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聖王伝(修正中原稿)  作者: 竜人
第二章 魔物の侵攻
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第050話

遂に魔物が姿を現す

ダーナの街へ向かうその軍勢は、整然と規則正しく並んで異様であった

魔物はゆっくりと行軍し、正午を前に街の前へと到着するのであった


ダーナの街の東門は、魔物の侵攻に合わせて慌ただしくなっていた

領主の話に出ていた女神様の使徒が現れ、魔物の侵攻が真実味を帯びたのもある

またその邂逅で起きた出来事が、混乱に拍車を掛けた

兵士の一部が、魔物を前にして殺意に飲まれてしまう

そんな危険性が、ギルバートによって暴かれたのだ


将軍は大声で指示を出し、兵士が慌ただしく動き回る。

戦える兵士が、思ったよりも少なくなってしまった。

スキルを身に付けた者が、殺意に飲まれる可能性がある。

そうなれば、彼等を前線に立たせる訳にはいかなかった。


「急げ!

 魔物は既にこちらに向かって来ているらしい

 体調の悪い物はすぐに申請して下がれ」


或る程度の力量の者が魔物と対峙した際、激しい憎しみの感情に支配されるらしい。

ギルバートも激しく感情を揺らされたが、他にも暴れ出しそうになっていた者がいた。

中にはギルバート同様に、それを克服している者も居る。

しかし不安を感じて、下がる者も少なく無かった。


「暴れ出していなかったのは幸いでしたね」

「ああ」

「しかし、いつ発症するか分からないのは危険ですね」

「ああ

 お前達は大丈夫か?」

「ええ

 オレは大丈夫ですが…」

「アレン?

 お前は?」

「以前はロンメル隊長の事もありましたが…

 今はそこまでは」

「そうか…」

「ニーナさんが居るもんな」

「おい!

 馬鹿!」

「え?

 何?」

「おい!

 まさか?」

「ははは…

 聞かなかった事にしてください」


どうやらニーナが選んだのは、アレンだった様だ。

そしてアランは、この戦いの後に結婚の約束をしていた。

しかしヘンディーの話を聞いて、それを黙っていようと思っていた。

喋らなけらば、死ぬ事も無い…筈だろう?

そう考えて、アレンは結婚の話を黙っていた。

ヘンディーはそれを聞いて、複雑な表情を浮かべる。


あれって確か…

言った奴が死ぬってジンクスだよな?

聞いた奴まで、死ぬって事は無いよな?


ダナンも聞いてしまって、顔を顰めている。

彼も将軍と同じで、聞いた事を後悔していた。

アレンだけが、大丈夫だと自分を納得させようとしていた。

具体的に話していないから、そんな事にはならないと、自分に言い聞かせていた。


部隊長達は拘束されたり、支えられて退場する兵士を見ていた。

騎兵団にはほとんど居なかったが、歩兵に多く見られた。


「騎兵で数名、歩兵では20名以上居ますね」

「このままでは、歩兵の数が足りなくなるな」

「オレ達も気を付けないとな」

「エリックは特に注意しろよ

 お前はすぐに飛び出すから、発症してるか分からないだろ」

「何でオレだけ?」

「お前が一番怪しいんだ」

「そんな…」


エリックはショックを受けた表情で、救いを求めて将軍を見る。

将軍もどちらかと言えば、前に出て戦う性格である。

彼は仲間を求めて、将軍の顔を覗き見る。


「将軍

 将軍は大丈夫なんですか?」

「オレは…

 血に酔っていたと思っていたが、今考えるとアレがそうなのかな?」

「え?」

「や、止めてくださいよ」

「そうですよ

 冗談にしては、しゃれにならんですよ」

「そ、そうか?」

「そうですよ」

「だ、大丈夫だ

 自分の感情ぐらいコントロール出来る

 む、むしろお前らの方が心配だ」


え?

あんたが言うのか?


部隊長達は、無言でそう思っていた。


「オレは大丈夫でしたね

 ロン隊長の事があって、一時期は怒りに任せる事もありましたが…

 今は抑えられています」

「そうか」

「良いよな」

「はあ…

 オレも相手が居れば…」

「ば!

