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聖王伝(修正中原稿)  作者: 竜人
第二章 魔物の侵攻
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第055話

執務室でギルバートとアーネストが領主と会談している時、再び使徒のベヘモットが現れた

彼は提案があると領主に持ち掛ける

果たして彼は、何を語るのか?


突如現れた女神の使徒、ベヘモット

彼は提案があると言うが、それは一体何なのか

ギルバート達は警戒をして、身構えていた


かれはニコリと笑うと、宙から紅茶を取り出して飲み始めた。


「何なんだ、お前は!」


ギルバートは突如現れた彼に警戒していた。

しかも彼は、優雅に座って紅茶を啜っていた。

その様子が、ギルバートを苛つかせていた。

ギルバートは使徒と聞いても、彼がどの様な存在なのか理解出来ていなかった。


「まあまあ

 落ち着きなさい」

「ぐぬぬぬ…」


怒りのあまり、思わず父親の口調に似てしまう。

この辺りは親子をしているんだなと、アーネストはぼんやりと考えていた。


「それと、君

 わたくしは女神様の使徒ですよ

 口に…

 気を付けろや小僧!」

ビリビリビリ!


男は急に凄み、その気迫にギルバートはたじろぐ。

男の放つ殺気に、ギルバートは膝を屈しそうになる。

アルベルトは殺気に飲まれて、冷や汗を掻いていた。

そしてアーネストも、何とか正気を保とうと意識を集中する。


「う…」

「ぐ…があ…」

「ふう、ふう…」

「さあ

 突っ立てないでお座りなさいな

 話が出来ないでしょう」

「ふん!」


男は急に殺気を収めると、そのまま正面を指して座る様に促す。

ギルバートはムスリとして、男の前に腰を掛ける。

アーネストとアルベルトも呼吸を整えると、肩を竦めて座った。


「それでは先ずは…

 魔物との戦いに勝利しまして、おめでとう」


男はパチパチと、一人で拍手をする。

それを見て、ギルバートは露骨に嫌そうな顔をした。


「勝利を祝っていただくのはよろしいですが…

 あの魔物は貴方の配下なんですよね?

 それに勝った相手を、祝うんですか?」

「ええ、そうよ

 彼等はわたくしの可愛い子供達

 ですから、本当は…

 あなた達を殺してやりたいくらい憎いですよ」


再び放たれる男の殺気に、ギルバートは思わず腰に手を伸ばす。

しかし帯剣していないので、腰には剣は無かった。

ギルバートは剣が無い事に、焦って冷や汗を掻き始める。

その様子を見て、男は殺気を収めた。


「いいのよ

 これは約束してた事だから、今回の負けには目を瞑るわ」

「…」


ギルバートは無言で男を睨んで、何とか腰から手を離す。


「それで

 提案と言うのは?」


アルベルトはこのままでは話が進みそうにないので、先を促す事にする。


「そうそう

 先ずは、そこの坊やに褒美をあげなくてはね」

「ボクにですか?」


男はニコリと微笑み、アーネストの方を向く。


「ええ

 坊やは魔術師の称号を持っているわよね」

「はい」


男は羊皮紙を取り出すと、アーネストの前に差し出した。


「これは?」

「魔力操作の方法よ

 慣れれば今より少ない魔力で、魔法を使える様になるでしょう

 まあ魔術師には基本の技術なんだけどね…」

「え!

 それは凄い」

「魔術師は、魔力が無ければただの人

 って昔の人は言ってたわ

 せいぜい頑張って、魔力を高めるのね」

「はい」


男はクスリと笑ってから、アーネストを見詰める。


「ただし

 魔術師ってのは、ただ呪文を覚えて唱えるだけじゃあダメよ

 何度も使って、熟練度を上げないとダメ

 その辺はスキルとお・な・じ」

「へ?」

「スキルって

 熟練度?」

「そう

 貴方達が身に付けたスキルや魔法、それには熟練度という概念があります。

 これは女神様が決めたのではなく、先代の勇者が決めたのよ」

「先代の勇者?」

「そう、君の前に勇者になった男の子」


男はギルバートの方へ向き、ウインクをした。


「ボクの前に勇者…

 でも、ボクは勇者ではありませんよ」

「あ!

