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ツンデレ生徒会長に『備品』呼ばわりされた俺、これから君に無双します。  作者: サイトウ純蒼
第五章「優愛のいない体育祭」
42/82

42.高校見学、開催です!!

「以上で説明を終わります。何か質問はありますか?」


 宮前西高校の生徒会長優愛が、体育館に集まった数十名の()()()を前に尋ねる。本日は中学生による高校見学の日。色々な中学の制服を着た来年の後輩達が真剣な顔で優愛の話に耳を傾ける。

 教員の説明、生徒会長の話の後に自由見学へと続く。誰も挙手がないのを見てから優愛が言う。



「では質問がないようなのでこれから見学とします。先程も言いましたが授業の邪魔になる行為は控えてください。午後からは部活動の見学も可能なので是非そちらも見て行ってくださいね。それではこれで説明を終わります」


 優愛の話が終わると、体育館にいた中学生達が立ち上がり早速見学へと向かう。話を終えた優愛に優斗が声を掛ける。



「お疲れ、優愛」


 優愛が疲れた顔でそれに小さく答える。


「ほんと疲れたわ……」


「優愛ちゃん、お疲れさま!」


 生徒会の椅子に座っていた琴音や計子達も優愛の元に集まって来る。優愛がそれに答えようとすると、彼女達の前に説明会に来ていた女子中学生三名がやって来て言った。



「あの、生徒会長さん……」


 真ん中の女の子が恥ずかしそうに声を出す。優愛が答える。



「ん、なに?」


 女子中学生達が()()の方を向いて言う。



「生徒会長さん、よろしければ私達と一緒に学校を回って頂けませんか?」



「へ?」


 言われた優斗が呆然とする。別の女子中学生が言う。


「生徒会長さんが三年生だと聞いて来年一緒になれなくて残念ですが、せめて今私達に学校を案内して貰えませんか?」


 そう言って一歩前に近付いて言う。優斗が慌てて答える。



「いや、俺、生徒会長じゃないし、そんなこと言われても……」



「私が生徒会長よ!! 見学は自分達でやるの!! 分かった?? さっさと行きなさい!!! しっしっ!!!」


「きゃ!」


 優斗に群がった女子中学生達を優愛がまるで虫のように追い払う。()()先輩に睨まれた女子中学生達が四方へ散って行く。

 中学生達の案内をしていたルリが笑いを堪えながらやって来る。



「なに~?? どうしたのよ、優愛ぁ~??」


 腰をくねくねさせ、面白そうなことには首を突っ込みたくなるルリが尋ねる。優愛が腕を組みながら逃げて行った女子中学生達の方を見て言う。



「まったく、一体何の目的で見学に来ているのかしら!! 動機が不純だわ!!」


 琴音がなだめるように言う。



「まあまあ、優愛ちゃん。それより早く午後の授業に戻りましょ」


 生徒会や説明をした生徒を除けば他のみんなは授業中である。これから午後の授業を受けて部活動となる。


「分かったわ。さ、片付け終わったら戻るわよ」


「了解~!!」


 生徒会の皆がそれに敬礼で答えた。






「それでは生徒会ミーティングを始めます」


 その日の夕方、授業を終えた優愛達が生徒会室に集まった。

 狭くて少し暗い生徒会室。そこによく分からない資料が入った段ボールの山が積まれている。今年度はライバル宮北に連勝中でイケイケの生徒会だったが、この生徒会室はあまりにもだらしない。優斗が言う。



「なあ、もしかして今日中学生とか見学に来るんじゃないのか?」


 優愛が笑って答える。


「来ないわよ。私、去年も生徒会だったけど、だ~れも興味ないって感じだったわ」


「そうか……」


 それでもちょっとは皆で片づけをした方がいいかと思っていた優斗の耳に、大きくドアをノックする音が響く。



 コンコン!!!


