第039話
遂に手掛かりを掴んだと思われたが、依然として謎が深まるばかりであった
しかし着実に成果は上がり、魔物との戦いの準備は進む
戦いの時は、いよいよ近付いていた
1階から階段を登り、妹の眠る客間まで向かう
二人は先ほどの出来事に興奮して、道々に話しながら進む
しかし興奮していて、客間までの道のりが異様に長い事に、二人は気が付いていなかった
本来ならとっくに、二人は客間の前に着いている筈だった
アーネストは興奮して、ギルバートに聞いていた。
「なあ
やっぱりさっきも、引っ張られていたのか」
「うん
剣を振るというより、途中から剣に引っ張られるって言った方が近いかな」
「へえ…
そうなんだ」
ここでアーネストは、違和感を感じる。
不通なら既に、客間に着いている筈だ。
しかし続くギルバートの言葉に、再び意識を向ける。
「それに…
体も自然に動かされている様な感じがして」
「そうなのか?」
「うん
まるで誰かに…
でも自分の身体なんだよな」
「ううん…」
「それで勝手に動いて…」
「そういえば、凄い衝撃を感じて吹っ飛ばされたな」
「うん
足を踏み込んだ時に、アーネストは吹っ飛んだよね」
「ああ
ビックリしたよ」
「大丈夫だった?」
「ああ
だけど凄い力だったぞ」
「う、うん…」
ギルバートも、何となく変な感じがしていた。
ここってこんなに長かったっけ?
変だなあ…
「ともあれ、これでスキルを身に付けれたワケだよな」
「あ
うん」
そこでギルバートは、何かを思い出したのか立ち止まる。
「そうだ!」
「ん?
どうした?」
「あの時、変な音がしたんだ」
「変な音?」
「うん
ポローンって聞こえて…」
「ポローン?
そんな音がしたかなあ?」
「それから何か…
言葉も聴こえたな」
「言葉?」
「うん
スキルが何とか…」
「スキル、スラッシュを獲得しました」
「そう!それ!」
ギルバートは顔を輝かせたが、すぐに気付いて振り返る。
その声の主は、アーネストでは無かった。
そこには、男が一人立っていた。
「遂にここまで来ましたね」
「え?」
男はパチパチと、拍手をして祝福する。
アーネストは身構えると、震える足でギルバートの前に出る。
そして男を睨み付けて、詰問する。
この様な男は、今まで見た事も無かった。
「だ、誰だ?」
アーネストの声は、震えて上擦っていた。
まさか領主の邸宅に、賊が侵入するとは思っていなかった。
恐怖を感じながらも、何とか友を守ろうと身構える。
しかしギルバートは、驚いてはいたものの、恐怖を感じていなかった。
「おめでとう
スキルの習得者は実に数百年ぶりかなあ」
「えっと…」
「え?」
男は二人の反応を気にせず、ニコニコとしていた。
「何で貴方がここへ?」
「ギル、知り合いか?」
「うん
前に話した詩人さんだよ」
「なに?!
何でここに居るんだ」
「さ、さあ?」
真っ赤な衣装に身を包んだ詩人は、恭しく帽子を取って挨拶をする。
「どうも、はじめまして」
「あ、どうも…
じゃねえ!」
「ちょっと
アーネスト」
「何でここに詩人が居るんだ?
客人に招いたとしても、不自然だろう」
「そりゃあ勝手に入ってるからね」
「な、何だと
ここには結界が張ってあるんだぞ!」
「まあ、アレぐらいなら、簡単には入れますね」
「…」
領主の邸宅には、それなりに強力な結界が張られている。
悪意のある者が、そう易々と侵入出来ない様にしているのだ。
正式に入り口から入らなければ、侵入出来ない筈だ。
しかし詩人は、それを潜り抜けて入り込んでいた。
こんな不審者が、易々と侵入して近付いて来たのだ。
アーネストは警戒して、さらに鋭く睨み付ける。
ギルバートも親切な詩人と思っていたら、予想外の言葉に困惑していた。
「いやあ
なかなかここまでこないからね
心配してたんだよ
アルベルトに渡して正解だったね」
「アレを寄越したのは、お前か?」
詩人の発言に気付き、アーネストは尋ねる。
「そう、ボクが用意したんだ」
「そうか…
貴様があんな物を!」
「え?」
「何であんな物を寄越した!
