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聖王伝(修正中原稿)  作者: 竜人
第六章 王都への旅立ち
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第137話

ギルバート達はゆっくりと公道を進む

魔物は思ったよりも活発ではなく、今のところはゴブリンも現れていなかった

予定より順調で、昼過ぎには休憩する為の野営地に到着した

そこは何ヶ所かある野営用の空き地で、木々を切って広場にしてあった


広場や公道には簡易の小さな結界が設けてあり、本来は魔物の侵入が困難であった

この様な広場が等間隔で、大体20㎞から30㎞の間隔で用意されている

そこで馬車を停めて集まり、食事や休息をするのだ

夜には天幕を張り、焚火をして仮眠を取る事も出来る

しかし結界に関しては、以前ほどの効果は期待出来なくなっていた

魔物は結界をすり抜けて、襲って来る事が増えていた


少し早いが、焚火を囲んで昼食の準備を始める。

近くで採れる山菜や根菜を煮込み、干し肉を入れてスープを作る為だ。

本来は干し肉と固い黒パンなのだが、そこはギルバート達が同行している。

旅慣れていない者が居るので、少しでも休息を取り易くと計らっていた。


「このスープは旨いね」

「はい

 ワイルド・ボアの肉を入れましたから

 普通のヤギや牛では、ここまでの旨味は出せませんよ」

「え?

 良いのかい?」

「はい

 その分は、ハリス様から頂いております

 ご安心ください」


ハリスはフランドールの我儘で、忙しい筈だった。

それなのに時間を見付けては、この様な下準備をしている。

出来る男は、そこが違うのだろう。

ギルバート達はハリスに感謝しながら、ワイルド・ボアのスープを堪能する。


「しかし、邸宅の食事に比べるましたら…」

「ん?

 そうでも無いぞ

 普段から贅沢な食事は控えているし」

「そうだな

 アルベルト様の配慮で、いつ飢饉が来ても良い様に食事は質素にしてあった

 豪勢なのは何かあった時だけだ」

「そうなんですか?」


邸宅での食事には、毎日肉や魚は出されていたが、香辛料は控えられて塩と素材の味が主だった。

それに華美な贅沢は駄目だと、必要以上の食事は出されなかった。

果物や野菜も庭で採れた物が使われ、支出も抑えられていた。

それはアルベルトが、質素倹約こそ貴族のあるべき姿勢だと考えていたからだ。


「無駄や贅沢はいかん

 普段から有事に備え、しっかりとした身体を作るべきだ

 なんて言ってて、酒も数日に1回にしてたよな」

「そうそう

 酒は身体に良いが、飲み過ぎては毒になるって…

 そう仰っていたな」

「へえ…

 将軍に聞かせたいですな」

「あ…」

「それは…」


将軍は酒好きで、毎晩1本は空けている。

飲み過ぎない様に気を付けてはいるが、それでも夜は酔っぱらっている事が多い。

その事でトラブルも多いので、そこは部下の人達も頭が痛い問題だった。

最近ではエレンが注意しているので、そこまでは深酒はしない。

それでも飲む習慣は残っているので、なかなか止められないらしい。


「あれは…なあ」

「そこだけ駄目だってエレンも愚痴っていたな

 なんでも酒で立てなくなるとか

 どんだけ飲んでいるんだか…」

「あ!

 坊っちゃん、それは…」

「しっ!

 止せ!」

「要らぬ事は…」

「ん?」


兵士が察して言い掛けたが、慌てて他の者が止めに入った。

まだ知る必要が無い事もあるだろう。

それにギルバートは、その言葉の意味を理解していなかった。

まだその様な経験も無く、知らない事だったのだ。


それに少なくともギルバートは、見た目はまだまだ子供だった。

当然ながら男女の機微なども知らず、その事はなるべく触れない様にしていた。

必用なら…王城では必要になるだろうから、そこで教えられるだろう。

変な知識を与えて覚えさせたら、後々責任が重大になると判断されていた。


「し、しかしエレン殿も、どこでその様な会話をされていたんですかなあ?

