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聖王伝(修正中原稿)  作者: 竜人
第二章 魔物の侵攻
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第040話

女神の使徒

それは女神の代行者にして、物語に現れる伝説の存在

しかし彼は若く、とてもじゃないがそんな存在には見えなかった

彼の語る事が真実であるなら、少なく見ても数百年を生きている事になるからだ


イーセリアはベットから飛び降りると、ギルバートに抱き付いた

そしてギルバートとアーネストに交互に撫でられると、ご満悦で微笑んでいた

ギルバートは妹の為に花壇に向かい、花を幾つか摘んで来る

それをメイドに用意させた花瓶に生けて、机の上に置いた


「あのエルリックって男をどう思う?」

「うーん

 正直、よく分からない」


二人はセリアの傍らに椅子を引っ張って来て、腰掛けて話していた。

セリアは羊皮紙に、木炭で絵を熱心に描いている。

時々二人の方へ振り返っては、頭を撫でられたり、絵を褒められたりして喜んでいた。

少しは話せる様になってきているが、二人の会話の内容は理解出来ないだろうと思っていた。

それで二人は、セリアの事を気にせずに会話を続ける。


「女神様の使徒って言ってたよね

 使徒って何だろう?」

「お前なあ…

 知らずに話していたのか?」

「うーん…

 知らないって言うか、よく分からないって感じかな?」

「はあ…

 使徒ってのは使いって意味だ」

「つまり女神様の使い?」

「言葉通りならな」

「え?」

「他には、従者や徒弟も使いって呼ばれる事があるだろ?」

「だったら、女神様の為に働く人って事で良いのかな?」

「ああ

 大体その認識で合っていると思うよ」

「そうか…」


アーネストは椅子を揺らしながら、話を続ける。


「正確には、女神様の教えを伝えたり、教会を維持するのが司教や教皇だな

 使徒は女神様の代わりに、何かを行う代行者って感じだ」

「なるほど」

「なるほどって…

 本当に分かってるか?」

「えっと…」

「砂塵の悪魔って知ってるか?」

「さっきエルリックに言っていた?」

「ああ」

「知らないよ…」

「そうか

 今度貸してやるよ

 南の帝国領があるだろ

 あそこに在った国の物語さ」

「あんな所に国が在ったのか?」

「ああ

 アッサラームって砂漠の王国さ

 帝国に対抗していた国の一つさ」

「へえ…」


帝国が樹立される前に、帝国の勢力と戦う国があった。

その国の名前が、アッサラームという王国だった。


「詳しい内容は本を読んでくれ

 砂塵の悪魔とは、アッサラームの王国に現れる悪魔の事さ

 国王に王国の滅亡と言う、不吉な予言をするんだ」

「へえ

 予言とか、まるで女神様みたいだな」

「ああ!