あんな本を読まされた、ボクの身になれ!」
「あ…
と…
まさか…
君に直接渡したの?」
「そうだ
読める奴が他に居ないからな!」
「え?
マジで?」
「ま…
何だかよく分かんないけど
そうなんだよ」
「はあ…
あの馬鹿…」
「へ?」
「ごめん
子供にさせてるとは思ってなかった」
「それは…」
「えーっと
どうゆう事?」
「ギルは知らなくていい!」
「ええ?」
ギルバートには、破廉恥な書物の事は知られていなかった。
このまま黙っていた方が、良いだろう。
親友には、あんな物を読んでいた事を知られたく無かった。
「で?
何の用かな?」
「あー…
スキル習得おめでとう、という挨拶をね」
「それだけの為に?」
「ええ」
しかしアーネストは、周囲を見回してから、再度詰問する。
「それで、ここはどこなのかな?
挨拶の割には、こんな所に呼び出して…」
「え?
こんな所?」
「ギル
気が付かなかったのか?」
「え?」
気が付けば、辺りの景色は墨を流した様に薄くぼやけていた。
「ああ
場所はそう変わっていないよ
結界みたいな物だから」
「結界!」
「どうしたの?
アーネスト」
「ギル
結界なんて、そう簡単に張れるものじゃないんだ」
「そうなの?」
「ああ
少なくとも高位の魔術師や…
それと同等の技量が必要なんだ
お前は、一体何者なんだ!」
「あれえ
アルベルトに聞いてない?」
「さっきから父上の名前を出しているけど、知り合いなの?」
「おやあ?
本当に何も知らない様ですねえ…
困りました」
ガストン老師でも、この邸宅の結界を作るのがやっとだった。
それも魔道具を使って、簡単な認識阻害や通行の妨害をする程度だ。
しかしこの結界は、それとは異質な物だった。
さっきから感じていた、違和感の正体がこの結界だ。
客間に向かっていたと思ったら、別の場所に閉じ込められていたのだ。
「アルベルトは話して無いのか
どこまで喋って良いのか…」
男は思案顔で、困ってしまっていた。
どうやら領主アルベルトは、彼の事を知っている様子だった。
しかし二人には、何も知らされていなかった。
それはアルベルトが、何かを隠しているという証拠でもある。
「私は運命の糸
人の子はそう呼びます」
「運命の糸?
砂塵の悪魔!」
「おやあ
その名前は久しぶりですね」
「ば、馬鹿な!
くっ!」
「アーネスト!」
アーネストはポーチから、戦闘用のワンドを取り出すと身構える。
その表情は怯えていて、額から汗が滴り落ちる。
友のその様子を見て、ギルバートも身構える。
しかし彼の手には、練習用の木剣しか握られていない。
「悪魔がボク達に、何の用だ」
「悪魔?」
「ああ
高名な悪魔だ」
「悪魔ってなあに?」
「人間を越えた存在…
恐ろしい魔力を持った化け物だ」
「え?」
「そう警戒しないでください
それに、他の呼び名もありますよ
霧の守護者とか…
夢幻の魔術師とか…」
「知らないなあ」
「うーん
砂塵の悪魔と言うなら、砂漠の王国記を読んだんですよね?」
「そうだ」
「エジンバラ龍騎士譚は?
魔導王国物語は?」
「知らない…」
「あれえ?
あ!
そうか!
アルベルトも言ってたな」
「え?」
「そうか…
古代王国の時に途絶えたのか」
「何だって?」
「それならしょうがないか」
「古代王国って数百年も昔の?」
目の前の男は、数百年前の話をしている。
ギルバートはますます混乱した。
「悪魔だから、それぐらい生きているってか?」
「私はハイ・エルフですから
そのぐらいわけないですよ」
「は、ハイエルフ?」
「ええ」
男は髪をかき上げ、尖った耳を見せる。
「いくらハイ・エルフでも、数百年はおかしいだろ!」
「そうですかねえ」
「だって数百歳までしか生きられないって…」
「まあ、そうですね
私もそれぐらいの年齢ですから」
「何?