 誰が聞いているか分からないのに」

「え?

 普通に食堂で、家族で集まっている時だよ」

「へ?

 家族って…」

「フィオーナ様やイーセリア様の前でですか?」

「ああ

 セリアはよく分からなくて笑っていたけど、フィーナは情けないって言ってたな

 だらしが無いとか甲斐性が無いとか…

 そんなに言う必要があるのかなあ?」

「おい!

 それって…」

「ああ

 間違いなく、意味が分かって…」

「ん?」

「あ!

 いえ!」

「な、何でも無いです!」


慌てる兵士達を見ながら、ギルバートは怪訝そうにしていた。

後に意味が分かってからは、妹が相当ませていたのはエレンが原因だと思い知る事となる。

女は早く育つ分、そういった事には敏感なのだ。

そしてその様な会話を、男性が知らない場所で話しているのだ。


ギルバートが首を捻っている間、アーネストは黙り込んでいた。

不審に思った兵士が尋ねると、思いがけない答えが返った。

どうやらアーネストは、その言葉の意味が分かっているらしい。

それで自身も危機感を感じて、酒を控えようと考え始めていた。


「アーネスト?」

「オレも…

 酒は控えよう…」

「え!」

「それって…」

「フィオーナ様の事ですか?

 それとも…」


兵士達は思わず出た言葉に、反応して頬を緩めた。


「ん?

 あ!

 ち、違うぞ

 これは決してそういう…」

「ふうん」

「あのアーネスト坊やがねえ…」

「そんな事を気にするとは…」

「やはり女が絡むと…」


兵士達は何となく察して、アーネストの心情を理解してニヤニヤする。

アーネストは顔を赤らめて、尚も激しく否定する。

彼は無意識に、フィオーナに嫌われる事を気にしていた。

それがバレない様に、慌てて否定をする。

しかしそうすればそうするほど、肯定している事になる。


「ボ、ボクは決してそんな…」

「へえ…」

「ふうん…」

「べ、別にあいつは…」

「あいつ…ねえ」

「ふうん」

「おい!」


兵士達がニヤニヤしているので、今度はギルバートが質問する。


「どうしたんだ?」

「いやあ

 アーネスト坊やがねえ」

「おい!

 止せって!」

「あの、将軍の酒をくすねていた坊やが

 フィオーナ様に嫌われたくないって…」

「え?

 ああ、フィオーナか

 アーネストは昔からフィオーナが好きだからな

 嫌われたくないんだろう」

「え?」

「坊っちゃん?

 あのう…」

「ああ

 オレが分からないと思っているのか?」

「それは…」


子供だと思っていたが、ギルバートはアーネストとフィオーナの事を気が付いていた。

しかしそれがどこまでの物かは、まだ彼は理解していない。

あくまでもフィオーナが、アーネストの事を好きだという事しか気が付いていなかった。

その辺りは、まだまだ子供なのだろう。

会えなくなる事が、寂しいだろうとしか思っていなかった。


「ん?

 どうした?」

「いえ…」

「なかなかどうして

 成長されているんですな」

「ん?

 どういう意味だ?」

「ギルはそこまで気付いていないぞ」

「え?

 そうなんですか?」

「ああ

 どうせ好き嫌い程度にしか思っていないんだ」

「え?」

「それはさすがに…」

「ん?

 違うのか?

「あ…」

「はあ…」


ギルバートはアーネストの指摘通り、そこまでは理解していなかった。

あくまでも子供の好き嫌いという考えである。

兵士達は同情して、生暖かい顔をしてアーネストの肩を優しく叩く。

それを嫌そうな顔をして、アーネストが愚痴る。


「なんだよう

 生暖かい顔なんかして」

「いやあ」

「頑張れよ」

「煩い!」


アーネストとしては、そろそろ本気で考え始めていた。

しかしそのせいで、この前も喧嘩をしていた。

そしてその原因が、よく理解していないギルバートのせいだった。

親友とはいえ、そのお節介は困ったものだと考えていた。


「それにしても

 そんなに仲が良い母上や妹さんは、お見送りにいらっしゃいませんでしたね」

「そうだよなあ」

「ああ

 それは泣いてごねるから、別れは家で済ませたんだ」

「そりゃあまた…」

「坊っちゃんは意外と淡泊ですな」

「そうか?

