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プロローグ



挿絵(By みてみん)




 まず闇があり、そして光があった。光とは数多の名も無き恒星。無造作にぶちまけられたような光の粒、それぞれの距離は近いようで、その名の通り恒星間規模の距離が空いている。闇とは空間、自らを燃やし光を発する恒星以外の、果てのない宇宙空間。その最中に、その船はあった。

 太陽系外、その更に遥か先。未だ人類が観測することができない、宇宙光の地平面の先。ゆっくりと回転するその船の名は"樹海"。惑星文明一つ分の意識を保持する、小惑星ほどもある巨大な六角柱である。

 正式名「恒星間航行印字コンピュータサーバー船"樹海"」。冠する名とは異なり、実際は銀河間規模の距離をイデア空間を介して一瞬で移動できる。できるようになった、と言うほうが正しい。だがそれをする余地も、もう彼ら──サーバー上の集団意識には残されていなかった。

 彼らが無力に回転し進行する方向の逆、彼らの後方の空間に、恒星級のサイズの意識体が、何の輪郭構造を持つでもなく、ただその空間を占めていた。

 それの発する意図なき念波は、それだけで宇宙空間を振動させ、慄かせる。彼にもまた名があり、"行星"という。大まかに長平楕円体、ラグビーボールめいた形をとるその巨大意識体は、目の前のちっぽけなサーバー船に今まさに概念の腕を伸ばしつつあった。

 "侵食するという意図そのもの"がサーバー船の表面に触れようとした時、第三者が唐突に両者の間に出現した。そのサイズは182mm×257mm。サーバー船の集団意識は即座に解析を行い、それがいわゆる"本"であると断定した。

 その本は、サーバー船の意識らが理解できる言葉を発した。

「嗚呼、我が子よ。無垢の白鯨よ。私がお前に正しい道を与えよう」

 その本が開く。拡大収縮を繰り返し、存在した座標の意識や意味を喰らい続けてきた天災的存在に向けて、そのページを開く。

 その次の瞬間には、本も、何万年と"樹海"を追いかけてきていたはずの巨大意識体"行星"も、忽然と消えてしまっていた。

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