 そう考えるとそうなのか

 女神様に言われて、神託を下したのか…」

「神託?」

「ああ

 女神様がボク達人間に、お言葉を下さる事さ」

「そう考えると、あの人の話も頷けるね」

「でも、悪魔はその後にも現れて…

 滅亡に抗おうとする国王を嘲笑う様に、次々と邪魔をするんだ」

「ふうん

 それが脚色されたって話なのかな」

「うーん

 どうだろう?」


物語の中では、アッサラームを様々な災害が襲い掛かる。

それも悪魔が、王国を滅ぼす為に行ったとされる。

7日7晩を掛けて、王国に次々と災厄が訪れる。

最後に王国は、砂に埋もれて消え去ったとされている。


「あれは寓話として書かれているから

 栄華を誇り、他種族を奴隷にしたりしていたから…

 その報いだって内容だな

 悪魔の忠告も最初は馬鹿にして無視してたし…」

「その悪魔は何て言ってたの?」

「作中のセリフでは

 『ボクでも女神様の御言葉は聞くんだよ、君達はどうして聞こうとしないのかい?』

 って呆れながら言うんだ

 そんな愚かな行いを続けていては、やがて国は亡びるよって」

「うーん

 それで結局、王国は滅んでしまったの?」

「物語は最後に、悪魔の放った蠍やトカゲの魔物に滅ぼされたって

 実際には帝国の台頭が絡んでいるってのが通説だけどね」

「滅んだのは帝国に敗けたって事?」

「ああ

 丁度帝国が大きくなっていた頃だから

 恐らく、帝国に攻められ、国力が落ちたところで奴隷が反抗して滅びた…

 そういう話だね」

「そうか

 奴隷も居たんだよね

 その奴隷達はどうなったんだい?」

「帝国の捕虜になって、再び奴隷になったか

 或いは餓死したのか

 無事に逃げおおせて他国へ渡ったか

 いずれにせよ、あの国の跡は廃墟となり、やがて砂漠に飲まれていったんだ」

「恐ろしいな

 それで今では廃墟と砂漠しか無いのか」

「正に、愚かな国の最期を現した廃墟だよ

 今では一面の砂だけらしいよ」

「何もかも無くなったのか…」

「ああ」


現実に愚かな国政で破滅し、滅びた国が在る。

砂漠と廃墟が生み出した物語ではなく、教訓となる物語であった。

全てが砂に埋もれた事で、それは物語だと思う者も多い。

しかしそこには、確かに王国が存在していたのだ。


「エルリックさんが本物の女神様の使徒なら

 何しに来たと思う?」

「そりゃあ話通りなら、ボク等を助けに来た?」

「うん

 本を渡してくれて、様子も見に来てくれた」

「それも、分からない事にも答えてくれた」

「うん

 これはもう、本物の使徒って事で良いんじゃない?」

「確かに、今までの事を見ればね

 しかし本当に、女神様に命じられたのか?」

「どうして?」

「だって、あいつが言っていただけで、女神様が仰ったかどうかは判らないだろう?」

「うーん

 確かにそうだけど…」


アーネストはギルバートと違って、彼を信用していなかった。

それは彼が、何かを隠していると確信していたからだ。


「それで疑っていたら、キリがないんじゃないか?」

「そうなんだよな

 今は信じて、この本を翻訳するしかないか…」

「だろう?」


二人は結局、同じ結論に至って、今は受け入れるしかないと思った。

例え彼が本物の悪魔だとしても、確認が取れない以上は信じるしか無いのだ。


「父上には、話した方が良いのかな?」

「今は止せ

 話をすべきと思ったら、ボクも一緒に行くから

 不確定な要素が多い以上、確信が持てるまでは黙っておこう」

「分かった

 その時は頼むよ」

「ああ」


二人が話し終わった頃に、メイドが昼食に呼びに来た。

ギルバートがセリアを抱いて、食堂に連れて行く。

アーネストも呼ばれたので、三人で一緒に昼食を頂いた。

昼食の後は、再びセリアを連れて客室へ向かった。

そこでアーネストは、ふと気になって聞いてみた。


「そういえば、この子の部屋はいつまでここなんだ?」

「ああ

 向こうに改装している部屋があるよ

 もう少しで完成だ」

「思ったより掛かっているな?

