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ツンデレ生徒会長に『備品』呼ばわりされた俺、これから君に無双します。  作者: サイトウ純蒼
第四章「結局振り回される夏休み」
33/82

33.ルリの別荘へ行こう!!

『業務連絡よ』


 夏休みに入って数日、毎晩欠かさず行ってきた優愛からの業務連絡。今晩は特に翌日の『生徒会合宿』を控え彼女も気合が入っている。



『明日からの合宿のことか?』


『そうよ。なに? それとも私とは行きたくないって言うの?』


『誰もそんなことは言ってないだろ』


『ふん! どうせあの『まな板女』とかと一緒が良いんでしょ!』



(まな板女? まさか計子のことを言っているのか……?)


 優斗はサイズ違いのスク水を着ていた計子を思い浮かべる。高校生には少し刺激的な姿を思い出し顔を赤くする。



『と、とりあえず業務連絡頼むよ』


『分かったわ。まず集合は午前六時に駅前。遅刻厳禁、いいわね?』


『はーい』


 そう返事しつつも日課の自転車のことを思いやや気が重くなる。



『それから買い出しはルリの別荘から自転車で行くわ。あと目の前に川もあるそうなので水着も忘れずに。食事は全員で作ること。ミーティングは二学期の対戦種目である体育祭と文化祭について中心に……』


 実質生徒会長として最後の学期になる二学期。その残りの期間を全力で駆け抜けようとする優愛の気持ちが伝わって来て、優斗も何度も頷いて耳を傾ける。優愛が言う。



『ボランティア清掃に募金、水泳大会と今のところうちが三勝しているわ。残りは体育祭と文化祭だからふたつとも負けても宮西の勝ちは変わらないけど、いい? もちろん分かってるわよね』


 スマホの画面に映った優愛の顔が真剣になる。優斗が答える。



『分かってる。ひとつも負けない。全勝を狙う!!』


『いいわ、その意気よ。あなたが私に約束したんだからね』


『ああ、俺が優愛の願いを全部叶えるから!』



 それを聞いた優愛の顔が真剣になる。


(じゃあ、あそこに書いたら()()()()も叶えてくれるの?)


 無言になった優愛に優斗が尋ねる。



『優愛、どうかしたのか?』


『え? な、何でもないわよ!! 明日は早いからもう寝るわ! おやすみ!!』


『あ、ああ、おやすみ……』


 そう言っていつも通り切られる映像。そしてすぐに優愛のひとり言が流れて来る。



『あの願い、書いちゃおうかな……』


 慌てて通話を切る優斗。



(『あの願い』って、一体……?)


 優愛の言葉が気になりつつも、優斗はスマホを片付けながら明日の為に早めの就寝をした。





 午前三時。朝と言うよりはまだ夜である。


(眠っ……)


 普段早起きの優斗でもさすがにこの時間の起床は辛い。昼間の暑さが少しだけ和らいでいるのが唯一の救いである。いつも通り自転車の準備をしてそのまま電気をつけて走り出す。



(驚いたわ。こんなに朝早くから来てるんだ……)


 その目的地近くに住む計子は、いつもより更に早くやって来た優斗の姿を自宅から見て驚きを隠せない。毎朝確認してはいないがきっと休まずに来ているのだろう。自転車を止めて歩き出す優斗を見て計子が思う。



(一体何があなたをそこまで動かすの……?)


