第141話
ギルバート達の乗った馬車は、隊商の脇を抜けてそのまま町へと入る
彼等の馬車は隊商の中でも、領主に信頼された者が乗っている馬車だった
だからこうした門でも、あまり誰何される事も無く素通り出来るのだ
ましてや砦から来た、迎えの兵士も同行していた
それを誰何する様な愚か者は、この砦には居なかった
ギルバート達が通る時に、隊商の面々からは恨めしそうな視線が向けられる
それはそうであろう
彼等は時間を取られて待たされて、通行手形と要件を確認される
それを無く素通りする者を見て、不満に思うなと言う方がおかしいだろう
しかし貴族の兵士が同行していたので、不満そうな顔はしても文句は言わなかった
下手な事を言えば、不敬罪になるからだ
ダーナではそれほどでも無いが、ここではダモンの命令が優先される
それが分かっているので、商人達は不満そうな顔をするだけであった
「嫌そうな顔はしていたが、何も言ってこないな」
「そりゃあそうだろ
なんたってここの領主の兵士が一緒なんだ
下手な事は言えないさ」
「しかし大丈夫なのか?
これでバレたら…」
「確かにマズいが、ナンディも上手くやるさ
だからこの話も任せたんだ」
ナンディはダモンの父である、ガモン商会に出入りしている商家だ。
だからダモンも、ナンディを優遇して迎え入れていた。
しかし当のナンディは、ガモン商会に対して不満を持っていた。
それで今回の、ギルバートを隠して通す役目を喜んで受けてくれた。
長年搾取されて来たガモン商会に、一泡吹かせると話に乗ってくれたのだ。
「奴等には色々とやられていますからね
ここらで仕返しがしたかったんです」
ナンディはそう言って、ハリスの計略を快諾してくれた。
それでギルバートを、息子と偽って乗せてくれた。
同行する冒険者達も、ナンディの策に快く乗ってくれた。
だから後は、このまま関所まで移動するだけだった。
そうすれば関所を抜けて、無事に山脈まで出る事が出来る。
馬車は城壁を潜って、その奥に見える砦へと向かった。
城壁から砦までは大体1㎞ぐらいだろうか。
山脈の麓とあって岸壁に沿って建てられた砦を、ぐるりと城壁が囲んでいた。
その城壁の中に小さな街が出来ていて、ダーナほどでは無いが栄えていた。
「城門や城壁はなかなかだが…
オーガでは一溜りも無いな」
「そうか?
こんな森の中の砦だ
これでも十分大きいだろう」
「そうなのか?」
「ああ
本来は人間を基準に考えているんだ
オーガを想定にしていないさ」
「それで大丈夫なのか?」
「ああ
本来はそれで問題無いんだ
それにオレ達の街じゃ無いしな」
「アーネスト…」
「そんなに深刻に考えるなよ
オレ達には関係無い事だろう?」
「それはそうなんだが…」
ギルバートはダーナを基準に考えていたが、砦として考えればここは随分と大きかった。
それはそうだろう。
城壁の中に畑も入っているので、無駄に広く作られていた。
これでも最初は砦の周りだけであって、外周も半径300mほどの予定だったのだ。
それをダモンが集落を作り、勝手に城壁を大きく張り巡らせたのだ。
勿論資金はガモン商会が出しており、それだけの打算はあったのだ。
大きな街にして、商人から関税を徴収する。
それで十分に儲けれるという算段だった。
おかげで集落に人が集まり、ちょっとした街にまでなっていた。
ここが辺境から更に外れた森の中でなければ、もっと人が集まっていただろう。
「ほとんどが民家だが
中には商家や商店、職人の工房も見えるな」
「ああ
今や街として機能している
街の名前はノルドの街と勝手に呼んでいるみたいだな」
「へえ
でも聞いた事が無いな」
「そりゃあ…
自治領としては認められたが、王国からは正式には認められていないからな
あまり人の口には立たないのさ」
「へえ…」
大きさは街規模にまでなっているが、未だに正式にはノルドの砦である。
それは本来ならば、砦として建造されたからだ。