 そうか…

 君は覇王の卵ですものね」

「え?

 覇王?」

「ええ!

 あんた、それすら話していないの?」


これには男も、さも驚いたという表情を浮かべる。

そうして男は視線を鋭くして、アルベルトを睨んだ。


「う…」

「父上?」

「領主様?」

「いい加減になさい!

 彼は目覚めてしまったのよ?

 望もうと、望まざると…」

「しかし!」

「エルリックも言っていたんでしょう?

 いずれは覇王か…」

「止めてくれ!」

「わたくしとしては、この子が目覚める前にどうにかしたかったんだけどね…

 目覚めたからにはその子には、地獄の様な試練が立ちはだかるわね

 それもこれも、貴方達二人のせいね」

「どういう事です?」

「わたくしからは…

 言えないわ」

「そんな…」

「やはり…

 何か秘密が?」

「ぐぬう…」


アルベルトは顔を歪めて、苦しそうに顔を顰める。

その額には、大粒の汗が浮かんでいた。

アーネストはそれを見て、相当大きな秘密だと確信していた。

しかしその秘密も、彼からは話せない。

そうなれば、アルベルトが話してくれるのを待つしか無かった。


「そもそも…

 貴方達が犯した罪が原因なのよ?

 今回の事も、女神様からの依頼でね

 わたしの本来の役目は…

 人間の世界の監視なのよ?」

「監視?」

「何の為に?」

「それは…

 言えないわ」

「何で?」

「また言えないのか?」

「ええ

 わたしの管轄では無いの

 ごめんなさいね」


男は申し訳無さそうに、アーネストに向かって頭を下げる。

それから再び、話を続ける。


「魔物の開放…

 子供達の解放は約束だったから…

 でもその交換条件は、貴方達の殲滅」

「え?」

「わたくしは頼まれただけなの

 ただ可能なら…君も殺してくれって言われたわ

 女神様からの直接のお願いよ?」

「女神様が…ボクを?」

「そう

 君がこの件の、原因だからね」

「え?」

「それも…

 秘密ですか?」

「…」


アーネストが横から挟むと、男は素直に頷いた。


「そうねえ

 言える事なら教えてあげたいわ

 でもね、わたくしが許されているのは断罪のみなの

 それ以上は関与出来ませんわ」

「そうですか

 なら後は…

 領主様に聞くしかありませんか…」

「ええ

 そうね」

「…」


アーネストはそう言いながら、アルベルトの方を見る。

アルベルトは顔を蒼白にして、苦しそうにしていた。

意図せず秘密が暴露されるのを、恐れている様子だった。


何を恐れている?

そんなに重要な秘密なのか?


「それで、領主様

 話していただけるんですか?」

「う、うーむ…」

「父上?」

「しかし

 しかしな…」

「どうしてなんですか?

 それすら話せないんですか?」

「ぐ、むむむ…」


領主は苦悶の声を上げたが、観念したのか約束をする事にした。

今すぐには話せないが、期間を持って話すという約束だ。

これ以上は秘密にするのは、困難だと観念したのだろう。

また黙っていれば、いずれは使徒からバラされる事になる。

それだけは彼は、防ぎたい様子だった。


「頼む

 後2年待ってくれ」

「何で2年?」

「本来ならあと2年後に…

 ギルバートには話す予定だった

 だから、だから…」

「分かりました

 では、必ずギルに話してくださいね」

「ああ

 ワシのクリサリスの名に賭けて、必ず話す」

「なら良いです」

「ふふふ

 話がまとまって良かったわ」


男は嬉しそうに笑った。

よほどこの事に、彼も心配している様子だった。

考えてみれば、それは不自然な事なのだ。

彼は女神の使徒であって、人間を断罪する役目を担っていると言うのだ。

それが罪を犯した、アルベルトを心配している様にも見える。

アーネストはそれに、疑念を感じていた。


「ところで

 肝心の用事は?」

「え?」

「え?」


ギルバートの質問に、男は気の抜けた返答をする。

アルベルトも不意を突かれて、思わず聞き返していた。

男は当初の予定を、すっかり忘れていたのだ。


「ああ、そうそう

 坊やに渡す予定だった報酬よね」

「ええ」

「忘れてた?」

「はあ…」

「そもそも、貴方が悪いのよ

 いつまでも黙っていて

 また悲劇を繰り返したいの?

