終
彼との初顔合わせ。印象としては、とても頼りない、線が細くすらりと背が高い人。さらに言えば、目の下にクマを携えた女性でした。
彼ーー彼女と私は向かい合わせの席に水を取り座ります。彼女は一息に飲み干すと、体をめいっぱいに縮めながらポツリ、ポツリと語り始めました。
「私、には、弟、が、いた、の」
たどたどしく自信のなさげな、しかし優しさを感じる心地良い声。彼女は続けます。
「とても優秀な、弟だった。前に書いた通りの。だけど死んだ、自殺した。私が酷いことを言ったから」
彼女は自分を抱き締めるようにして震えています。あと一押しあれば潰れてしまうほどに。
「あの子の気持ちを知ろうとした。あの子になりきってみようともした。そもそも何でそんなことをしたのかもわからなくなった。今さら恐れずに向かい合っても遅すぎるというのに」
「贖罪したかったんだと思う。私はあの時どうすればよかったのかがわからない。人に聞いてみたかったのかもしれない」
彼女は完全にうつむいてしまいました。
私はかける言葉が何一つ思いつかず、ただただ、絶句することしか出来ませんでした。
三日の後、彼女は大学の校舎から飛び降りました。即死でした。遺書には『もう耐えられない』とだけ書かれていたそうです。
ひと月後の今、私は自室で手首にナイフをあてています。軽く引いてみると、血が少し滲みました。
痛かった。涙が出た。