無理矢理街として機能させているが、王国からは貴族領としては認められていない。
そして商人が集って治める、自治領としても認められてはいなかった。
あくまでもダモンが、街だと言い張っているだけなのだ。
「何だかややこしいな」
「元々許可された領地では無いからな
それを勝手に領地にしようとしているんだ」
「でも…
国王様からは認可されたんだろう?」
「認可したと言うか…
わざわざ攻め込むのも面倒な場所だからな
それで放置されているんだ」
「放置って…」
場所が場所なので、王国も簡単には攻め込めない。
そしてダーナとしても、ここは攻め落とすほどの場所では無かった。
それで税を収めるのならばと、国王も苦渋の選択をしたのだ。
ようやく戦争が終わって、国はこれからという時期だった。
そこで内乱など起これば、再び国内が荒れてしまう。
だから放置されているというのが、この砦の現状だった。
「本来なら王国への反抗と取られても仕方が無いんだ
それを何とか攻められずに済んでいる
そういう状況だ」
「何でだ?」
「だから場所が悪いんだって
山脈の麓だからな
王都からは向かい難い」
「しかしダーナからならば…」
「ああ
だが、ダーナも長い戦いの傷痕が残っていたんだ
それで開拓団を送り出したんだ」
「そうか
そう言われればそうだな…」
「だからアルベルト様も我慢していたんだ
そうでなければ、とっくに攻め落としていたさ」
「なるほど…」
アルベルトとしても、本当はここを押さえておきたかった。
しかしダーナの現状を考えれば、今は攻め込む時では無かった。
先ずは領地を安定させて、それから時期を見て攻め込むつもりであった。
しかし魔物が現れた事で、それどころでは無くなったのだ。
「それとな
鉱山を守る砦は欲しかったし
何よりも山脈を結ぶ導線にもなるからな
已むに已まれずってヤツだ」
「ふうん…」
アルベルトとしては突っ撥ねても良かったのだが、折角出来た砦を失いたく無かった。
それにダモンは男爵とはいえ、商家としての人脈と金を持っていた。
それを上手く使っての砦の建造であったので、アルベルトも不満を言い難かった。
いずれは理由を付けて、攻め落とせば良いと考えていたのだ。
「結局、アルベルト様も我慢するしか無かったんだ
だからダモンを守備隊長に任命して、ここでの自治は黙認したんだ」
「なるほど
それだけ頭が回る相手なのか…」
「ああ
だからこそ油断はするなよ
何を企んでいるのか分からないからな」
「ああ
バレない様にしないとな」
「ああ
もう少しで砦を通り過ぎるが…
お前は馬車の中で大人しくしていてくれよ」
「分かった分かった
そうするよ」
ハリスの調べで、ダモンがギルバートを狙っているのは明白だった。
それも人質として捕らえるつもりなのか、拘束しようと見張っているという話だ。
それでギルバートも、商家の息子として同行していた。
服装も商人の息子らしく、華美でない地味な服装にしている。
武器や鎧も馬車の中の商品に隠し、見付からない様にしていた。
「そろそろ砦の側を通るぞ」
「ああ
商人の息子らしく…
だったな」
「ああ
っていうか、喋らなければ良いさ」
「分かった」
黙っていれば、言葉遣いも分からないだろう。
だからアーネストは、ギルバートに黙っている様に言った。
黙っていれば、貴族らしい言葉遣いもバレないだろう。
そのまま馬車は進んで、砦の先の関所の前に停まる。
「よし
通行手形を見せろ」
「はい
こちらに」
「うむ…」
兵士は偉そうに威張っていて、ナンディから手形をひったくる。
それだけでも、ここの兵士達の態度の悪さが目に付いた。
ここではダモンが貴族として威張っていて、その兵士も同様に威張っていたのだ。
「ふん
ダーナからの隊商か」
「はい」
「この手形では通せんな」
「え?」
「ふん
そんな事も知らんのか?
田舎者め」
兵士はそう言って、ナンディを見下した態度を取っていた。
「な!