 わたくしはカイザートやイチローの様な悲劇は、もうごめんよ」


男は再び思い出した様に、苛立った様子でアルベルトを睨む。

しかしアーネストは、その名前を聞いて驚いていた。

イチローは知らないが、カイザートは聞き覚えのある名前だった。

それは古代王国から、帝国を興した英雄の名である。

彼はその功績から、帝国では神として崇められている。


「そう

 貴方がいつまでも幻想を抱くのは良いけど

 後悔する事になるわよ」

「そ、それは…」

「何の事です?」

「いずれ分かるわ

 貴方の身に流れる血が、どういう意味を持つのか…」

「まさか!」

「アーネスト!」


アーネストは何かに気が付いた様子であったが、アルベルトがそれを止めた。

アルベルトが首を振ると、アーネストもそれ以上は言えなくなった。

しかしアーネストは、明らかに動揺もしていた。

先の話しから、彼は秘密の一端に気が付いてしまったのだ。

気のせいか、アーネストの顔色も悪くなっていた。


「アーネスト?」

「すまん、ギル

 オレからは言えない」

「え?」

「いずれ領主様が話すその時まで、ボクは黙っていたい…」

「アーネスト?」

「すまない…」


アーネストは本当にすまなそうに、ギルバートに頭を下げる。

その様子に驚き、ギルバートは言葉に詰まってしまう。


「あら、嫌だわ

 わたくしのせいね

 でも、許してね

 わたくしもこの件に関しては、納得してませんので…」

「はあ…」


男は芝居がかった仕草で礼をすると、話題を変えようとした。


「兎に角

 今回の件で、わたくしのお気に入りの子供達は死んでしまった

 暫くは、ここへは来ないつもりよ

 …わたくしはね」

「それは、魔物は来ないと言う事ですか?」


アーネストがすかさず、男に尋ねる。

これで魔物が現れないのなら、一先ずは安心だ。

他の国にも現れているので、そこまでは安心は出来ない。

それでも攻め込まれないのなら、少しはマシだろう。


「いえ

 先にも申し上げましたが、魔物は開放されました

 わたくしの子供達は来ませんが、他の人達の子供までは…

 知りませんわ」

「そう、ですか…」

「はあ

 結局、魔物は出て来るんだね」

「ええ

 彼等をどうすかは…

 任せるわ

 わたくしは暫くは、別件にて離れるわ」

「なるほど

 それでは好きにさせてもらいますよ」


アーネストは手をひらひらさせて、男の方を見た。


「ええ

 任せるわ

 その代わり…

 死なないでね」

「へ?」

「言ったでしょ

 わたくしは、坊や、君を気に入っているの

 だから、死なないでね」


男はニッコリ笑ってアーネストを見詰めた。

その瞳は情熱的にアーネストを見詰めている。

それに気が付き、アーネストは動揺する。


「え”…」

「だからプレゼント

 君にはわたくしの字名をあげる

 わたくしの加護と共に」


ポーン!

アーネストは称号:ベヘモットの加護を得ました


「今日からわたくしの字を名乗りなさい」

「ええ!」

「何と!

