を加えていた。

それは粘着く体表を震わせて、拳で城壁を殴り付ける。

城門の外では騎士団が、コボルトの群れに突撃を仕掛けて混戦している。

その周りではオークが大きな棍棒を振り回し、歩兵が必死に抵抗していた。


「うわあ…

 これはマズい」


アーネストはすぐに杖を取り出し、眼前に構える。

このまま手を(こまね)いていては、城壁は程なく崩れ去るだろう。

その前に何とか、城壁に取り付く魔物だけは排除せねばならない。

幸いその魔物は、アーネストが知る魔物だった。

先の魔物の侵攻の折に、念の為に調べておいた魔物である。


「我、大いなる盟約に於いて、汝に乞う

 火の聖霊よ、我が声が聞こえるなら、汝が力を行使し、我が望みを果たし給え

 大いなる火よ、炎となりて敵を焼き尽くせ

 フレイムウオール」


高位の魔法なので、アーネストは詠唱をして魔法を行使する。

そうしなければ、詠唱が失敗する可能性が高くなるからだ。

呪文に合わせて魔力が城壁を伝わり、魔物の足元に集まる。

魔物の攻撃で城壁の一部が破壊され、崩れ掛けた場所も出て来た。

ドワーフが建造したという、クリサリス自慢の城壁に(ひび)が入る。

この頑丈な城壁が、崩れる様な日が来るとは思わなかった。


揺れる城壁にバランスを崩しそうになりながらも、アーネストは必死に呪文を完成させる。

振るわれた杖に沿って、城壁の周りに火の壁が出現する。

魔力は迸り、魔物の足元から火柱が立ち昇る。

その直後に、アーネストは急激な魔力の消耗でふらついた。


「ぐ、ぐうう…」


大きな魔法の行使は、アーネストでも多大な魔力を消費する。

アーネストの魔力でも、魔法の効果は30秒程度しか続かないだろう。

それでも城壁を攻撃していた魔物は火に巻かれ、その周辺の魔物も巻き込んだ。

そのまま大型の魔物は火達磨(ひだるま)になり、地面に転げ回った。


「く、はあはあ…」

「アーネスト

 大丈夫か?」


アーネストが肩で息をしているのを見て、ギルバートが心配して駆け付ける。

ふらつくアーネストを支え、ギルバートは城壁の外を見る。

今の魔法の効果で、8匹の大型の魔物が炎を上げてのたうち回る。

これで城門を攻撃していた魔物は居なくなった。

しかし公道の先には、同じ魔物が20匹ほどこちらに向かって来ていた。


「くっ

 大丈夫だ、単なる魔力切れだ

 休めば回復する」

「しかし、そんな強力な魔法が必要なのか?」

「ああ

 こいつはFランクの魔物、トロールだ

 火には弱いが、お前が思うよりもタフだ」

「Fランク

 では、オークよりも…」

「当然強いし、なかなか死なない

 おまけに力や大きさもデカい」


確かに2m程度のオークに比べれば、3mを超える様なトロールは脅威だろう。

しかもそいつ等は、まだまだこちらに向かって来る。

このままでは、ほどなく魔物は城壁に取り付くだろう。

アーネストは懸命に声を上げて、魔物に有効な手段を伝える。


「アルベルト様!

 油と火の用意をしてください

 それと、魔術師ギルドに応援を」

「分かった

 至急手配する」


アルベルトは近くに居た兵士を呼び、手早く指示を出す。

先の魔物の侵攻から、城門に近い兵舎には油の備蓄がされている。

今回もその油が、魔物の攻撃を防いでくれそうだった。

しかしいくら備蓄があっても、用意するまでに時間が掛かる。

その間も魔物が近付く音がして、その巨体が迫る地響きが伝わる。


「おい…

 どうする?」

「すまない

 次を撃つには魔力が足りない

 2、3分時間をくれ」

「分かった、3分だな」


ギルバートは叫ぶ様に返事をして、城壁の向こうへ駆け出す。

そのまま彼は、ひらりと城壁を飛び降りた。

高さ2m50㎝を超える、城壁を飛び降りたのだ。

並みの兵士ならば、それだけで足を(くじ)くだろう。


「あ!

 おい!ギルバート!」


アルベルトがそれに気付き、慌てて城壁に向かう。

しかし、アーネストがポーションを飲みながら立ちはだかる。

ここで時間を稼げそうなのは、ギルバートしか居なかった。

他の騎士や兵士が向かっても、一撃で蹴散らされるだろう。


「行かせてやってください」

「ふざけるな!

 どういうつもりだ!」

「どういうもこういうもない!

