第121話
開かれた北の城門を通って、兵士が続々と現れる
彼等は予備の資材を手に、防壁の中で敵襲に備える
負傷した者がここに戻れれば、手当てを受ける事が出来る
その為にも、ここは必ず死守しなければならない
防壁の門を開けて、騎兵が出れる様に準備をする
準備と言っても騎兵が門まで出て来るだけだが、そこを守る兵士も配置に着く
魔物がいつ来ても良い様に、守備をする為だ
門が開かれて、騎兵達がいつでも出れる様に並ぶ
そこで彼が見た物は、予想外の光景だった
「え?」
「あれ?」
北の城門の外は、大体500m四方ぐらいの広場になっている。
ここは魔物が近付いても分かり易い様に、わざわざ木を切り倒して整備されていた
しかしその半分ぐらいに、防壁や柵が建てられた。
だから魔物は、昨日居た森から出て来るだろうと推測していた。
しかし目の前には広大な広場が出来ており、そこに魔物が整列していた。
「な、何だと!」
「森が…消えてる?」
正確には、さらに森が切り開かれて、1㎞四方ほどの大きさの広場になっていた。
そこへオークの兵士が並んで待機して、こちらが打って出るのを待ち構えていた。
「ふはははは
どうだ、驚いたか?」
アモンが先頭に立ち、こちらを見ながら高笑いをしている。
どうやら彼は、正々堂々と正面から戦うつもりらしい。
それでわざわざ、森を切り拓いて広場を作ったのだ。
それもたった一夜で、これだけの広さの広場を作っている。
さぞかし突貫で、これだけの木を切り倒したのだろう。
「これは…
どういう事だ」
「いつの間にこんな…」
「ふん
簡単な事だ」
アモンは嬉しそうに、自慢気な表情をする。
さすがに長く生きて来た魔王だけに、こちらの思惑には気が付いたのだろう。
それでわざわざ、森を切り拓いて広場にしたのだ。
こちらが誘い込むつもりだったのに、わざわざ戦える戦場を作ったのだ。
「貴様らがそこに防壁を築いたのを見てな
このまま森から出て来るのを迎え撃とうとしていると気付いたのだ」
「くっ
さすがに考えが甘かったか」
「そうだな
貴様らが待ち伏せする気なら
その小賢しい策を潰す為に、森を削れば良い
それだけだ」
「それだけだって…」
「だからって森を?」
「それもたった一夜で、ここまで切り拓くなんて」
「ぐはははは
考えが甘いぞ」
アモンはそう言うと、得意気に高笑いを続けた。
さすがに魔王は長生きなので、この様な戦いも経験している。
どうすれば相手が、攻め込むしか出来なくなるか考えたのだろう。
しかし考えたからと言って、それを実行する事は難しい。
「くそっ」
「しかしそれだけの為に、こんな一晩で森を切り拓くとは…」
「出来る事なのか?」
「ふん
簡単な事だ」
「まさか魔王の力とやらか?」
「ワシの優秀な兵士達からすれば
これくらいの事は造作も無い」
「え?」
「まさかとは思うが
一晩掛かって、あのオークの兵士が切り開いたのか?」
「たぶんそうかと…」
「いや、それは悪手だろ?」
「疲れるんじゃないか?」
「ふはははは
こいつらに掛かれば、それくらい容易い事よ」
アモンは笑っているが、将軍達は呆れていた。
幾ら人数が居ても、これだけ切り拓けば木材の片付けだけでも相当な労働になった筈だ。
それを一晩でこなし、それから碌に休まずに整列して待っていたのだ。
幾らオークに体力があっても、疲れているだろう。
現に、不満そうな様子のオークも居る。
「さあ
これで奇襲も出来まい
正面から正々堂々と掛かって来るが良い」
アモンのセリフに、隣の側近のオークの一匹も思わず頭を振っていた。
オーク達の士気は見るからに低く、若干やる気が無さそうであった。
それは主であるアモンの命令とはいえ、一晩掛かって作業してそれからそのまま戦闘なのだ。
やる気を出せと言う方が無茶だった。
「あのう…
その…
お前らはそれで良いのか?」
「あん?」
「兵士は疲れているだろう?」
「何を馬鹿な事を
ワシの精鋭達が、これぐらいで疲れるわけが無かろう」
「いや…
それなら良いんだが」
「さあ、いつでも掛かって来い」
アモンは早く戦いを見たいのか、そわそわし始める。
しかし開戦の時間までには、まだ時間はあった。
いくら早く見たいからといって、まだ開戦には早かった。
「いや、開戦は8時と言っただろう?」
「あん?