 使徒の名を授かっただと!」

「凄いよ、アーネスト」

「わたくしの加護が何なのか

 今は見れないでしょう

 いずれ力を身に付けたら、改めて見てみなさい

 わたくしの贈り物を」


領主とギルバートは興奮して喜んだ。

しかしアーネストは不思議な感覚に包まれて、何が起きたか戸惑っていた。


「今日からアーネスト・ベヘモットと名乗れる訳だ

 これは貴族になるより名誉な事だぞ」

「凄い」

「ええと

 しかし、栄誉とは言え、敵対していた者の名前を貰うのはどうかと…」

「そこはそれ

 今回の試練に打ち克った証として

 また女神様の使徒に認められて名前を授かったと、喧伝すれば問題ないだろう」

「はあ…

 そんなもんなんですか?」

「そんなもんだ」

「しかし勝手に名乗って良いのかな?」


アーネストは尚も、この字を名乗る事に抵抗を感じていた。


「それならこうしなさい

 普段は貴族姓を…

 いずれは王から授かるでしょう」

「え?

 ボクが貴族に?」

「ああ

 今回の功績は、それに有り余る物だぞ」

「ボクが…

 貴族?」

「ああ」

「ええ

 いずれは国王から、字を授かるでしょう

 わたしの字は、必要な時に使いなさい」

「はあ…」


男はまるで、アーネストが貴族になる事を確信していた様子だった。

そして自らの字を、必要な時に使えとまで言ってくれた。

それは使徒からすれば、随分と肩入れする事になる。

そこまでアーネストを、この男が気に入っているという事なのだろう。


男は席を立つと、アーネストにニコリと微笑み掛ける。

アルベルトはそんなベヘモットを見て、溜息を吐いていた。

これで男の用事は、全て終わったのだろう。

秘密を暴露されずに済んで、アルベルトは安心していた。


「それでは、わたくしの話はお仕舞い

 これで失礼するわ」

「ああ

 そうしてくれ

 二度と見たくも無いわ」

「ふふ…

 そう願いたいわ」


ベヘモットは手を振りながら、立ち去ろうと窓際に向かう。

そして寂し気な表情で、アーネストを見詰める。

その素顔は仮面で見えないが、何故かアーネストはそう感じていた。


「ありがとうございます

 でも、何でです?

 まるでこれが…

 最期みたいですよね」

「む?

 そういえば…

 まさか?」


アルベルトも気が付き、目を細めた。


「え…

 やだなあ」

「使命を失敗したにしては、確かに緩いな

 何を言われた」

「えー…と」


ここで男は、明らかに動揺していた。

言い淀んで、言葉に窮していた。


「相手は強力な力を持っている

 そうだな」

「はあ…

 そうよ

 今回の件で目覚めた者が他にも居るの

 女神様からはそこの坊やか、そいつを殺す様に命じられたわ

 だからそいつを殺しに行くだけよ」

「勝てるのか?」

「何よ

 愚問ね

 わたしは運命の糸(フェイト・スピナー)であると同時に、魔王なのよ?」

「しかしギルバートと同様となると…」

「それに貴方もさっき言ってたでしょ?

 二度と顔も見たく無いって

 敵だったのよ?

 何で心配するのよ?」

「それも…そうじゃが…」


アルベルトは探りを入れてみたものの、確かに敵だった者を心配するのはおかしな話だ。

それでも、嬉しかったのかベヘモットは笑顔になっていた。

今度は誤魔化す為ではなく、心から微笑んでいた。


「でも、心配してくれてありがとう

 そこが人間の良いところなのかもね」

「む?」

「それでは行くわね

 さようなら」

「ああ

 お前も…

 死ぬなよ」

「ありがとうございました

 名前に恥じない様に頑張ります」

「さようなら

 お気を付けて」


アーネストとギルバートも、名残惜しそうに別れを告げた。

それを聞いて、ベヘモットは心から喜んでいた。

そうして彼は音も無く消え去り、その後には静寂が訪れた。


「騒がしかったな」

「ええ」

「それで

 アーネストの報酬なんだが…」

「この名前だけで十分ですよ」

「うーむ

 しかし、それでは収まらんだろうよ

 その内に国王から、叙爵のお話があると思う

 それまでは名誉騎士号として登録しておく」

「はい

 それでお願いします」


アルベルトは立ち上がると、呼び鈴を手にする。


「それと、勲章ぐらいは受け取ってくれ

 息子を救ってくれた礼だ」

「はあ」


アルベルトは執事を呼び、勲一等の勲章を差し出した。


「今までは領主権限で不問にしていたが、これで晴れてここに出入りするのは自由になる

 これからもギルバートの事を…頼む」

「はい

 言われ無くとも」

「ふふ…」

「ははは」


ギルバートは苦笑いを浮かべ、アルベルトは嬉しそうにしていた。

そうして二人の息子の様な存在を、抱き締めて笑っていた。


「さて

 領主としての面倒臭い仕事は終わったぞ

 一緒に娘達の所へ行くぞ」

「え?