 時間が無いんです

 魔物が来るのに、間に合わないんですよ?」

「ぬう…

 だからと言って、ギルが…」

「今ここが破られたら、ギルだけでは無い

 この街そのものが無くなるんです!」

「な…」


アーネストは魔力回復ポーションを飲み干したが、効果が出るまでまだ時間が掛かる。

ふらつく足で立つと、城壁から向こう、公道の先を指差す。

そこには今も向かって来る、魔物の姿が見えている。

大型の魔物なので、ここからでもアルベルトは視認出来た。


「アレを見てください

 トロールの増援とオーガが来ます」

「そんな!」

「騎士団は、もう少しでコボルトを打ち破れるでしょう

 しかし、それからでは間に合いません」

「トロールとオーガって…

 お前が以前に言っていた…」

「ええ

 大型の魔物です

 それも複数体ですよ?」

「ぬう…

 だが、お前でもこの数では…」

「ですから、その為の油と火です

 それに…

 魔術師達が来れば、少しは立て直せるでしょう」

「むう…」

「兎に角、今はここを守らなければ」

「分かった…」


アルベルトは振り返ると、急いで城壁を下りて指揮へ戻る。

それを見ながら、アーネストは再び呪文を詠唱し始める。

アーネストの下では、ギルバートが2匹目のトロールを倒していた。


「うりゃあああ…

 ブレイザー!」

ズバババ…ズバシュ!


走り込んでから跳躍し、胸から袈裟懸けに切り裂く。

切り裂かれた胸から、腐食性の体液と共に紫色の血が飛び散る。

その血ですら、腐食性があって危険な猛毒だった。

ギルバートはマントでそれを弾きながら、手元の剣を切り返す。


一旦足元まで切り裂き、そこから切り返しながら跳躍する。

大きなV字の軌跡が描かれ、トロールの左足と腹も割かれる。

割かれた腹から、内臓と体液が飛び散り、血液で周囲の地面から白い煙が上がる。

恐らくこの白い煙も、気化した腐食性のガスであるだろう。

ギルバートは危険を感じて、速やかにその場を離れる。

いくらトロールがタフでも、肩と足を切り裂かれては立っていられないだろう。

そのまま息絶えると判断して、ギルバートは次の魔物に向かう。


「ふう…

 次だ!」


ギルバートは3匹目に向けて走り出す。

新たに手にした剣は、以前と比べて強度も格段に上がっている。

魔物の皮膚を覆った、腐食性の液を受けても溶けていなかった。

表面に少し腐食が見られるが、分厚い刃を力任せに振るっている。

だから少々の腐食では、この剣には影響が無かった。


2匹目の仲間のやられ方を見ていたので、トロールは跳躍を警戒して身構える。

ギルバートの突進に警戒して、頭上に拳を構えている。

このまま近付けば、頭上から叩き付けるつもりなのだろう。

それならば当たらなくとも、衝撃で速度を落とす事が出来る。

そう、そのまま駆け寄って来たならばだ。


ウガアアア

「甘い!

 スラーッシュ」

ザシューッ!


ギルバートは踏み込みながらスキルを発動し、そのまま滑る様に切り裂きながら抜ける。

左に構えた剣が、トロールの右足を膝から切り裂いて落とす。

再び血飛沫が飛び散り、地面から白い煙が上がっていた。

右足を失ったトロールが倒れ、低くなった頭目掛けてギルバートが飛ぶ。


「うおおおお!

 バスター!」

ザン!


大きく振りかぶった剣が、弧を描くように首に叩き付けられる。

跳躍から叩き付ける様に剣を振り下ろす、三つ目のスキルのバスターだ。

最初の1匹目も、城壁からこの技で脳天から真っ二つにされている。

流石に連続のスキル使用で、ギルバートも肩で息をする。

そこへアーネストが声を掛ける。


「ギル!

 準備が出来た!

 下がれ!」


見上げると杖を構えたアーネストの周りに、大きな火の玉が5つ浮いていた。

今までのアーネストならば、この火球(ファイヤーボール)一つでも苦労しただろう。

それをいつの間にか、一度に5個まで出せる様になっていた。


「おう!」


ギルバートは城壁に向かって、駆け出す。

その後方に仲間の仇を討とうと、10匹のトロールが迫っていた。

そのトロールに向けて、アーネストが杖を振るう。


「喰らええ!

 ファイヤーボール!」

ドゴーン!

ドゴン!

ゴガン!


アーネストの叫びに合わせて、5つの火の玉が次々と放たれる。

爆音を轟かし、着弾した火の玉が弾ける。

その弾けた火が周りの魔物も巻き込み、大きな火柱を上げる。


ドゴーン!

グガアア

ガアアア

ドゴーン!