 二度と会えないわけじゃあないだろう

 そりゃあ王都への旅は大変だろうけど」

「え?」

「大変ですよ?」

「そうですよ」

「そうなのか?」


それは大変などと言う物ではなかった。

男と違って、女性の長旅は危険なのだ。

ましてや彼女達は、今では貴族の権威を翳す事も出来ない。

その辺が理解出来ていないので、ギルバートはそんなに悲観していなかった。


「そのう…」

「女性の長旅は危険です

 そうそう王都へは…」

「そう…なのか?」

「ええ」

「それなら、もっと別れの時間を作った方が良かったかな?」

「そうですね」

「今さらですが…」


確かにジェニファーは、今生の分かれと言わんばかりに悲しんでいた。

しかしそれなら、ギルバートが機会を設けて会いに行けば良い。

そう思って、ギルバートは前向きに考えていた。

しかし王太子になれば、そんな簡単な事では無いのだ。

その辺りもギルバートは、まだまだ考え方が子供であった。


「まあ

 今頃は新しい家での生活で大変だろう」

「あー…

 そうでしょうね」

「貴族とはいえ、使用人も半分に減りますし

 何よりもお金が入りませんから」

「ああ

 今までよりも質素な生活になるだろうな」


今までは領主としての収入に貴族としての収入、それに領地経営で得た収入もあった。

それは破格な収入になるが、ほとんどを領地の存続と飢饉に備えた備蓄に回していた。

そしてその備蓄は、そのままフランドールの私財として接収されていた。

領主の代替わりとなるので、そのままフランドールの物になってしまったのだ。


大体が普通の家庭の収入が、月に金貨2、3枚になる。

商家が金貨数十枚になり、貴族も金貨数十から100枚ぐらい入れば良い方であった。

ダーナも地方の街とはいえ、辺境伯の領地である為に、収入はそこそこであった。

しかし夫を亡くした未亡人の貴族では、月の給金は金貨2,30枚程度しか無かった。

それを母娘3人と、使用人が2人も居れば、生活するのもやっとであった。


「フランドール殿が面倒を見てくれると言っていたが…

 大丈夫なのだろうか」

「そうですなあ…」

「ギル…

 それは以前の話しだろう?

 今はそんな甘い考えは出来ないぞ」

「え?」


フランドールがそう言ってくれたのは、二人の仲が険悪になる前の話だ。

今のこの状況では、援助を打ち切られたり、追い出されても仕方が無いだろう。

そうならない為にも、早目に王都に着いて報告をしなければならない。

魔物の侵攻の後始末と、今後の街の政策を伝える為に。


「フランドール殿は、援助をするつもりは無いらしい」

「そうなのか?」

「そうなのかって…

 聞いていないのか?」

「あ、ああ…」

「ハリスが溢していたぞ」

「そんな!