しかしさっきは…」
「それは運命の糸の事ですよ
私はその一人でしかありません」
「な…」
「ねえ、アーネスト
ハイエルフって…」
「悪い
それは後で、生き残れてからにしてくれ」
「え?」
「まあ、そんなに警戒しないでください
私は君達がスキルを無事身に付けれる様に、様子を見に来ただけですから
今回は…」
「どうして、そんなに親切なんだ?
砂塵の悪魔は…
お前がその一員なら、国を滅ぼした悪魔だろ?」
「ああ、そうか
あの作品は脚色も多いから、勘違いしたんだね」
「勘違い?
十分に怪しいだろう」
「私は女神様の使徒だよ」
「え?」
男の口から、予想外の言葉が出て来た。
女神様と言えば、この世界を創られた創造主である。
そして人間を生み出した、主神でもある。
彼はその女神様の、使徒だというのだ。
「アッサラームは、女神様の警告を無視したから滅んだんだよ
私はその警告をする役だっただけ」
「それなら
本当に女神様の使徒だというのなら、何しに現れたんだ」
「随分嫌われてるねえ
先に述べたけど、スキルや魔法を覚えたか確認に来たんだよ
君達には死んで欲しくなかったからねえ」
「へ?」
「どういいう事?」
「言葉通りさ
君達に死んで欲しく無いから、あの本を授けたんだ」
「それは女神様の意思なのか?」
「ええ」
「魔物も?」
「それは…
あれは女神様も、手を焼いているからねえ…」
「ふうん…」
それが本当なら、一応辻褄が合う。
アルベルトが何を隠しているのか知らないが、書物を提供してくれたのは間違いない。
それに、魔法やスキルが必要なのも確かだ。
女神様が助けてくれたんだと思えば、納得出来る。
本のチョイスには、問題があるがな…
「あの本についてはごめんね
手元にあった本があれしか無かったんだ」
「くっ!」
アーネストは本の事を思い出して、憮然とする。
「まあ、スキルを覚えれたみたいで良かったよ
女神様に言われて用意はしたけれど、覚えれなかったらどうしようと思っていたからね」
そこでギルバートは思い出し、尋ねてみた。
それは聞こえて来た、あの声の事だった。
「あのお
スキルが何とかってのは、どういう意味なんですか?」
「ん?
世界の声の事?」
「世界の声?」
「あれ?
まだ読めて無いの?」
「まだ途中です」
「ああ…
間に合うのかよ?」
男は頭を抱えていた。
「マジか…」
「えっと?」
「スキルは何度も型を覚えて、反復練習しないと身に着かない
そういう風になってるの!
キチンと型通りにやって、熟練度が一定になれば、晴れてスキルを使える様になる
スキルが身に着いた時に、頭の中に声が聞こえたでしょ?
それが身に着いた証拠」
男は早口で、まくし立てる様に一気に言った。
「へえ」
「ギルが聴いたって声はそれか」
「後は、身に着いたスキルや覚えた魔法は、本人の記録と共にワールドレコードに記録される
記録された魔法やスキルを使える様にする為にね」
「ワールドレコードってなんなんだ」
「女神が作った、世界の出来事を記録する…
まあ、この世界を現わす本の様な物だよ」
「へえ」
「他は?