まだ準備が必要なのか?」
「そうじゃない!」
「ああ!もう
どうでも良いから、8時の鐘が鳴るまで待ってろ」
「そ、そうか…」
アモンは残念そうにしょげて、すごすごと後ろに下がった。
よほど開戦が待ち遠しかったのだろう、まだ始まらないと聞いたら途端に興味を失ったのだ。
人間側が準備をするのを見ていてもつまらないらしく、後方で椅子に座っていた。
オーク兵達は、その様子を不満そうに見ていた。
自分達は一晩中働かされて、その上でこうして立っている。
そしてこの後、命を懸けて戦わないといけない。
それなのに主は、働かずに座って見ているばかりだ。
いくら相手が強い主だと言っても、従う気が無くなってしまうだろう。
そんなオークの様子を見ながら、将軍はひそひそと話し始める。
「あいつは馬鹿なのか?」
「そうですね
戦争が大好きで魔王にはなっているものの、頭は弱そうです
脳筋具合は将軍と同等でしょう」
「おい
何故にそこで、オレが引き合いに出される?」
「え?」
「あれ?
自分が脳筋って気付いていないんですか?」
「アーネスト…」
「ぷっ」
「くくく…」
アーネストがからかい混じりに言うので、将軍は怒りで肩を震わせる。
しかし部下達は正直で、必死に笑いを堪えて震えてた。
「将軍は一度、鏡を見た方が良いですよ
自分がどれだけ、周りに脳筋に見られているか…」
「ちょっと来い」
「あ痛たたた
耳は引っ張らないで」
アーネストは耳を引っ張られて、そのまま後ろに下がらされた。
叱るついでに確認したい事があったからだろう。
しかし兵士達は、アーネストの身を案じていた。
これだけ言われたら、将軍に叱られると心配していた。
「それで?
お前はどう見てる?」
「そうですね
オークしか居ないのが怪しいですね」
「昨日も居なかったな」
「ええ
しかしアモンは、確かにワイルド・ボアに乗ったオークと、ワイルド・ベアが居ると言っていました
それが居ない筈がないんです」
「だろうな」
昨日の会談でも、オークの兵士以外には居なかった。
少なくともアモンが開示た情報には、他にも魔物の部隊が居る筈なのだ。
それが姿を見せないのが、アーネストも気になっていた。
「そうなると
いつ魔物が増援されるかだよな
伏兵として伏せているのか?
あるいは…」
「ワイルド・ベアは隠せませんから
恐らく森に待機しているんでしょうね」
「だろうな
目立つし大きいからな」
「ええ
ここからでも見えるでしょう」
アーネストの予想を聞いて、先ずはオークだけに集中できる事が嬉しかった。
下手に混成部隊で来られると、さらに勝率が下がって死傷者が増えるだろう。
それよりもオークだけに集中して、一気に数を減らすべきだろう。
その為にも、他の魔物が近くに居ない事が重要だった。
「兎に角
如何に損耗を少なく勝つかです
勝って次の魔物が出ても、人数が減っていては勝てません」
「そうだな」
「こちらの損耗を減らして、相手の兵力を下げる
最悪倒せなくても、戦意を挫けば十分でしょう」
「そうだな…
眠そうだしな」
将軍はアーネストの意見に頷き、部下達の方を見た。
「良いな
アーネストが言う様に、如何に傷を負わないかが重要だ
みんな無茶はするなよ」
「はい」
「なあに
これだけ開けた場所なら、オレの魔法でも当てられます
兵士のみなさんが居ない場所は、オレ様達が頑張りやすぜ」
「うん
ミリアルド、頼んだぞ」
「もう