 それじゃあ母上は…」

「手持ちの資金は持ち出せたが、その他は接収されたって

 フィオーナの着替えもほとんど売られたそうだ」

「そうなのか?」

「ああ

 だから暫くは良いが…

 厳しくなるだろう」

「マズいな…

 王都に着いたら、先ずは街の現状を伝えなくっちゃ」

「そうだな

 使い魔でも伝言はしたが、どこまで正確に伝わっているか…」


魔物の侵攻の前後は勿論、その後も幾度か使い魔は飛ばされた。

しかし返事は返っておらず、その伝言がキチンと国王に伝わっているかは怪しかった。

使い魔がヘイゼルに届いているかもだが、その後の話が国王まで伝わるかも確実ではない。

使い魔が内々に処理されていては、その伝言すらも伝わらないだろう。

そしてヘイゼルが受け取っていても、そこで揉み消されていては届かない事になる。


「それも確認する必要があるが…」

「先ずは山を越えなくては…な」


森の向こう側には、険しい山脈が威容を見せつけている。

それを越えるのは、慣れた隊商でも容易ではない。

途中には剥き出しの岩肌が広がり、開けた平地は魔物から容易に視認される。

それはつまり、魔物にとっては絶好の狩場となり得るのだ。


「砦を抜けて山岳地帯に入っても、魔物が徘徊する山脈を越えるのは難しい」

「そうだ

 急ぎたいのはやまやまだが、ゆっくり確実に進む必要があるな」

「ああ

 急いで魔物に囲まれては、山脈を抜けるどころか、生き残るのも厳しいだろう」

「その辺は分かるんだな?」

「ああ

 父上が存命の頃にな

 危険だと仰っていた」


何とか魔物の出現が少なければ良いのだが、それも運任せだろう。

アルベルトが存命の頃でさえ、魔物の出現は報告されていた。

数こそ少なかったが、隊商が行方不明になる事もあった。

それら全てが魔物の仕業とは考えられ無いが、少なくとも被害が有るのは確かだった。


運が悪ければ、大量の魔物に囲まれてお陀仏だ。

魔物の規模が分からない以上、どの程度生息しているのか分からない。

この規模の隊商では、そうそう襲い掛かる事は無いかも知れない。

しかし楽観視出来るほど、魔物が少ないとは思えなかった。


「我々が生き残る為にも、無駄に急いで渡る事は避けねばな」

「派手に動けば、それだけ魔物に気付かれる」

「ああ

 ここを時間を掛けずに渡って、早目に砦に着く方が良いんじゃないか?」

「ですが…

 それも危険でしょう?」

「この森にも…

 まだ魔物が居る可能性はあるからな」


アーネストの答えに、兵士達も同調した。


「そうですよ

 ここにも魔物は居ます」

「見掛けられるのはゴブリンやコボルトばかりですが…

 オークやオーガが出ないとも限りません」

「しかし急ぐには…」

「お気持ちは分かりますが、ここは隊商の速度に合わせて」

「そうですよ

 ペースは速いぐらいです

 このままの速度で行きましょう」

「そう…か…」


兵士達の説得に、ギルバートは不承不承ながらも頷いた。

隊商の護衛として行動しているから、魔物も人数が多くて迂闊に手を出せない。

そうであるならば、ここはペースを合わせて進むしかない。

そうしなければ、隊商とギルバート達が別々に狙われる事になる。


「危険は冒せません

 ここは従ってください」

「分かったよ

 オレも無茶をするつもりはない

 ただ速度を上げれないかと思っただけだ」

「ですね」

「確かに急ぎたくはありますね」


ギルバートはそう言いながらも、少し不満そうにしていた。

フランドールの行動も気になるが、王都からの連絡が途絶えているのも不安なのだ。

そして母親達の現状を聞いた今では、急ぐ必要があると感じていた。

しかし急げば危険が増すので、それも難しい事であった。


「後でもう一度、ボクが使い魔を出してみるよ

 無事に王都へ向けて旅立ったと」

「良いのか?