 今はそれに触れるな」

「へ?

 何で?」

「良いから

 ダナンは?」


ダナンとハウエルも続ける。

そして一番無縁そうな、ダナンにまで話が振られる。


「オレは…

 そこまでは感じていないな」

「ダナンは常に冷静だからな

 オレは突撃の時は逸るが、切り倒した後は何も感じていないな」

「うむ

 大丈夫そうで良かった」


ダナンは北門から合流した部下達を見て、ふと疑問に思った。


「将軍

 症状の出た者は、元々感情的な者か兵役に慣れていない者が多くないですか?」

「ん?」


再び歩兵が一人、大声を上げ始めて取り押さえられていた。

その男は元農民で、開拓から引き揚げて兵役に加わっていた。

集落が襲われた事もあるだろうが、元々農民で兵役には慣れていなかった。

それが魔物討伐に熱心に参加して、スキルも2つまで身に付けていた。

今も何も無かったその兵士が、突然発症していた。

それも戦を前にして、緊張感が高まるこの時にだ。


「元々戦闘に慣れていない者が、急に技量を身に付けたからか?」

「ええ

 その可能性はありますね」

「あの兵士は熱心に訓練もしていました

 しかし魔物とはいえ、殺す事に慣れていないのでは?」

「そういう心のストレスが、発症の原因になっているのか?」

「あくまで、可能性ですが…」


将軍は黙り込んで考え込んでしまった。

兵士の補充の為に、元農民や商家の息子等も多く入れている。

もしも本当にそれが原因なら、歩兵の運用は注意しなければならない。

将軍はどうせ歩兵は補助に回すと考えていたので、正面を騎兵で固める事にした。


「各部隊長に命ずる

 敵が攻めて来たら、先ずは弓や投石で応じる」

「はい」

「しかる後、騎兵にて突撃して、敵を中央から切り崩す

 抜けたら両翼から引き返す様に」

「はい」

「弓兵の責任は重大だ

 最初の攻撃もだが、騎兵が帰還する道を作る必要がある

 諸君らの腕を宛てにしているぞ」

「はい」


一通りの指示を出し、責任者のエドワード隊長を呼ぶ。


「エドワード隊長」

「はい」

「歩兵は例の症状が気になる

 なるべく出したくないが、騎兵の帰還の際には大丈夫そうな者で支えてくれ」

「畏まりました

 症状の心配が無さそうな者を選んで配置しておきます」

「ああ

 頼んだぞ」


隊長は兵士の中から、長く兵役に努めている者や、冒険者など戦闘に慣れた者を選別する。

将軍はそれを見て、流石は熟練の隊長だと感心していた。

説明を受けずとも事の経緯を把握して、危険そうな人物は外していた。

そんな卒なく仕事をこなすところが、彼が将軍に選ばれた理由なのだろう。

怪我をしていなければ、今でも将軍の任に着いていた筈だ。

それこそヘンディーでは無く、彼が将軍になっていただろう。


門の前に騎兵部隊が揃えられる。

4部隊48名が部隊長に率いられ、出撃の時を待つ。

狂気に侵された者は、後方の支援に回されていた。

当然アレックス達少年兵も、後方の部隊に回されていた。

それで戦力が、大幅に減らされる事になる。

部隊長達は、内心開戦前から不安に襲われていた。

折角訓練した兵士達を、半数近く使えない状態だったからだ。


その後ろには、選抜された歩兵が120名集まる。

彼等は狂気に、侵されていないベテランの兵士達であった。

エドワード隊長が率いて、騎兵部隊の穴を埋める事になる。

残りは狂気の不安がある為に、城壁からの投石や資材の準備に回された。


そして弓兵が60名城壁に上がり、残りの60名が交代要員として下に控える。

使徒は東の門に来ると言っていたので、他の城壁からも移動して来る。

そうして集められるだけの兵士が、東門の前に集められた。

勿論この期に及んでも、狂気を発症する者は少なく無かった。

そうした者達は、後方の支援に回される事になった。