あ、あいつ…」
「止せ
ここでは奴らの方が上なんだ」
「しかし…」
「良いから黙ってろ」
ギルバートは兵士の態度に腹を立てたが、アーネストがそれを押し留める。
ここで下手に騒げば、兵士に取り囲まれてしまう。
そうなってしまえば、ギルバートの正体も知られてしまうだろう。
だからこそアーネストは、ここは我慢すべきだと言っているのだ。
「我慢だ
我慢しろ」
「しかし…」
「バレたらマズいんだ
なあに
ナンディが何とかするさ」
アーネストの言う通り、ナンディは慣れた感じで兵士に応対した。
「袖の下ですかな?」
「ば、馬鹿!
そんな事を堂々と…」
「ですが、それが欲しいのでしょう?」
「くっ」
「では
こちらを…」
「最初っから黙って渡せば良いんだ!
この田舎者め!」
「ぐうっ」
ドガッ!
兵士はそう言って、袋をひったくるとナンディを殴り付ける。
「くそっ!」
「止せって」
その様子に腹を立てて、ギルバートが立ち上がろうとする。
しかしアーネストが、それを何とか押さえ込んだ。
「何だ!
何か文句があるのか?」
「いえいえ
滅相もございません」
「なら、その小僧は何だ?
生意気な!」
「息子が申し訳ございません」
「ふん
さっさと行け!
目障りだ」
「は、はい」
兵士に見付かってしまい、ナンディが慌てて前に出る。
それで何とか、兵士も睨むだけで済んでいた。
それでなければ、拘束されていたかも知れない。
ナンディは慌てて、関所を抜けて街の中に入って行った。
関所を抜けると、街の中を道が東に向かって伸びている。
道の両側には、隊商が泊まる為の宿が並んでいる。
このまま抜けても良いのだが、それでは目立ってしまうだろう。
ここは宿に一泊して、如何にも急ぎで無い様に出立する必要があった。
ナンディは宿に向けて、馬車を進めて行く。
「ふう…
肝が冷えましたよ」
「すまない…」
「いいえ
坊っちゃんのせいではありませんよ
それよりも…」
「ああ
思ったよりも、状況は良く無いな」
「え?」
ナンディとアーネストは、難しそうな顔をしていた。
それは思ったよりも、この街の治安が悪化していた事だった。
袖の下の強要もそうだが、兵士の態度も非常に悪かった。
街の中を見渡しても、兵士達が威張って歩いている様子が見て取れる。
「へへへ
良いだろう?」
「きゃあ
や、止めて」
「勘弁してください
料金も払ったでしょう?」
「うるせえ!
見逃して欲しいのなら、この娘も寄越すんだな」
「それだけは…」
「うるせえ!
黙って従えば良いんだよ」
「ぐはっ」
ドガッ!
道の先では、隊商の馬車から少女が強引に連れ攫われようとしている。
しかもその犯人は、この街の兵士なのだ。
「くっ!」
「どうするつもりだ?」
「見ていられない
すぐに…」
「すぐにどうする?」
「え?」
「それでお前の存在がバレれば…
ナンディの苦労はどうなる?」
「くっ…
しかし!」
「しかしも無いだろう?