すぐあんたは調子に乗る…」
「へへへへ」
後ろに控える魔術師達から、ミリアルドが任せろと胸を叩く。
それにミスティが呆れるが、固まったオークに火球をぶつけるのは良い作戦だ。
それ以外の場所には、ミスティの指示で拘束魔法が放たれる。
先ずは魔物に向けて、牽制の魔法を如何に放つかが重要になるだろう。
「素材の事は気にしなくても良い
オークに魔法を当てて倒してくれ
なあに、魔力が切れたらポーションはたんまり用意している」
「うへえ
アレは苦いから…」
「罰よ
あんたはキリキリ飲んで、撃ちまくりなさい」
「そんなあ…」
「はははは」
ミスティに言われて、ミリアルドは嫌そうな顔をする。
さすがのミリアルドでも、マジックポーションは苦手な様だ。
しかし姉貴分のミスティには、逆らえない。
しかも昨日から、ミスティは何かの自信に満ち溢れている。
それでミリアルド達も、ミスティの指示には逆らえなかった。
「魔術師は防壁に隠れて攻撃しろ
支援の魔法も忘れるなよ」
「はい」
「攻撃には味方の位置にも気を付ける様に
ミリアルドも言っていたが、味方がいない場所は撃ち放題だ
よく狙って魔物を退けるんだ」
「はい」
「倒せなくても良い
兎に角退ける事に専念しろ」
「はい」
アーネストの指示に従い、魔術師達も配置に着く。
その際にマジックポーションの入った箱も忘れない。
それが無くては、魔力の補充が出来ないからだ。
後詰の兵士に手伝ってもらって、各々の配置の場所に箱を運ぶ。
「良いな
これは大事にしろよ」
「ひっくり返して台無しにしたら、それこそ命に係わるぞ」
「はい
ここに置きますよ」
「馬鹿、こっちの台の上に…」
「そこだと危ないでしょ
足元の方が安全です」
「そ、そうか?」
あちこちで声が聞こえて、事前の打ち合わせが無いので混乱する。
突貫で作った防壁なので、打ち合わせが出来ていなかったのだ。
しかしそれでも、マジックポーションは重要な存在だ。
すぐには回復しないが、飲めばそれだけ回復が早まる。
魔力が鍵になる防衛戦だ、マジックポーションは大事にする必要がある。
「ここはうちの部隊が持つから、お前らはあそこを守ってくれ」
「いや、そこは丸見えだろ」
「それじゃあどこが良いんだ?」
「ここから向こうで備える」
「あそこは…
どうする?」
「飛び道具は持っていない
敵は歩いて来るんだ
必要の無い場所は開けておけ」
「はい」
兵士達は相談して、各自の持ち場を決めて行く。
予定していた罠が効果が無い以上、広場で戦う為には配置が重要だ。
どこに立つかを決める事で、仲間との連携も変わって来る。
兵士達は互いの攻撃手段を考えて、どこに立つのが良いか相談して移動する。
それを見ながら将軍が防壁の先に立ち、大きな声で宣誓する。
「8時の鐘が鳴ったら
魔物との戦闘に入る」
「おお!」
「任せてください」
「敵は先ず、オークが120匹だ
こっちは騎兵で先制するから、左右の空いた場所は歩兵で支えろ
兵士が居ない場所からは、弓兵と魔術師で押し返すんだ」
「はい」
「承知しました」
それから将軍は、騎兵達の方を振り返った。
「騎兵でも厳しい相手だろう
良いか
決して一人で相手をするな」
「はい」
「卑怯でも良い、こっちは人数が居るんだ
数人で1匹を囲むんだ」
「はい」
しかしそんな声掛けをしていると、不意に向こう側から声がする。
「その匹って表現は、止めてもらえるかな?
