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 いったい、誰なのだろう。



「幼少時、僕は神童ともてはやされていました。運動、勉学と様々な分野において他者より先を進んでいたのです。一を知り千を知る、周りの人間がなぜ自分のように出来ないのかが理解に及ばない。両親は僕を誇りに思い、彼らの喜びは僕の喜びでした。故に努力を怠ることすらただの一度もなかったのです。

 ――人より前へ、人より上へ。――より速く、より強く。

 高校に入学したころ、僕の周りに人はいませんでした。努力の理由は親のため、それが親元を離れ遠くの進学校に通うことを良しとしなかったのです。誰一人として、僕と対等に接する人はいませんでした。皆、怠惰で、下衆で、普通、な、奴らでした。

 

 出た杭に誰も近づかず、抜けた杭は支えがなければ倒れ、いずれは朽ち果ててしまいます。


 僕は優秀でした。その才はとどまらず、人が自分に向ける感情を敏感に察することにも長けてしまいました。

 『何でお前がここにいる』『俺たちをバカにしているんだろう』『ずるい』

 ――お前、すごくて、不愉快だ――

 家族までがそう思いはじめた。それは、心を砕くに充分すぎる出来事だったようです。誰かと会話する、顔を見る、それだけのこともできなくなってしまいました。

 それから先は、もはや語るべきこともありません。ただ堕ちていくだけだからです。そして、誰にも足を踏み入れさせることがなくなった自分の部屋で、首を吊ったのです」



 私は、書き残しました。

「私には、天才の憂いなどを想像することなどできはしません。しかし少なくともあなたまで跡を追うことは誰も望まないと思います」

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