よく見ろ」
アーネストが指差した先では、暴行を受けている商人の姿が見えた。
また別の通りでは、襤褸を着た子供が兵士に蹴り飛ばされている。
ここはダーナと違って、治安の悪い街なのだ。
そして街を守る筈の兵士も、この街では好き勝手にしているのだ。
「ここはダーナでは無いんだ」
「しかし…」
「それに、商人の息子がどうやって止めるんだ?」
「くっ…」
ギルバートは今、商人の息子として同行しているのだ。
貴族の子息でも無ければ、王太子でも無いのだ。
それがいきなり止めに入っても、逆に切り掛かられるだけだろう。
そんな危険な事を、アーネストも兵士達も許さないだろう。
「それにな
許せないって思いは…
お前だけじゃ無いんだ」
「え?」
「坊っちゃん」
「ここは堪えてください」
「そうですよ
オレ達だって…」
兵士達もまた、ギルバートと同じ思いだった。
ここの兵士の行いは、目に余る物であった。
しかしここで彼等が飛び出しては、マズい事になる。
だからこそ彼等も、怒りを堪えて黙って見ているのだ。
「分かったか?」
「あ、ああ…」
「オレだって腹が立っている
しかしな、今は堪えろ」
「くっ…」
アーネストにしても、兵士の横行には腹が立っている。
しかし今は、ギルバートの素性を隠して通り抜ける必要があるのだ。
だからこそ、怒りを堪えているのだ。
「いずれこの報いは、思い知らせてやるさ」
「アーネスト?」
「なあに
国王様に報告すれば良い
それに…」
「それに?」
「くくくく…」
「おい?
何か考えがあるのか?」
「ああ
後のお楽しみさ」
アーネストは何か、悪い企みでも思い付いたのだろう。
悪そうなニヤニヤした笑みを浮かべる。
それを見て、兵士達は非常に嫌な予感を感じていた。
「まあ
今は宿に泊まろう
ナンディの行きつけの宿がある」
「ええ
この先の宿です
ここなら安心ですから」
「分かった
しかし本当に…」
「大丈夫…
な筈です」
先の状況を見れば、本当に大丈夫なのか不安であった。
以前に増して、街の治安は悪化しているのだ。
それでもナンディは、行きつけの宿を信頼していた。
それで彼は、いつもの様に宿に入った。
「よう
ハドソン」
「な、ナンディ
無事だったのかい?」
「ああ
何とか無事だよ」
「良かったよ
ダーナの街は魔物に襲われたって聞いたから…
ってお前!」
宿の主人は、ナンディの顔を見て表情を顰める。
「兵士に殴られたのか?」
「ああ
袖の下を強要された」
「あいつ等…」
「仕方が無いさ
しかし…」
「ああ
年々悪化しているな
ダモンは」何をしているのか…」
「しいっ
聞かれたらヤバいぞ」
「なあに
聞こえやしないさ」
宿の主人はそう言って肩を竦める。
どうやら彼も、ダモンの横暴には堪え兼ねている様子だった。
街の治安は悪く、宿屋や商人達も苦しんでいた。
だから街の領主と名乗るダモンに、彼等は不満を持っていた。
「それで?
今日は泊まって行くんだろう?」
「ああ
いつもの様に頼む」
「そうだろうそうだろう
ここに来たのなら、うちに泊まって行ってくれないとな」
「はははは
相変わらずだなあ」
「へへへ
んで?
そっちのは?」
「あ、ああ…」
ここでナンディは、どう説明しようか思案する。
ギルバートは息子として同行する予定である。
そしてダーナの兵士達は、そのお守りの冒険者達として同行していた。
アーネストはその友人という事になっている。
しかしアーネストが、ここで前に出て説明を始める。
「こちらはダーナの元領主、アルベルト様のご子息である」
「え?」
「おい!
アーネスト?」
「アーネスト様
それは…」
「良いんだ
彼にも協力してもらおう」
「しかし…」
「何だ?
何があったんだ?」
アーネストは何故か、当初の予定を変えて正体を明かす事にした。
本来ならばここでも、ナンディの息子として案内する筈だったのだ。
しかしアーネストは、何故か予定を変更した。
それだけ宿の主人を信用したのか、彼は主人に理由を明かす。
「実はアルベルト様が亡くなり、急遽王都に向かう必要があるんだ」
「へ、へえ…」
「それでここの領主にバレない様に、この宿に泊めて欲しいんだ」
「バレない様にって?
何でだい?」
「ダモンはアルベルト様を恐れていた
その子息がここに来たとなれば…」
「ああ
なるほど」
アーネストの説明に、主人はすぐさま頷いた。
ダモンの事を知っているので、納得したのだろう。
彼の性格ならば、ギルバートに何をするか分からない。
だからこそここに、彼が来ている事は秘密なのだ。
「それに…
今のダーナは、新たな領主の代行が訪れている
しかし先代の子息のギルバート様が捕らえられれば…」
「なるほど
人質としては持って来いという訳ですか」
「ええ
ですから内緒にして欲しいんです」
「良いんですか?