彼等が前線に出れば、大きな混乱を生む事になるからだ。


すっかり準備が整い、領主が城壁の上からノルドの森の方を見守った。

傍らには将軍が控え、ギルバートもその側に待機していた。

アルベルトは森を睨み、魔物の姿が見えないか探していた。


「準備は整いました

 後は魔物の侵攻を待つのみです」

「そうか

 頼んだぞ」

「はい」


将軍の言葉に、領主は頷いて答える。

ギルバートも森を望み、魔物の陰を探してみる。


「本当に来るんでしょうか?」

「来るだろうな」

「ええ

 でしょうな」


女神の使徒を名乗る者が、あれだけの大立ち回りをしたのだ。

それで嘘でしたなんて事は、先ずあり得ないだろう。

少なくとも、魔物が向かって来るのは確かだ。


「今回のは、大発生(スタンピード)ではないんですよね?」

「そうだ

 自然発生ではなく、使徒が集めた精鋭が来る筈だ

 今までの魔物の様にはいかないぞ」

「そうですね

 装備や練度も上がり、魔物には対抗出来る様になりましたが…

 それも雑魚に対してです

 精鋭となれば、先の第2砦に居た様な魔物が襲い掛かって来るでしょう

 坊ちゃんは前に出ないで、ここから見ているだけにしてください」

「え?」

「当たり前だ!」

「そうですよ

 前に出て、何かあったらどうするんです」

「そんなあ…」

「よいな

 ここで大人しくしておれ」

「絶対出ないでくださいよ」

「うう…

 分かりました」


ギルバートは二人に念を押されて、頷くしかなかった。

本当は城門を飛び降りてでも、魔物に立ち向かいたかった。

しかしそれも、将軍が見張っているのでは無理だろう。

飛び降りる前に、あの大きな腕に捕まってしまう。

将軍は再び森へ目をやり、魔物の様子を探る。

しかし魔物は、未だに姿を現していない。


時刻は正午前であった。

数匹のコボルトが、森の中から飛び出して来た。

釣られて数名の弓兵が、矢を番えて放つ。

矢は命中し、4匹のコボルトがその場に倒れた。


「あれは違うな…」

「恐らく、野良の魔物でしょう

 昨日も少し狩りましたが、まだ森に残って居た様ですね」

「何で出て来たんでしょう?」

「恐らく…

 ほら、見えてきました!」

ザッザッザッ!


規則正しい押し音を響かせ、皮鎧と小剣に身を固めたゴブリンの一団が姿を現す。

その数はおよそ1000に及ぶであろう。

先のコボルトは、それに追われる様に逃げ出したのだろう。


「凄い数だな…」

「そして、しっかり身を固めている」

「あ!

 その後ろも来ますよ」


ゴブリンが100匹ずつ規則正しく動き、左右に広がる。

その真ん中に、同じ様に皮鎧と長剣に身を固めたコボルトが姿を現せる。


「コボルトまで…

 約800ってところでしょうか?」

「そうだな

 ゴブリン程ではないが、こちらもかなりの数だな」

「うーむ

 こうなると、弓だけでは削れそうにありませんね」

「どうにかなりそうか?」

「分かりません

 分かりませんが…

 やるしか無いでしょう?」

「ううむ…」


将軍が弓兵の方を見ると、弓兵の一人が弓を掲げて応える。


「なあに

 要は鎧を避ければ良いんです」

「やってやりますよ

 はい」

「任せてください」

「ふっ

 頼もしいな」

「ええ」


弓兵は器用に、手にした弓で頭を叩いてみせる。

それから矢を手にして、いつでも番える様に構える。


「しかし、盾を装備している様だが?

 イケるのか?」

「そうですねえ…

 防がれる可能性はあります

 訓練の練度次第ですが…」


見ると全てでは無いが、前衛の魔物は小型の円形盾を腕に填めている。

恐らく矢の雨を、あれで防ぐつもりなのだろう。

しかしあのサイズでは、急所を守るぐらいにしか使えない。

本気であの盾で、矢を防ぐつもりなのだろうか?