 普通は改装なんて数日だろう?」

「父上も母上も拘ってね

 フィオーナの部屋の隣に、同じデザインの部屋を作っているんだ

 二人が喧嘩をしない様にって」

「何でだ?」

「小さい子供があんまり違う服とか部屋を与えられると、喧嘩をするんだって」

「へえ」

「確かに、近所の商店の双子も喧嘩してたな」

「そうだな」

「ボクはセリアには、薄い蒼が似合うと思うんだ」

「ふむふむ」

「でも、父上はピンクで母上は緑

 それぞれが違う意見を出すから、建築ギルドの人も怒ってしまってさ」

「あちゃあ…

 そりゃそうなるな」


アーネストはその光景を想像して、頭を抱える。

商工ギルドの職人は、頑固な者が多かった。

建築ギルドの親方も、例に漏れず頑固なのだ。

(へそ)を曲げたら、いくら領主でも言う事を聞かないだろう。


「それで最終的には、セリアとフィーナに選ばせようって」

「それで、決まったのか?」

「ああ

 それがつい3日前」

「そうか…」


随分暢気な話だが、貴族って大体そういう気質だから仕方が無い。

それに客室も普段は使っていなかったので、問題は無かった。


「薄い梔子(くちなし)色の髪に、浅葱(あさぎ)色の瞳

 薄い空色が似合うと思ったんだけどな…

 結局、薄い若葉色になってしまった」

「フィオーナも同じ部屋の色なのかい?」

「ああ

 不思議な事にね」

「そうか

 仲良くなりそうだな」

「ああ」


客室の壁は、白を基調にしている。

一方でバルコニーから見える空をバックにしたら、確かにセリアに似合いそうだった。

ギルバートはセリアを抱っこして、優しく髪を撫でてやる。

アーネストは暫く、そんな二人を眺めていた。

満腹で眠くなったのか、セリアはやがてすやすやと眠ってしまった。


「静かに、静かに…

 起こさない様にそっと」

「お、おう…」


二人はセリアをベットに寝かせると、そっと部屋を出た。

ギルバートはメイドを呼ぶと、時々様子を見る様に頼んで庭に向かう。


「ボクはこれから、剣術の練習をする

 アーネストはどうする?」

「ボクは部屋に戻って、本を調べるよ」

「そうか」

「それじゃあな」


二人はそこで別れて、それぞれのやるべき事をする為に向かった。


領主の邸宅を出て、家に帰ると真っ直ぐに自室に向かう。

メイドには領主のメイドから連絡が有ったのだろう、昼食は特に聞かれなかった。

聞かれなかったというか、避けられてる?

普段なら挨拶ぐらいして来るメイドまで、今日は近付いて来なかった。


「ただいま」

ササッ

ササッ


何故か顔を合わせない様に、足早に去って行く。


「?」


アーネストが立ち止まると、そそくさと避ける様に通り過ぎる。


どうしたんだ?

いちもだったら、アーちゃんって近寄って来るのに…

まさか!

アレが見付かった?


アーネストは平静を装いつつも、内心ビクビクしながら部屋へ向かった。

部屋に入ってドアを閉めると、慌ててベットの下を(あらた)める。


ヤバイヤバイヤバイ!

本は?


ベットの下を覗くと、本はそこにそのまま在った。

彼が昨晩寝る前に、置いた場所にそのまま置いてある。


よかった…

それなら、何故みんなは避けてる?

何があったんだ?


アーネストは気付いていなかったが、数人のメイドがドアの前で声を潜めて様子を伺っていた。

ドアを開けるとさすがにバレるので、ドアに耳を当てて聞き耳を立てている。

アーネストは理由が分からないので、考えても仕方が無いと書物の翻訳を再開した。

ドアにへばり付いた、メイド達の気配に気づかずに。


休憩室に戻ったメイド達は、小声で相談をしていた。


「アーちゃんは気付いていません」

「どうやら私が取り出したのはバレて無い様ね」

「ふう…」

「ですがどうします?」

「アレは流石に…」

「子供が読む物じゃないわね」

「一体誰が…」

「帝国語だし、装丁も高そうだったわ

 アーちゃんでは買えないわよ?」

「馬鹿

 そもそも子供が、あんな物を買えないでしょう」

「それに本なんて、このダーナでも滅多に売られていないわよ」

「そうね

 王子様と魔術師も、あれから手に入らないし…」

「あのねえ…

 あんなマニアックな物、そんなに取り扱わないわよ」

「それを言うなら、あの本も希少よ?」

「そうねえ…

 でも、買ったんじゃ無いのなら…」


本は貴重な物で、写本でもなかなか手に入らない。

メイド達が愛読している、けしからん小説もなかなか手に入らない物だった。

そう考えると、アーネストが買ったとは思えない。

そこでメイド達は、誰が与えたのか推察する。

そして限りなく、真実に近い答えを得た。


「私達の物じゃあ無いし…」

「アーちゃんにあんな物、あげる様な人がいるの?」

「そもそも本なんて高価で…」

「あ!

 一人居たわ」

「え?

 誰?」

「最近領主様に面会されていますよね?

 もしかして…」

「まさか?

 アルベルト様が?」

「信じられない」

「でも、そうね

 アルベルト様なら、あんな物でも買えるわよ」

「間違い無いわ!