こういっちゃあ何ですが…」
「主人を信用していればこそです
ナンディさんの懇意の宿ですし」
「そう言われると…
断れねえな」
「ええ
そのまま素通りしては、怪しまれます
今晩一晩だけでよろしいので…」
「分かりやした
任せてくだせえ」
宿の主人ハドソンは、その恰幅の良い胸を叩いて言った。
どうやら彼も、ダモンには苦しめられている様子だ。
だからこそ心情を理解して、協力すると申し出てくれた。
ナンディも安心したのか、ほっと胸を撫で下ろす。
「今晩一晩で…
よろしいんですね?」
「ああ
お願いします」
「分かりました
内緒にして上手くやります」
「頼んだよ」
「アーネスト…」
「良いんだよ
信頼出来る宿の主人だ
正直に話すべきなんだよ」
「それはそうだが…」
「良かったんですか?」
「ああ」
アーネストが話した事で、宿の主人は協力してくれると言ってくれた。
それでナンディも安心して、隊商の仲間達を宿の中へ招き入れた。
当初の予定では、他の者達は別の宿に泊めるつもりだった。
そうした方が、何か起こった時に対処し易いと考えたからだ。
しかし宿の主人が協力してくれるのならば、安心して泊まれる。
それで怪しまれない様に、同じ宿に集まったのだ。
「アーネスト
良かったのか?」
「くどいな
大丈夫だって」
「そうか?
それなら安心するが…」
「ああ
それよりも…」
アーネストはそう言うと、兵士とギルバートを連れて奥の椅子に座った。
そうして暫く、こそこそと話し合いを始める。
これからの事を考えて、アーネストなりに考えがあったのだ。
それを兵士達に教える為に、こうして集まったのだ。
「だからな、お前は準備をして…」
「それでは私達は?」
「オレ達もどうします?」
「それはだな…」
その様子を見て、ハドソンはナンディに尋ねる。
「なあ
あの方達は本当に…」
「ああ
以前話した、ダーナの領主様
あの方のご子息だ」
「両方かい?」
「いや
片方は親友の魔術師だそうだ
しかし彼も、王都で叙爵される予定だそうだ」
「へえ…
魔術師か」
「ああ
だから次に訪れる事があれば…
お貴族様かい?」
「ああ
だから今の内から…」
「ああ
サービスさせてもらうさ」
「ははは
その意気だ」
ナンディはハドソンの言葉を聞いて、ニヤリと笑う。
宿の主人も、客が入らなければ儲けにならない。
それもこれだけ治安が悪いと、集客も大変である。
貴族に気に入られれば、今後も贔屓にしてもらえる可能性もある。
だからこそナンディは、上手くやれよと言っているのだ。
「どうせなら、あのダモンを…」
「おいおい
滅多な事は言うなよ?
どこに耳があるか分からねえ」
「う…
それもそうだな」
ハドソンはそう言って、バツが悪そうに頭を掻いた。
ナンディの言う様に、どこに聞き耳を立てているか分からない。
ダモンは用心深い男なので、油断が出来ないのだ。
そしてそれほどの男だからこそ、こうして街をコッソリと作れたのだ。
これが隙の多い男ならば、建造中にバレてしまっただろう。
油断ならぬ男だからこそ、上手く砦を建造して、街にまでしたのだ。
そういう意味では、ここで話すのも危険である。
ナンディは目配せをして、黙る事を勧めるのであった。
こうしてギルバート達は、ノルドの街の宿に泊まる事が出来た。
宿の看板には、鉄の蹄亭と看板が下がっている。
それはこの街が、鉄鉱石が豊富に採掘出来る鉱山の近くにあるからだった。
鉄の蹄亭は、隊商を泊めて賑やかな夜を迎えていた。
まだまだ続きます。
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