ワシ等もお前等人間と変わらない
下等な動物と同じ扱いは止めてくれんか?」
不意にアモンが苦言を呈する。
彼等からすれば、魔物を匹呼ばわりされるのは不満なんだろう。
人間は何人と数えるのに、魔物を総じて匹と数えるのは不当な扱いでないかと言うのだ。
そう言われてみれば、確かにそうである。
しかし古来より魔物は、獣と同等に扱われていた。
それを今さら、人間と同等に扱えと言われても難しいだろう。
「はあ?」
「しかし…
何人とかは人間だからなあ…」
「紛らわしく無いか?」
「一緒だと混乱するだけだろう」
「ワシは何人と数えているが?」
「それはあんただけだろ?」
後にこの一言が物議を醸すのだが、それはまた別の話だ。
兎に角アモンとしては、匹と数えられる事には納得が行かないのだ。
それで妥協案として、アーネストが双方が納得する方法を提案する。
「なら
取り敢えずは何体って数え方で良いか?」
アーネストの提案で、その場では何体と数える事となった。
以後は魔物の数え方は、何体という数え方が定着する事になった。
そして後には、人型の魔物だけが何体とか何人という数え方で統一される事になる。
その上で獣型の魔物に関しては、何匹という数え方が認められる事になる。
これは獣型の魔物が、人型の魔物に比べて知能が低い事が原因である。
同じ魔物でも、獣型の魔物は獣でしか無かった。
それで人型の魔物は、そんな獣型の魔物を見下していた。
そして同じ魔物にも、個性や集団のアイデンティティがある事が分かって来た。
実際に何匹と言われている時には、オークも嫌そうに怒っている様子が見られた。
今まではコミュニケーションを取れると思っていなかった。
しかし魔物によっては、感情や言語もある事が見て取れた。
彼等とも話し合えるのでは無いか?
敵対していなければ、分かり合えるのでは無いか?
女神様がお怒りになられた事も、その事が関係あるのでは無いのか?
ギルバートはそう思いながら、オークの様子を見ていた。
ベヘモットもそういえば、嘗て人間と魔物が争ったと言っていた。
それで女神が悲しんで、人間との間に境界線として結界を張ったと言っていた。
そう考えれば、女神も人間と魔物が分かり合える事を望んでいた筈なのだ。
しかし同時に、疑問に思える事があった。
それなら何故、女神は魔物に人間を襲わせるのか?
思い返してみれば、魔導王国が滅んだ事も魔物が原因だと聞いた事がある。
そう確か…、アーネストがそういう話をしていた気がする。
分かり合える可能性があるのに、こうして戦っている。
それは人間が、他国の人間と争っている事に似ている。
こうして争った先に、分かり合える日が来るのだろうか?
ギルバートはそう考えて、魔物の方を見る。
「どうやら魔物にも色々あるみたいですね」
「ん?」
ギルバートの呟きに、将軍は不思議そうな顔をした。
「彼等にとっては、オークという一括りの…
村?
街?
いや、一つの国みたいなものなのかも?」
「それはどういう…」
「人間と同じなんですよね?」
「それはどういう…」
「他の魔物
獣やゴブリン、コボルトなんかと一緒にされたくないって事ですよ
それで同じ扱いの、何匹って言葉が嫌なんでしょう」
「そうか?」
「ええ
恐らくそうでしょう」
ギルバートはそう言ってから、言葉を選んで説明する。
「将軍も帝国の奴等と一緒にされたら…
嫌でしょう?」
「そりゃあ…
あんな変な至上主義は理解が出来んが」
「それですよ」
「む?」
「オレ達が何匹と数えられたり、纏めて帝国の奴等と同じと思われたら…
嫌でしょう?」
「ああ
確かにそうかも…」
「彼らも同じなんじゃないでしょうか」
「そういう物なのか?」
「ええ」
「ギルの考えは賛成だな」
アーネストも、その考えに賛成してきた。
彼も魔物達の様子を見て、彼等が個の感情を持っている事を感じていた。
それで魔物達が、獣同然に扱われるのが嫌だという事も理解出来た。
「どうやら…
言語こそはまだ未熟だが、確立した意思も見られる」
「ああ」
「だからこそ、彼等は選ばれたハイランドオークと名乗っていた」
「ハイランドオーク…」
「それが彼等の、国の名前みたいな物だろう
オークと一緒にされるのも嫌らしい」
「なるほど…」
「オレ達がクリサリス聖教国の民という誇りがある様に、あいつ等にも…
ハイラ…なんたらの誇りがあるという事ですか?」
「ハイランドオークね」
「ならば、その誇りに賭けて、奴等は戦いを挑んで来るわけですな」
「そうですね」
ギルバート達は、それで納得していた。
しかし兵士達からすれば、魔物達の行動は理解出来なかった。
「しかし、分からんですな
それなら何で、奴等は攻めて来るんです?」
「そうですよ
あのアモンって男は何なんです?」
「あの男に黙って従ってまで…
何で奴等は戦うんです?」
それを聞いていた兵士達が、当然な疑問を示した。
彼等は魔王アモンが、どういった人物か知らないのだ。
「あれは女神様の使徒だ」
「使徒?」
「あれが…
使徒様?」
「そう、アレが…な」
アレと言いながら、ギルバート達は魔王の方を見る。
その目には、魔王に対する侮蔑の視線が込められていた。
「おい!