知りたい事はあるかな?」
「随分と親切なんだな」
「ああ
さすがにマズいからね」
「ん?」
「この際、ある程度の情報は開示しよう
でないと時間が無い」
「時間が無いって?」
「それは…」
「それは?」
「すまない
そこは話せない事だ」
「何だよ
情報をなんたらって言ってたじゃないか」
「話せる事と話せない事があるんだ
他には?」
男は明らかに、何かを隠している様子だった。
「うーん
スキルは誰でも覚えれるのか?」
「あー…
本来はジョブ、職業によって制限されるんだけど
例えば、鍛冶師や魔術師は剣術は無理だね
尤も、元々筋力とか足りないだろうから、剣を振る事も出来ないだろうけど」
「やっぱり、そこでジョブって単語が絡むのか」
「ジョブは潜在的な、各個人に与えられた職業を現す称号さ
まあ、潜在的な能力に左右されずに、その後の修練で得られるジョブもある」
「一概に商人の息子だから、商人になるとは限らないという事か?」
「ああ
確かに商人の息子なら、親の影響はあるだろう
だけど冒険者になる者もいるだろう?」
「そうだな
英雄になる者もいるだろうし…」
「それは物語の中さ
現実にはそんな者は…」
「居ないのか?」
「難しいだろうね」
「じゃあ帝国の英雄は?」
「あれは両親や、周りの影響もあったさ
そうでなければ、あんなに強くはなれないよ」
「無理なのか?」
「難しいだろうね」
「ふうん…」
男はリュートを叩きながら、言葉を続ける。
「私が詩人であるのは、努力の賜物なんだ」
「詩人ねえ…」
「疑うのかい?」
「詩人と言うよりは…」
「まあ、詩人は副業だからね
本業は女神様の使徒だし」
「怪しいなあ…」
「はははは
称号は他にもあるから、機会があれば色々試してみればいい
職業を現わす物以外にも、何らかの能力を示す物もある
例えば、料理人とか果物の種飛ばし師なんて物もある」
「料理人は分かるが、果物の種って使えるのか?」
「使える、使えないじゃないんだ
何かを極めた称号が、職業を現す称号にもなる
そう考えてもらえばいい」
「そうなると
短剣を極めれば、そういう職業になれる
そんな感じか?」
「そうそう
そう思って間違いないよ」
「果実の種…」
ギルバートは気になったのか、ブツブツと呟いていた。
「さっき魔法も覚えると言ってたな
本を見ながら呪文を唱えるのとは違うのか?」
「君は無詠唱を知っているよね」
「な!」
「え?
むえい…何?」
アーネストはギクリとした。
確かに魔法の呪文を練習していた時に、アーネストは無詠唱を身に付けていた。
師匠が制御の為に、呪文は唱える必要があると言っていたのに、端折って練習していたのだ。
そのうちに呪文を唱えなくても、頭で唱えていると使える事に気が付いてしまった。
師匠には、それは知られない方が良いと言わていた。
「さっきも幾つか、無詠唱で使っていたよね
私には隠しても無駄だよ」
「な、何で?」
「君の予想通り、完全に覚えた呪文は端折ったり、詠唱破棄出来る
その上で訓練すれば、頭の中で呪文を唱えれる様になる
そこまで極めれば、無詠唱で使える様になるよ」
「それは…」
「ファイヤーボール!
こんな感じにね」
「っ!」
「え?」
男が片手を突き出しながら、火球を打ち出した。
「凄い…
これが出来れば、魔術師に革命が起きる」
「ただし、正しい手順と呪文を覚えなくてはならないよ
呪文は魔法の行使に必要な、正しいイメージを刻み込む行為だからね」
「というと?
イメージさえ合っていれば使えるのか?」
「それを刷り込む為に、呪文を覚えるんだよ
そうしないとワールドレコードには記録されないよ」
「むう
結局、呪文を調べて覚えるしかないのか」
「そういう事」
男は今度は、何も言わずに火球を作り出す。
しかし先ほどとは違って、火球は不安定だった。
「でも、使える様になっても、イメージは必要だからね
それが魔法の威力や効果に影響するから」
「しかし師匠は、それは秘密にしろと…」
「ああ
危険だと判断したんだね
そこまでの力があると、危険視されるからね」
「あ…」
「君一人が大きな力を持つと…
危ういと判断されて処分されるだろう」
「処分…」
「そこまではしなくても、首輪を着けたくなるよね?