 生徒会でいつも一緒にいる優斗。

 ただ今窓の外をひとり歩く彼の姿は、そんな仲の良い友人とは全く違った姿に思えた。






「よお、おはよ! みんな!!」


 午前六時過ぎ、皆よりやや遅れて駅に現れた優斗に優愛がむっとして言う。


「遅刻よ! どういうつもりなの!!」


「たったの五分じゃん、勘弁してくれよ」


「ふん! 一体何をしていたのやら」


「優愛ちゃん、もういいよ。別にそんなにスケジュールが狂うわけでもないし」


 茶色のボブカットをに今日は大き目のリボンをつけた琴音が苦笑しながら優愛に言う。



「ああ、やっぱり琴音は優しいなあ。ありがと!」


「い、いえ、そんなこと……」


 優斗にそう言われ照れながら顔を赤くする琴音。優斗を見つめながら『いつ託されるのだろう』とひとり妄想する。



「さあ、みんな揃ったんで出発するわよ。よろしくね、ルリ」


 全員が揃ったのを確認してから優愛が今回世話になるルリに言う。ルリがピンク色の長い髪を揺らしながら笑顔で答える。



「了解~っ!! みんなで楽しんじゃおうね~!!」


 優斗はいつもこのほんわかした性格のルリが、どうして気難しい優愛と相性がいいのか不思議に思う。計子が下を向き恥ずかしそうにしながら言う。



「優斗さん、あ、あの、またいつもの水着持ってきましたから……」


「え? いつもの水着!?」


 優斗はすぐにそれが水泳練習や大会本番で来た『サイズ違いのスク水』だと気付いた。戸惑う優斗にその反対側にやって来た琴音が負けずに言う。



「ゆ、優斗さん! 私もスク水っぽいのを買って来たんで、絶対見てくださいね!!」


「え!? な、なんで琴音まで!!??」


 尋ねられた琴音が恥ずかしそうに答える。



「だ、だって優斗さんそう言うのがお好きだって、聞いたもので……」


 更に顔を赤くして答える琴音。



「こら、そこっ!! 何やっての!! 早く行くわよ!!!」


 少し不愉快な空気を感じた優愛が、振り返って優斗達に向かって叫ぶ。



「わ、分かったよ!! さ、行こうか、ふたりとも」


「「はい!」」


 計子と琴音は笑顔でそれに応え、優斗の両側に立って一緒に歩き出す。



 生徒会長の優愛、副会長のルリ、書記の琴音に会計の計子、そして備品の優斗の五名は夏休みで人の少なくなった電車を乗り継ぎ、数時間かけて避暑地と呼ばれる山地へと向かう。

 車窓の景色は都会のビルの群れから田園風景、そして山谷渓谷の風景へと変わりお昼を過ぎた頃に目的の駅へと到着した。



「うーん、涼しいわね!」


 電車の長旅を終え田舎の駅へ降り立って優愛が背伸びして言う。


「本当! それに空気も美味しいですね!!」


 琴音は強い日差しを避けるような麦わら帽子を被り大きく深呼吸する。



「あ、あのバスだよ~!! みんな、早く乗ってね~!!」


 ルリが駅前に停車している路線バスを指差し皆に言う。



 そこからバスで更に一時間ほど走り、静かな山道を少し歩いた先にルリの別荘はあった。


「うわー、可愛いじゃん!!!」


 別荘を見た琴音が嬉しそうに言う。

 丸太を組み合わせた絵に描いたような山の別荘。煙突も見える本格的なものだ。二階建てになっておりバルコニーも広く会食もできるようになっている。またルリの話にあった通り、別荘の少し離れた場所に川も流れておりほとんどプライベート感覚で使える。



「さあ、みなさ~ん、入って下さいな~!!」


 ドアの鍵を開けたルリが皆を中に招き入れる。



「すげえな、これ!」


 広い暖炉付きのリビングに、大きくて優雅なソファーが置かれている。その隣には山の中とは思えないほどのシステムキッチン。部屋数も多いようで皆で過ごすには抜群の間取りである。



「優斗はぁ~、二階の窓際の部屋を使ってね~!! 個室よ~!! それから、女の子は……」


 そこまでルリが言った時、琴音が手を上げて言う。



「はい、はい!! 女子はみんな大部屋で!! 女子トークしよっ!!」


「女子トーク?? いいねえ~、じゃあ女子は二階の角の大部屋で決まり~!!」


 勝手に話が進むのを見て優愛が不満そうに言う。



「ちょっと、なによ、その女子トークって? 私は何も話すことなんてないわ……、うぐっ!? ぐはぐはっ!?」


 そんな優愛の口を後ろから抱き着くようにして塞ぐ琴音。



「はーい、優愛ちゃ~ん、もう決まったことなの~、決定事項ね!!」


「あ、あの、私は何も話すことないんですけど……」


 そんなふたりをもじもじと見つめつつ計子が小声で言う。琴音が小悪魔のような顔になって尋ねる。



「あれ~、計子ちゃんって、たしか意中の人がいたような気がするんだけどな~??」


「い、意中!? そ、そんなこと!?」


 慌てて否定しようとする計子。そんな皆を見てルリが言う。



「さあ~、荷物片づけましょ~!! 楽しいお話は夜ね~!!」


「了解っ!」


 ルリを先頭に二階の大部屋へと移動する女子達。鍵を手渡されひとり残った優斗が思う。



(いや、よくよく考えてみれば男って俺ひとりじゃん!? い、いいのかこの状況……)



「優斗ぉ~、早くおいでよ~!!」


 二階に上がってルリがもたもたしている優斗を呼ぶ。



「あ、はいはい! 今行くよ!」


 荷物を持って慌てて階段を駆け上がる優斗。そしてルリに教えられた部屋に行き鍵を差し込むが開かない。



「あれ?」


 そうドアと苦戦している優斗にルリが後ろからやって来て言う。



「やだぁ~、私、鍵間違えちゃったみたい~!! はい、これね!!」


 そう言ってポケットから別の鍵を取り出し、優斗とドアの間にやって来て鍵を開ける。開かれたドアを見て優斗が笑顔で言う。



「お、悪いな、ルリ! じゃあ、俺はここの部屋を……、うぐっ!?」


 ルリによって開かれたドア。笑顔で部屋に入ろうとした優斗を、ルリがぐっと力を込めて彼を部屋の中へ押し入れ、身を密着させその口を塞ぐ。



「うぐぶぐぐぐっ!? (ルリ!? 一体何を!!??)」


 意味が分からない優斗。

 ルリはすぐにドアを閉めて口を塞いだ優斗の耳元で尋ねる。



「優斗はさあ~、一体誰が好きなのぉ~?? 私達の中でさぁ~??」


(え!?)


 優斗ほどではないが背の高いルリ。

 ピンクの長髪と共に、優斗に抱き着くようにして体を密着したルリが甘い声で尋ねた。

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