「あれは弓兵対策なんですか?」

「うむ

 その様じゃな」

「本気なんですか?」


ギルバートはどうした物かと、弓兵達の方を見やる。

しかし弓兵は臆した様子も無く、矢の状態を確認し始めた。

弦の状態を確認して、準備万端だとアピールしている。


「なあに

 いざとなれば、狙う場所は幾らでもありますよ」

「それこそ胴や脚も狙えます

 任せてください」


そう言って弓兵は、弓の弦を張って確認する。

状態を確認して、いつでもイケると矢を番える態勢を取る。


「うむ

 流石は狩に鳴らしたハンター達だな

 任せたぞ」

「はい」


歩兵も空いた場所に出て来て、投石の準備をする。

城壁の上には、比較的症状の軽い者が集まっている。

その中には、アレックスやディーンの姿は無かった。

彼等は症状が重いのか、後方の部隊に入っているのだろう。


「石以外に有効な手段は無いですかね?」


ギルバートは素朴な疑問を投げ掛けた。


「石以外?」

「それは何だ?」

「…例えば

 皮鎧だし、油や燃えた石炭とか投げれれば…

 って無理ですよね」

「うーん

 流石に燃えてる物は…なあ」

「油ですか?

 どやって投げます?

 まさか鍋に入れて投げる訳には…」

「ですよね…」


ギルバートはそう言ったが、どうにか出来ないものかと考え始めた。

こういう悪知恵は、アーネストの方が優秀だろう。

改めて友の姿を求めて、ギルバートは陣の中を見回す。


少し離れた場所に、天幕を張って魔術師達が控えている。

魔術師は基本頭でっかちな者が多く、身体が弱いので天幕の中で休んでいた。

出番が来るまでは、寒いのでその中で暖を取っている。

その中に、入り口近くで状況を確認する、アーネストの姿が見えた。


「居た!」

「ん?」

「父上

 ちょっと行って来ます」

「おい!

 戦場には出るなと…」

「大丈夫です

 向こうで相談して来ます」


ギルバートは器用に小走りで抜け、城壁から降りて天幕に向けて走った。


「あ!

 おい!

 まったく…」

「ははは

 まあ、良いじゃないですか

 どうやらアーネストの所へ向かった様ですし」

「うーむ」


二人がそんな事を話している間にも、コボルトが前へ出て武器を構える。

どうやらこのまま、城門に向けて突っ込むつもりらしい。

コボルトの後ろには、いつの間にかオークが姿を現している。

こちらも皮鎧をしているが、よく見ると梯子やハンマーを抱えている。


「おい…

 アレはマズいんじゃないか?」

「え?

 ああ…

 確かにマズいですね」


工兵に城壁に、取り付かれるのはマズい。

だから守備する側は、全力でそれを防ごうとする。

だから工兵は、死ぬ覚悟で向かって来る。

敵もその辺は考えている様で、頑丈なオークに工兵をさせるつもりなのだ。


ただオークは、コボルトやゴブリンに比べて動きは鈍重だ。

城壁に来るまでに射殺せれば、まだ何とかなるだろう。

コボルトが前に出るのは、その矢を防ぐつもりなのだろう。

彼等を盾にして、少しでも城壁に近付くつもりなのだ。


「どうだ?