グオオオ


魔物の表皮は、火球の直撃で黒く爛れる。

燃え移った火は、その体液に引火して激しく燃え上がる。

先の炎の壁(ファイヤーウォール)では気付かなかったが、魔物の体液は火に弱かった。

簡単に引火して、そのまま魔物の身体を焼き尽くす。

この事がトロールが、火に弱いとされる所以(ゆえん)なのだろう。


魔物の断末魔が響き、爆音が容赦なく悲鳴を掻き消す。

今回放った火球(ファイヤーボール)は、以前の初歩の火球(ファイヤーボール)とは違っていた。

初級の魔術師教本に書かれていた、一段上の戦闘用の火球(ファイヤーボール)の魔法だった。

ただ火の玉を飛ばすのでは無く、より魔力を込めて火の玉が弾ける様にしてある。

消費魔力は高くなるが、着弾の際に周囲に火を撒き散らす。

それが魔物の体液に引火して、より派手に爆発していた。


「よし…

 はあ、はあ…

 上手く、いったぞ

 はあ、はあ…」

「そうだな!

 っと」


座り込んだアーネストの隣に、ギルバートが跳躍して城壁を登って来る。

彼は器用に飛び上がると、そのまま城壁の石の隙間を蹴って、上に駆け上がって来た。


「お前…

 器用だな…」

「ふう

 疲れた…」


ギルバートも息が上がっていて、アーネストの隣に寝転がる。

さすがにギルバートでも、連続で意識を集中して、スキルを放つのは初めてだった。

それにスキルは、思った以上に体力を消耗する様だった。

これまではここまで、スキルを多用する事も無かった。

これはスキルが便利な反面、欠点もあるという事を示していた。


「お疲れさん

 助かったよ」

「そっちもな

 これで少しは警戒…」


しかしなおも、地面を揺する振動が響いた。

ギルバートが顔を上げて、戦場を見渡す。

残りの数匹のトロールは、仲間の死体を蹴飛ばして道を作り、そのまま城壁に向かって来ている。

どうやらギルバートが退いたのを見て、そのまま向かって来る気なのだろう。

いや、あるいは単純にそこまでの知能も無く、ただ闇雲に向かって来るだけなのかも知れない。


「うそ…だろ?」

「おいおい、勘弁してくれよ…」


騎士団の方を見るが、こちらはコボルトが逃げ出し、代わりにオーガが迫っていた。

しかし騎士団では、オーガを防ぎ切れないだろう。

数体は倒せても、あのままの勢いでは突破されるのも時間の問題だ。

恐らくはその際に、多くの騎士が亡くなる事になるだろう。


歩兵の方もまだ、オークと交戦している。

こちらの戦況は思わしくなく、押され気味になっている。

エドワード隊長が指揮して、何とか踏み止まっている。

しかし魔物の勢いを、押さえ切れないでいた。


「マズいな…」

「ああ」


城壁の中を見ると、アルベルトが手配した油が運ばれている。

兵士が樽に入った、油を運んでいる姿は見える。

しかし肝心の魔術師は、まだ到着していない。

到着どころか、その姿すら見当たらなかった。


「トロールは…

 油と火で何とかするしかないな

 問題は…」

「向こうのオーガか」

「ああ

 あれもどうにかしなければ…」

「何か手は無いのか?」


騎士団が号令に従い、オーガの群れに突撃を掛ける。

新たに発見されたスキルのチャージがあるが、これは長柄の武器で馬と共に突撃する技だ。

武器の先端を蒼い光が覆い、攻撃力と範囲が上がる必殺の技だ。

しかしこれでもオーガには効果が低い様で、突進中に数機が落とされていた。


「くっ

 騎士団は一度退かないと、このままでは全滅するぞ」

「しかし、騎士が退いては城門が守れないだろう

 ここは将軍を信じるしかない」

「だけどその騎士が、魔物に落とされているんだぞ?

 スキルも効いているのか…」

「くっ

 オレが出るか?」

「駄目だ

 そんな体力も無いだろう?」

「くそっ

 魔力のポーションの様な、体力を回復するポーションが有れば…」

「無理だろう

 そんな物は魔導王国の記録にも無い」

「くっ…

 このまま見てろと?」

「油を持って来ました」

「アーネスト

 持って来させたぞ」

「はい

 ありがとうございます」


そこへアルベルトが城壁に上がって来て、兵士に油を撒く準備をさせる。


「それで、アーネスト

 ここから撒けば良いのか?」

「はい

 ただどうせなら、引き付けてから撒きましょう

 魔物に掛けてから燃やした方が、効果的です」

「しかし、それでは危険ではないか?