「こんにちは!! 生徒会の見学に来ました!!!」



「え!?」


 その声を聞いて慌てる優愛達。琴音が青い顔をして言う。



「ど、どうしよう?? 見学に来ちゃったよ!!」


「な~んで、いいじゃん! みんなで楽しくやろうよ~!!」


 唯一動揺しないルリが笑って言う。



「お邪魔しまーす!! 見学お願いします!!」


 そんな皆の気持ちとは別に、勢いよくドアを開けた中学生達が生徒会室に入って来る。しかしそれを見た優愛が声を上げた。



「あっ!! あなた達、さっきの……」


 それは体育館での説明の時に優斗に言い寄って来た女子中学生の三人組。めげずに生徒会の見学にやって来たのだ。女子中学生が言う。



「私達ここで見学しますので、先輩方はどうぞ続けてください!!」


 そう笑顔で言って狭くて汚い生徒会室の後ろへ移動する。苛つく優愛に対して計子が冷静に言う。



「神崎さん、彼女達はルールに沿って行動しています。私達もミーティングを始めましょう」


「うぬぬぬっ……」


 じっと後ろから優斗を見つめている女子中学生達を見ながら優愛が唸り声をあげる。琴音が言う。


「優愛ちゃん」


「わ、分かったわよ。じゃあ始めるわ。最初に12月頭にある文化祭、バントの件ね……」




「優斗先輩〜!! こっち見て下さ〜い!!」


 ミーティングが始まったと同時に後方の中学生が手を振りながら黄色い声が上がる。驚いた優斗が振り返り苦笑いしていると、優愛が立ち上がって怒鳴り声をあげる。



「ちょっと、あなた達!!! 静かに見学なさいっ!!!!」



「はーい!」


 ちょっと舌を出して反省したフリをする女子中学生。優愛の顔が怒りで赤く染まる。優斗が言う。



「優愛、気にせずやろうぜ」


「わ、分かってるわよ!!」


 優愛が深呼吸をして椅子に座り直す。優斗が尋ねる。



「それで軽音楽部に声掛けはしたの?」


 ボーカルが優愛、ギターが優斗。あとドラムとベースが欲しい。軽音楽部に声掛けの役目は優愛である。



「あ、ああ、声掛けしたわ。快く協力してくれることになったわ」



「……」


 生徒会の誰もがその言葉を鵜呑みにしない。間違いなく前回の水泳部の平田同様、強引に引き受けさせたに違いない。後ろにいた中学生が手を上げて質問する。



「はーい、質問です!! 軽音楽部ってバンドでもやるんですか?? 優斗先輩、歌うたうんですか~??」


 あまりにも場の雰囲気を乱すような発言。再び立ち上がろうとした優愛より先に、計子がすっと立って中学生の元に行き言う。



「あなた達、邪魔をするなら退出しなさい。ここに居たければ黙っていなさい」



「は、はい……、ごめんなさい」


 物静かな計子。表情を一切変えずに冷淡に注意する姿は、まだ幼さの残る中学生には恐ろしく映る。真っ赤な眼鏡、黒色のおさげを揺らしながら席に戻った計子が皆に言う。



「それなら軽音楽部の方とうちとで一度練習をしなければなりませんね」


 至って冷静な計子に驚きつつ優斗が答える。



「そうだな。楽譜を渡しておくんで、少し経ったら練習をやろうか」


「そうね、そうしましょう」


 頷く優愛に優斗が尋ねる。



「優愛はボーカルになるけど問題なさそう?」


「どうして? 大丈夫よ」


 そう答える優愛の顔は不安でいっぱいである。



「多少トレーニングをしつつ、みんなで合わせてみようか」


「ええ、いいわ」


 少しだけ安心した優愛が胸をなでおろしながら答える。琴音が尋ねる。




「じゃあ、あとは体育祭だね。種目は去年と同じでいいと思うけど、最後の混合リレーのメンバーはどうする??」


 体育祭も姉妹校である宮北高校と共同開催される。

 ゴミ拾いや文化祭とは違い、体育祭ははっきりと両校の得点があり勝敗が決められる。中でも最終種目である『男女混合リレー』は最も大きな点が入る種目で、当然注目度も高い。優斗が手を上げて言う。