 やれそうか?」

「厳しいですねえ…

 的はデカいんですが、奴らはタフですからねえ」

「頭に2、3本刺さっても死なないんじゃないですか?」

「それに、他の奴らが守るでしょうね…」

「そうだよな…」


将軍は溜息を吐いた。

恐らく、コボルトが護衛に着くだろう。

その為の、小楯の装備なのだ。

最悪、コボルトが梯子を掛けても良いんだから、そこは油断が出来ない。


「先にコボルトだろうな

 ゴブリンは厳しいが、歩兵に任せるか?」

「騎兵でオークは無理なのか?」

「正直、下手にぶつけると、後で騎兵の数が足りなくなりますよ」

「うーむ」


領主が悩んでいる間も、続々と魔物が出て来る。

工兵として用意されたオークは300ぐらいだろうが、そのタフさがネックになりそうだ。

そして、オークが抱えた神輿が出て来る。

その上には玉座が据えて有り、そこに人影が見えた。

先に姿を見せた女神の使徒、ベヘモットがそこに座っていた。


「さあ、準備はよろしいですか?」


ベヘモットは魔法でも使っているのだろう、よく通る声が響き渡る。

その声に驚き、兵士達は森の向こうを見始める。

領主はその声の主に、喧嘩腰で怒鳴っていた。


「なんで貴様がそこに居る!」

「あは♪

 大丈夫ですよ、わたくしは約束通り参加しません」

「だ・か・ら!

 何でそこに居るんだ」

「へ?」

「うぬぬぬ」

「そりゃあ…

 特等席で見学する為ですよ?

 当たり前でしょう?」

「ぐぬぬぬ

 ふざけやがって!」

ガン!

ガランガラン!


ベヘモットのふざけた態度に、領主は顔を真っ赤にして切れ散らかす。


「ふざけるな!」

「いえ

 いたって真面目ですよ

 貴方達の苦悶を浮かべた最期を見る為に、わざわざこうして来ているんですから

 うふふふ♪」

「ぬがー!」

「まあまあ

 領主様…

 アルベルト様、抑えてください

 怒れば奴の思う壺ですよ」

「はあ、はあ

 しかし…」

「ここは堪えてください

 冷静に、冷静に…ね?」

「ぐぬぬぬ…」

「それでは、行きますね」


ベヘモットが片手を挙げて、ゴブリンとコボルトが身構える。

城壁では弓兵が矢を番え、兵士が石を掲げる。

双方指揮官の合図を、今か今かと待っていた。

そして先ずは、ベヘモットがその腕を振り下ろす。

気だるげな声が、戦場に響き渡った。


「とつげき~!」

グギャアアア

ギャギャア

グホオオ

ウガアア

ドドドド!

ドカドカドカ!


様々な魔物の怒号が入り混じり、大地を揺らす地鳴りの様な足音が響く。

折しも時刻は正午になり、時を告げる鐘が鳴り響く。


カン!

カランカラン!

「者共!

 撃て―!」

「よく狙って撃て!」

「おう!」


将軍の号令に合わせて、次々と矢が放たれる。

それは魔物の頭上に、雨の様に降り注いだ。

それに合わせて投石も始まり、先頭を駆ける魔物の頭を目掛けて投げられる。

矢の大半は盾に防がれたり、鎧に当たったりはしたが、数匹の魔物が頭に受けて倒れる。

それを踏みつけながら、後続の魔物が走り抜ける。


投石は上手く避けないと、腕や脚に受けて動きが鈍る。

中には頭部に直撃した魔物もいて、頭蓋を砕かれて脳漿をまき散らしていた。

しかし魔物の侵攻は、依然として続いていた。

仲間の死体を踏み付けても、その侵攻は収まらなかった。

その様子を、楽しそうにベヘモットは見ていた。


「ほおう…

 やりますねえ」


ベヘモットは艶然と微笑み、戦場を眺めた。

先の話では、子供達である魔物が、人間を滅ぼす事が目的だと言っていた。

しかし彼は、その魔物が死ぬ事すら楽しそうに見ていた。

まるで他に、何か目的があるかの様に…。


「戦場に満ちる狂気が、更なる狂気を引き寄せる

 さあ、貴方はどうします?

 小さな覇王様

 クックックックッ…」


狂気を帯びた笑いを浮かべて、ベヘモットは戦場を見渡していた。

その眼は笑顔に反して、狂気に満ちていた。

紫色の瞳は、濁って紅く輝いていた。


戦場は少しずつ動き出し、やがてオークが前方に進み出て来る。

コボルトを盾に、彼等は少しずつだが前進して来る。

それが城門に辿り着けば、戦況は一気にひっくり返ってしまう。

将軍は決断を下すべきかどうか、悩んでいた。

まだまだ続きます。

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