 魔力の消耗が…」

「大丈夫さ

 今のところ氷は大丈夫だし

 何よりも魔物に遭遇していない事が大きい」


不用意に魔物との戦闘をして、魔力を消耗していなかった。

言外にそう含めて、魔物との戦闘を避けるべきとも伝える。

ここで下手な戦闘をして、兵士を怪我させる事も危険だ。

それもあって、ギルバートは頷くしかなかった。


「分かった

 もう少し休んでから、再び進もう」

「ああ

 そうしよう」

「それでは隊商達にも、その様に伝えますね」

「ああ

 任せるよ」

「はい」


兵士は小走りに走り去り、隊商の元へと向かった。

実は隊商達も悩んでいて、このままのペースを維持するか相談されていた。

出来得る事ならば、冷え込む前に山脈を越えたかった。

しかしあまりペースを上げると、肝心の護衛達の疲労が残るからだ。


少しでも休んで、安全に確実に進みたい。

しかしあまりゆっくりしていれば、山脈の上で冬の訪れを迎えるだろう。

それまでに何とか、山脈を越えてしまいたいのだ。

隊商達はその様に考えて、どうすべきか話し合っていた。


十分な食事と休息を取り、一行は正午を過ぎてから出発した。

正確な時刻は分からないが、日の傾き具合から恐らく2時にはなってはいないだろう。

このまま進んで、日が傾く頃には2つ目の野営地に到着出来るだろう。

それでも合計で、100㎞ぐらいの行程になる。

森を抜けて砦に着く頃には、やはり5日は掛かりそうだ。


次第に日が傾き始め、次の野営地が近付いて来る。

しかし野営地が近付くにつれて、辺りの様子が変わって来た。


「おい…」

「ああ」

「何者かが…」

「というか何かが…

 だよな」


何者かが大勢で通った痕跡が増えてきて、足跡や木に目印を付けている物が増えてきた。

明らかに最近の物で、ここに小規模の部隊が行軍した様子だった。

それも傷の高さから、人間にしては低い位置の物が目立っている。

恐らくは木の幹の傷痕は、ゴブリンが付けた物で間違えが無い。


「しかし足跡が…」

「人間じゃあねえな」

「マズいですね」

「それにこの傷痕は…」

「ああ

 人間にしては低過ぎる」

「恐らくはゴブリンだな」



足跡の大きさから、恐らくはゴブリンの群れと思われた。

人の足跡にしては、それは小さな物が多かった。

子供の様な足跡が、この公道を抜けて行った跡が残されている。

それも100体以上の規模で、この道を使っていた形跡が残っているのだ。

一同に緊張が走った。


「私が一人、先行して見て来ます」

「危なくないか?」

「いえ

 蹄に布を掛けますし、一人の方が見付かり難いので」

「そうか

 気を付けて行ってくれ」

「はい」


兵士は馬の蹄に布を覆い被せて、音を立てない様にする。

その上で周囲を警戒しながら、先行して野営地を確認しに向かう。

兵士は馬に乗ると、早足で駆け去って行った。

付近には居ない様子なので、少し先に行ってから速度を落とすつもりなのだろう。


「大丈夫かなあ」

「うーん

 何とも言えないが、大丈夫じゃないか?」

「何でだ?」

「足跡は最近だが、昨日今日の物では無い

 恐らく最近移動したが、この近辺には居ないだろう」

「どうしてそう思うんだ?」

「付近には魔物の気配が無い

 近くに待ち構えて居るのなら、どこかに索敵の兵が伏せている筈…だろ?」


アーネストはそう答えながら、兵士の一人を見る。

彼も同じ考えであったのだろう、その発言に頷いていた。

本当に魔物が近くに居るのなら、斥候が潜んでいる筈だった。

それがこの近辺には、何者も潜んで居る気配が無かった。


「そうですね

 オレも同じ考えです

 魔物が公道を塞いでいるのなら、その辺に兵が伏せている筈です」

「それが居ないのなら

 恐らくは旅人を襲うよりも、森の中の方が割が良いと判断したんでしょう

 ここの行き来はそこまで多くないですから」


それは事実だった。

王都との行き来はそんなに頻繁では無いし、それに隊商を組むので人数も多い。

下手にそれを狙うよりは、森の中で獣や木の実を探す方が確実なのだろう。

馬車が野営地に着く頃には、先行した兵士が無事に戻って来た。

魔物の姿は無く、野営地の周りは安全だったのだ。


ただし、魔物が荒らしていたので、焚火の後始末が大変だった。

あちこちに焼け残った木や枝が残り、馬車や天幕を置く場所を塞いでいたからだ。

それらを片付けながら、一行は野営の準備に取り掛かった。

時刻は夕刻を過ぎており、そろそろ日が暮れようとしていた。

まだまだ続きます。

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