魔導王国が滅びたのも、王族が力を持つ魔導士を恐れたからだ」
「魔導王国が…」
「君は良い師を持ったね」
「じいちゃん…」
魔法談義をする内に、アーネストの男に対する疑惑は払拭されていた。
善くも悪くも、魔術師とは魔法には盲目的で、魔法を語り合えば容易く信用してしまう。
「他には聞きたい事は無いかい?」
「うーん
もっと色んな魔法の事を聞きたいが…」
「それは魔導大全を調べてくれ
あれには色々書いてあるからね」
「そうなるよね…」
「それに
そんな事してたら、時間がいくらでも必要になるよ
そろそろここも閉じないとね」
「閉じる?」
「あ!
やばい」
「?」
「セリアの事、忘れてた」
「ああ
今頃、起きて泣いてるだろな」
男はそれを聞いて、苦笑いをした。
「大丈夫だよ
ここは時間が切り離されている
そこまで時間は掛かっていないよ」
「そうなんですか?」
「ああ
早く行ってあげなさい」
「はい」
「それじゃあ、そろそろ私は行くね」
「はい」
「えーと…
詩人さん、ありがとうございました」
ギルバートは改めて礼を言おうとしたが、名前を聞いていない事に気が付いた。
「ああ
そういえば名乗っていなかったね
私は女神の使徒
運命の糸のエルリック」
「ありがとう、エルリック」
エルリックの姿が薄くなり、靄の様に消えてゆく。
それと同時に周りの景色が鮮明になり、元の廊下に戻った。
最後にエルリックの声が、聞こえた様な気がした。
それはまた会いましょうと、言っていた様な気がした。
「不思議な体験だったな」
「女神様の使徒だって…」
「うん
初めて聞いた」
「アーネストでも知らない事があるんだね」
「そりゃそうさ
さっきの事も、色々と知らない事ばかりで…」
「あ!
セリアが泣いてるかも
急げ!」
「あ!
おい!
ったく…」
ギルバートは純粋に、女神様の使徒が自分達を助けようと現れた、そう思っていた。
しかし、アーネストは違っていた。
確かに彼とは、魔法談義をして、魔法に関しては信頼出来るとは思った。
しかし、アルベルトもエルリックも何かを隠している。
それもよほど重要な事なのだと思っている。
それが分からない限りは、用心に超した事は無い、そう思っていた。
さて、セリアをすっかり待たせたと、部屋に向かおうとして気が付く。
先ほどと日の差し込み方が変わっていない。
「ギル」
「ん?」
「陽射しの向きが変わっていない」
「え?」
ギルバートは、先ほどと変わらぬ太陽を見上げる。
「本当だ
あんなに時間が経っていたのに」
「そう言えば、時間が切り離されているとか…」
「うん
そんなに時間が経ってないって」
「結界だって言ってたな
時間の干渉まで防ぐ結界だったのか…」
アーネストは改めて、女神の使徒の実力を思い知った。
言葉で聞いていたが、まさか本当に時間が経っていなかったとは思わなかった。
それに先ほどの結界も、師匠でも作れない空間を切り離す物だった。
それが証拠に、廊下から別の世界に入り込んでいた。
それだけでも、相当な魔法なんだろうと理解出来た。
「それじゃあ、セリアの元へ行こう」
「今ならまだ、起きてないかも知れない」
二人はいそいそと、セリアの眠る部屋へ向かった。
部屋の扉にそっと手を掛け、静かに開ける。
ベットの上には、身を起こしたセリアが居た。
「ん?」
「お兄ちゃ、来てた」
「おはよう、セリア」
「あい」
一瞬、アーネストは違和感を覚えた。
しかしギルバートは、何事も無かった様にしているし、今の違和感を信じたくなかった。
結局アーネストも何事も無かった様に、セリアの前で椅子に腰掛けた。
うん、何も見なかった
気のせい、気のせい
そう思いながら、目の前で楽しそうに語らう二人を見ていた。
まだまだ続きます。
ご意見ご感想がございましたら、お聞かせください。
また、誤字・脱字、表現がおかしい点がございましたら、ご報告をお願いします。