 領主様が渡したなら、納得がいくわ」

「そうね

 高額な本でも、領主様なら買えるでしょう」

「決まりね」

「おのれ、領主め」

「私達のアーちゃんを…

 汚したわね!」

「ぐぬぬぬ…

 いくら領主様でも、私達のアーちゃんを悪の道へ引き込むとは…」

「あの純真だったアーちゃんが…

 うう…

 じゅるり」

「おい!」


メイド達は、限りなく核心に近づいていた。

若干誤解があるようだったが…。


「これ以上アーちゃんを穢せはしないわ」

「そうね」

「みんな、落ち着いて

 いくら悪い事をしたとはいえ、相手は領主様よ」

「そうね」

「どうします?」

「うーん…

 何とか懲らしめたいわ」


メイド達はどうにかして意趣返しをしてやろうと悩む。

しかし、相手は仮にも、彼女達を雇っている雇い主だ。

そしてこのダーナを治める、領主様でもある。

そうそう簡単に、仕返しなんて出来る相手では無い。


その間にもアーネストは、淡々と書物を読み、翻訳作業を続けていた。

実際には照れたりしてはいたが、あくまで彼は本として見ていた。

子供のアーネストからしたら、大人の濃密な愛の物語はよく分からなかった。

それに翻訳に不要な単語は、極力無視していた。


もう少し大人だったら、或いは影響があったかも知れ無かった。

しかしアーネストは、今はまだ理解出来ていなかった。

そういう意味では、メイド達の希望通りの純真な少年のままであったのだ。

彼は不思議そうに、大人の禁断の書物を見ていた。


「大人達はこんな物読んで、何が面白いのかな?」


アーネストはぶつぶつ呟きながら、翻訳を続ける。

メイド達がアーネストを、他のけしからん書物の主人公に重ねて妄想をしている等とは知らずに…。


「私達だけでは無理そうね」

「ギルバート坊ちゃまに相談します?」

「そうね…」

「でも、坊ちゃまにまで悪影響が…」

「それはそれで…

 じゅるり

 じゃなくて!」

「まずいわよね?」

「うーん…」

「それなら、奥様に…」

「そうよ!それ!」

「奥様なら」

「じゃあ、早速行ってくるわ」

「エリザベット

 頼んだわよ」

「ええ

 任せて」


それから数日後、今度はアルベルトがみんなに避けられる事となった。

メイド達はひそひそと隠れて、何かを話していた。

そして執事のハリスまで、ジト目で睨んでいた。

困ったアルベルトは、妻のジェニファーに相談をした。

そこでアルベルトは、例の書物の事がバレた事を知った。


「違うんだ!

 信じてくれ!」

「何が信じてくれよ!

 こんな汚らわしい…」

「いや!

 確かに問題のある内容だが、それは翻訳に必要だったんだ!」

「だからって子供にこんな…」

「それは…」

「エリザベットが泣いていたわ」

「エリザベットって…

 アーネストのメイドか?」

「ええ

 こんな物を与えるなんて…」

「いや、それは重要な…」

「言い訳なんて聞きたく無いわ」


アーネストのメイドの中には、帝国から逃げ延びた者の娘も居た。

それで帝国語で書かれた、書物の中身が知られてしまった。

それが無ければ、書物の秘密はバレなかっただろう。

それはアルベルトも、予想だにしない出来事だった。


それからアルベルトは、娘達からも引き離されてしまった。

事情を説明しても、なかなか信用してもらえない。

彼は泣いて謝って、土下座までした。

それでも許してもらえなくて、最後はアーネストを呼んで、釈明をお願いする始末であった。


それから1週間が過ぎた。

アーネストの取り成しが効いたのか、ようやく領主は許されていた。

しかし当面は、まともに口を利いてくれそうにないと、アルベルトは嘆いていた。

それが昨日の、翻訳の報告の際にアーネストが聞いた愚痴だった。

そして今日、アーネストはギルバートに事情を話していた。


「…という顛末でな、アルベルト様はジェニファー様に平謝り

 ボクも証拠の本を提出して、やっと許してもらえたんだ」

「そんな事があったんだ…」

「そうだよ

 大変だったんだぜ

 ボクもメイド達に変な目で見られるし」

「はははは」


ギルバートはここ数日の、メイド達の異様な雰囲気は知っていた。

しかしまさか、こんな事になっているとは思わなかった。

父親は先日も、目の下に(くま)を作っていた。

しかしまさか、それの原因が魔物ではなく、夫婦喧嘩だったとは思わなかった。


「ボクの前では、喧嘩なんかしてなかったけどな…」

「そりゃあお前のまえじゃ、出来ないだろう?