「俺、出るよ! アンカーやる!!」


 野球も水泳も得意な優斗。その実力を知っている一同が尋ねる。



「足は速いの?」


「うーん、どうだろう? まずまずかな」


 優斗の『まずまず』は恐らく人並み以上。本人がやるというならアンカーを任せてもいい。優愛が言う。



「分かったわ。じゃあアンカーはあなたに任せる。どちらにしろ生徒会もひとりは入らなきゃいけないから。後は陸上部に当たってみるわね」


「わ、私がお願いしてきます!」


 それを聞いた琴音が手を上げて言う。



「いいの?」


「はい、全部優愛ちゃんにまかせっきりも良くないので、仕事します!」


 そう言う琴音の言葉を聞きながら計子も言う。


「じゃあ、一緒に行きましょう。私も皆さんの力になりたいし」


「ありがとう~、計子ちゃん!」


 琴音が計子の両手を握ってお礼を言う。優愛が頷きながら皆に言う。



「じゃあこれで今日のミーティングは終わりにするけど、何か質問ある?」


 皆は座りながら小さく左右に首を振る。



「あ、あの、質問が……」


 そんな静寂の中、部屋の後ろで立っていた女子中学生が恐る恐る手を上げる。優愛が尋ねる。



「質問? まあ、いいわ。何かしら?」


 女子中学生が一歩前に出て尋ねる。



「あの、優斗先輩は……」


『優斗』の名前が出た途端、優愛の顔色が変わり何を言おうと口を開ける。女子中学生が尋ねる。



「優斗先輩と優愛先輩は、()()()()()しているんですか??」



「え?」


 女子中学生の言葉に場が静かになる。慌てた優斗が聞き返す。



「な、何を言ってるんだよ? 一体……」


 女子中学生はふたりを見つめながら答える。



「だって、ふたりってとても仲が良いし、息もぴったりだし。美男美女って感じでお似合いだし……」



「美男……」


「美女…………」


 優斗と優愛がその言葉を無意識に繰り返す。



「そんな訳ないでしょ!!」


 黙って聞いていた計子が机を叩いて立ち上がる。


「ふたりはそんな関係じゃないわ! 優斗さんは誰とも付き合わないのよ!!」



 計子に怒鳴られ驚く女子中学生。それを見た優愛がマウントを取ったような顔になって計子に言う。


「ま、まあいいんじゃない? 何も分からない健気な後輩だし。そんなに目くじら立てて怒ることでもないでしょう?? あ、そう言えばせっかく来て貰ったのにまだお茶も出していなかったわね! 琴音、お茶でも差し上げて」


 突然上機嫌になった優愛に女子中学生達が驚く。琴音が面倒くさそうな顔で答える。



「優愛ちゃん、この部屋のどこにお茶があるの??」


「お、お茶もないのね、ここ……」


 場の空気を察した女子中学生達が苦笑いしながら言う。



「あ、あの、どうぞお構いなく。これで失礼しますから……」


 そう言いながら部屋のドアの方へと歩き出す。優愛が満面の笑みになって言う。



「ああ、もう帰っちゃうの?? 残念だわ。あなた達が来てくれれば宮西も安泰ね! 来年ぜひうちにおいでよね!」


「あ、はい。ありがとうございます……」


 女子中学生達は頭を下げて部屋を出て行く。彼女達が出ていたのを見てから琴音がぼそっと言う。



「優愛ちゃん、分かりやす過ぎ……」


 計子も首を振って言う。


「若い子達は全く何を言うのか計算できませんね……」



 優愛が両手を上にあげて皆に言う。


「さあ、体育祭も文化祭も頑張りましょう!!!!」


 さっきまで体調が悪そうにしていた優愛が元気にはしゃぐ姿を、優斗が微笑ましく見つめた。

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