 良いんですか?」

「ああ

 たまには休まんとな

 娘に嫌われてしまう」

「ははは…」

「アーネストも来るんだぞ」

「はあ

 領主命令ですか?」

「そうだ」


一瞬アルベルトは、お前も息子だと言いたかった。

しかし照れ臭くて、それ以上は続けなかった。


それから、領主は久しぶりに仕事もしないで、家族サービスに精を出した。

これは魔物の侵攻を無事に止めれた記念だと言って、街のほとんどの仕事が休みとなった。

そして夕食の後は、ギルバートとアーネストは初めて酒を飲まされた。

祝いと言って執事にも止められたが、アルベルトが無理矢理飲ませる。

まるで嫌な事を忘れたいかの様に、アルベルトははしゃいで飲んでいた。


「ちょ!

 アルベルト様」

「今日は無礼講じゃ

 お前も飲め!」

「だけどボクは…」

「さあ

 ギルバート

 お前も飲むんだ」

「いや

 だって酒は良く無いって…」

「わははは

 それは嫌な事を忘れようと、無理して飲む酒じゃ

 こうして生きている事を喜ぶ酒は、気分が良い物じゃぞ

 わはははは」

「あなた!

 もう止しなさいって」

「わはははは」

「お父しゃま臭しゃい」

「むう…

 変な臭い」

「わはははは」


アルベルトは上機嫌で、酒を飲んでいた。

それに巻き込まれて、ギルバート達も飲まされる。

そうして身体が火照って、二人は涼みに庭に出ていた。

食堂では、アルベルトの上機嫌な笑い声がしている。

二人の妹は既に眠っており、母親が晩酌の相手をしていた。


「なあ、ギル」

「ん?」

「親父さんの事、許してやれ」

「え?」

「あれは息子と飲みたかったんだ

 ボクはその為のダシだよ」

「そうか…」

「ああ」


ギルバートは父の事と、友が残した言葉を思い出す。

酒は良く無いが、こうした時には良いのかも知れない。

しかし何故か、父親が寂しさから飲んでいる様に感じていた。


「父上…

 寂しかったのかな?」

「そりゃそうだろ

 お前が急に強くなるし、言う事聞かないし…

 死ぬかもって必死だったし…」

「はははは

 そりゃあ大変だ」

「ああ

 大変だ…」


ギルバートは酒のせいか、気分が良かった。

だから自然と、声を大きくして笑っていた。

アーネストは顔を顰めて、そんな友を恨めしそうに睨む。

まだ酒に慣れていなくて、少し頭が鈍く痛んでいた。


「アーネスト

 すまなかったな」

「ん?」

「お前にはいつも迷惑掛けてる」

「止せよ、今さら」

「それでも、さ

 いつも助かる」

「はははは」


そんなアーネストを見て、今度は心配そうに覗き込む。

そんな友人の姿に、アーネストが笑いだした。

そして一頻り笑うと、アーネストは真剣な表情になる。


「ギル…

 いつまでも友達だからな」

「なんだよ?

 急に?」

「いいんだ

 何があっても、オレはお前の友達だからな」

「なんなんだ?」

「あー…

 忘れろ

 はははは」

「ぷっ

 はははは」


アーネストが笑い出し、釣られてギルバートも笑い出した。

そして、夜更けまで二人は語り明かした。

ダーナの街は戦勝祝いで、夜明けまでお祭り騒ぎをしていた。

まだまだ続きます。

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