 まさかそんな本をボクに渡して、喧嘩なんてしてたなんて…

 話せないだろう」

「そりゃあ…

 そうか…」

「ああ」

「それで

 肝心の本ってどんな内容なの?」

「ええっと…

 ジェニファー様に取り上げられたからな

 だから見せられないな」

「え?

 それじゃあ翻訳は?」

「大丈夫だ

 既に必要な単語は書き出している」

「ほっ」


アーネストは得意気に話す。

しかし内容に関しては、子供に見せる様なものじゃ無いとしか説明しなかった。

詳しい内容は、とてもじゃ無いがギルバートには話せないだろう。

内容を聞かれても、こうして誤魔化していた。


「剣術に関しては、もう少し待ってくれ

 今は魔導大全の翻訳が急務なんだ」

「分かったよ

 アーネストも大変だったもんな」

「ああ

 最悪な1週間だったよ」

「はははは…」

「もう少しで

 もう少しで氷と雷の呪文が分かりそうなんだ」

「そうか

 頑張れよ」

「ああ」


アーネストは騒動の顛末を語り終えると、懐から翻訳の控えを出した。

それは剣術に関する、ページの一部を抜粋した物だった。


「一応、今分かっているスキルの一覧だ

 参考にしてくれ」

「うん」

「そっちはどうなんだ?」

「昨日、また声が聞こえたよ

 やっと3つ目だ」

「そうか…」

「魔物の襲撃件数が増えている

 間に合いそうかい?」

「守備隊にはこれから報告する

 まだ1つ目のスキルも使えない兵士も居るんだ

 それでもどうにかするしかないよ」

「後は、魔物の群れが来るまでに、どれだけの準備が出来るかだな」

「ああ」


日に日に魔物の数は増えている。

しかしギルバートは、まだ3つめのスキルを修得したばかりだった。

そして守備隊では、1つめのスキルすら満足に使えない状況だ。

街に魔物が大群で、襲撃してくる日もそう遠くはないだろう。


「ボクは急いで、魔法を少しでも使える様にするよ」

「ああ

 ボクもスキルを…」

「駄目だ!

 お前は戦うべきじゃあ無い」

「え?

 だけど…」

「そうだな

 そのスキルは、セリアやフィオーナを守る為に使ってくれ

 くれぐれも魔物と、戦おうなんて思うな」

「だけどこのスキルがあれば…」

「馬鹿!

 お前に何かあったら…

 アルベルト様が…

 ジェニファー様が悲しむだろう?」

「う、うん…」

「それにセリアや、フィオーナだって悲しむぞ」

「それは…」

「良いな!

 お前は戦おうとするな」

「だけど…

 アーネストは?」

「ボクも前線には出ないさ

 子供が出れる訳無いだろう?」

「そうか

 そうだよな…」

「ああ

 当然だろ

 だからお前も、いざという時の為に、鍛錬しておけ」

「うん」


アーネストは実は、城壁から攻撃する役目を仰せつかっている。

しかしそれを、親友には内緒にしていた。

そんな事を知ったら、ギルバートも前線に出ると言って聞かないだろう。

だからアーネストは、こうして嘘を吐いていた。


しかしギルバートもまた、アーネストには内緒にしていた。

父に黙ってでも、いざという時には戦うつもりだったのだ。

その為にも、彼はスキルに磨きを掛けていた。

それは慢心も、少し入っていたのかも知れない。

だけどギルバートは、領民を守る為に戦うという決心をしていた。


こうして二人は、互いに内緒で戦う決心をしていた。

そして来るべき戦いに向けて、研鑽(けんさん)に励むのであった。

まだまだ続きます。

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