アレに悪意が込められているぞ」
意外に地獄耳なのか、アモンが聞こえたらしくて不満を叫ぶ。
それを無視して、ギルバート達は話を続ける。
「女神様の指示で、この国を滅ぼせって話らしい」
「そんな…」
「女神様がオレ達を…」
兵士達は、改めて魔物が攻めて来る原因を聞いて愕然とした。
単に魔物が好戦的で、何らかの目的を持っているとは思っていなかったのだ。
それも自分達が神と崇める女神が、その子である自分達を滅ぼそうとしているのだ。
ショックを受けるなと言うのが無理な話だった。
「しかし、それなら
なんで奴等は従っているんですか?」
「そうですよ
教会の教えでは、魔物は女神様に嫌われて憎んでいるって…」
女神を憎んでいる筈の魔物が、その女神の指示に従っている。
そんな事があり得るのか?
いや実際に起こっているのだが、それが信じられ無かった。
兵士達としては、女神に見捨てられた気分だった。
「何を言ってるんだ?」
アモンがまたもや、呆れた様に声を掛ける。
そんな兵士達の言葉を聞いて、呆れた様な表情を浮かべる。
「我等は今も昔も、女神様を崇める敬虔なる僕であるぞ
どこでそんな話になったんだ?」
「え?」
アモンの一言で、場は騒然とする。
今まで当たり前の事として信じられていた話が、ここで否定されたからだ。
「だって、魔物は女神様に嫌われて追いやられたって」
「そうだ!
それで封印されて、魔物と人間の住む世界は分けられたって」
「何だ?
その変な物語は?」
「どいう事だ?」
「魔物は悪だ、邪悪な存在だって
だから封印されたんじゃないのか?」
「それは逆だろう?」
「逆?」
アモンは次第にイライラしだした。
戦いに来たというのに、その戦いもせずにこのような問答が続いている。
いい加減に戦いたくて、イライラしていた。
「もう良いだろう
そろそろ時間になるぞ」
「あ…」
「くっ
時間が無いぞ
準備は良いか?」
「でも、将軍」
「これでは戦闘に集中して…」
「くそっ!」
そんな混乱している様子を見て、アモンは呆れた様に呟いた。
「仕方が無いな
それならば、ワシ等に勝ったら幾らでも答えてやろう
それで良いか?」
「答えるって…」
「でも勝てないと…」
「ふん
むしろ勝ってもらわねばな」
「そうだな
勝って聞き出してやる」
「その意気だ」
「さあ
掛かって来るが良い
そして見事勝って、ワシに何でも聞いてみせろ
何故ワシ等がこの地を去ったか
何故女神様がこの様な事をされるのか
ワシが知る範囲でな」
アモンの言葉に、兵士達は不承不承ながらに頷いた。
気になる事が多いが、今はそれどころではない。
それに勝ったら答えてくれるのだ。
ここは勝って街を守り、疑問を解き明かすのだ。
アモンが知り得る範囲というのに不安があったが、兵士達は気合を入れ直す。
「こうなりゃ自棄だ!」
「そうだ」
「勝って聞きだしてやる」
「そうだ、このままでは気になって死ぬ事も出来ん」
「それは…違うだろ」
「お前なら、そのまま忘れて…」
「兎に角、やるぞ!」
「おう!」
「それでは…
準備は良い様だな」
アモンもやっと出番かと立ち上がり、魔物達の前に進んで来る。
騎兵とオークが武器を構えて、距離を空けて睨み合う。
お互いの緊張がピークに達する頃、将軍が手を挙げて合図をする。
それに合わせてアモンも手を挙げる。
8時の鐘が鳴り響き、城門の外にまで聞こえた。
「騎兵部隊
突撃ー!」
「うおおおお!」
「我が子達よ、迎え撃てー!」
ブモオオオオ
プギャアアア
オークは言語が苦手な様で、豚らしい鳴き声を上げていた。
彼等はハイランド・オークと違って、人間の様に話せないのだろう。
遂に両軍が動き、戦闘が始まった。
まだまだ続きます。
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