 もし城壁が破られたら、魔物が中に雪崩れ込むぞ」

「そうなんですよね

 それで魔術師達の協力が欲しかったんですが…」

「魔術師達なら、あそこに見えるぞ」

「歩いて来てますね…」


遥か遠方、街の中心部辺りを走る姿が見える。

いや、それは既に、歩いているという程度の速度だった。

呼びに向かった兵士が、懸命に声を掛けて走らせようとしている。

しかし体力の無い魔術師では、ここまでまだ数分は掛かるだろう。


「それでは待てないんですよ…」

「困ったな

 魔物はすぐそこだぞ」

「どうします?」

「油はいつでも撒けますよ?」

「ううむ…」


もう1分も経たずに、魔物は再び城壁に攻撃を加えるだろう。

しかし、アーネストは魔力が切れている。

例えポーションを飲んでも、続けざまに飲んだらポーションの効果は落ちる。

回復させるには、時間を置くしか無かった。


かと言って、ギルバートが出るのも無理があった。

先ほどはアーネストの魔法で何とかなるという条件があったから、多少の無理が出来た。

これが数分とか無理だし、油と火で燃やすのも危険であった。

ファイヤーボールの爆発と、油で燃やすのでは威力が違うのだ。


「となれば

 結局引き付けて、油で燃やすしか無いか」

「ええ

 それが一番効果的です」

「危険だが止むを得ん

 お前達は下へ下がってなさい」

「しかし、何かあっては…」

「何かあった時、お前達が必要なんだ

 だから下で待機していなさい

 なあに、私もまだまだ戦える」


アルベルトは腰の剣に手をやり、安心させる様に笑った。

それを見せられては、二人は従うしかなかった。

胸騒ぎを覚えつつも、二人は信じるしか無い。

二人は振り返りつつ、階段を降りて行った


「さあ!

 二人に負けてはおれんぞ!

 ワシ等も活躍せねばな!」

「おう!」

「はい!

 任せてください!」

「ここで良いところ見せて

 彼女の両親に会いに行きます」

「お、おう?

 頑張れよ」

「はい」


アルベルトは士気を上げようとしたが、妙な事聞いてしまった。


ハルが確か言ってたな…

兵士が結婚とか言ってると、大抵碌な事にならないって

何て言ってたかな?

フラ…フラなんだったっけ?


アルベルトは思わず、親友である国王の言葉を思い出す。

それは帝国の兵士に追われて、手痛い打撃を受けた後の事だった。

国王のハルバートは、その時はまだ地方の領主だった。

彼は過去の文献から、その様な例を挙げて苦笑いをしていた。

その時の失敗で、多くの兵士を失ってしまった。


「アルベルト様、もう目の前です」

「あ、ああ

 構えろ」

「はい」


しかし兵士の声で、慌てて現実に引き戻される。

魔物は今も迫っており、その地響きの様な足音は、城壁に迫っている。

兵士の悲痛な声は、近付く魔物に怯えての事だった。

アルベルトは魔物が、ギリギリまで迫るまで待っていた。

その魔物が両手を挙げて、城壁にゆっくりと近付く。


「今だ!」

ゴガア…ア?

バシャーッ!


近付いた魔物に、次々と油が掛けられる。

魔物は最初、何を掛けられたのか理解していなかった。

油は危険な物では無く、魔物は再び両腕を掲げる。

そこへ兵士達が、火を着けた松明を放った。


ボッ!

グガアアアア…

ゴアアアア…


7匹の魔物に火が付き、苦悶の声を上げてのたうち回る。

互いにぶつかり合い、火は周りに飛び散って燃え上がる。

油や魔物の体液が、そのまま地面で燃え上がる。

しかし1匹の魔物が、棍棒を振り翳して向かって来た。

その魔物には、あまり火が燃え移っていなかった。


掛かった油が少なかったのか?

それとも思ったより火が弱かったか?

マズいぞ!


魔物は手にした棍棒を振り下ろすと、城壁に叩き付けた。

砕けた城壁の岩が、彼女の両親に会うと言っていた兵士に直撃する。

そのまま彼の身体は、岩の塊に潰される。

他の兵士達も、城壁の振動でバランスを崩していた。

そしてアルベルトも、衝撃に足を取られていた。


ゴガン!

グシャリ!

「うわあああ…

 あぶし」

「ああ!

 リック!」

「ぐはっ」

「うおおっ!」


奇しくもハルバート国王が言っていた、碌でもない事が起こってしまった。

彼は砕けた城壁の岩に、頭から潰されて絶命していた。

その力を失った瞳は、無言でアルベルトを見上げる。

アルベルトは思わず唖然とし、頭の砕けた兵士を見ていた。


「領主様!

 ここは危ないです

 早く逃げてください」

「あ、ああ」


兵士達が叫び、何とか領主を逃がそうとする。

アルベルトは慌てて、避難する為に階段に向かおうとした。

その間も魔物は、城壁を激しく殴り付ける。

それは熱さで怒り狂っているかの様に、城壁の壁を叩き崩した。

そして飛散する城壁の向こうに、アルベルトは魔物の怒り狂った顔を見ていた。

まだまだ続きます。

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