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現代にキレる

 目が覚めると真っ白な世界に居た。


「おや、起きたみたいですね」


 声がしたので振り向くと、大きなローブを着た女性がこちらに微笑みかけている。作り物のようなキレイな顔だ。

 知り合いにこんな顔のやつはいない。


「どちら様ですか?」

「よく聞いてくれました。私は神です」

「神?」


 想定外の言葉に変な声が出る。俺の反応に大変満足したのか、神様はそれは大きくうなずいた。


「いかにも。私が神です。今まで君は神を信じてこなかったでしょう。これを機に考えを改めなさい」

「はぁ、神様が俺に何の用ですか」

「む、その反応。信じてませんね」


 不満げに言われても仕方がない。あまりにも現実味がないのだから。

 それに話に聞く神は皆に平等なはずだ。こうして俺の目の前に特別現れる理由はない。

 何故、俺だけが。


「もういいです。それよりもあなたに話があります」

「はぁ」

「アナタにはこれから別の世界に行ってもらいます」


 ふふんと自信たっぷりに、訳のわからないことが言い放たれる。


「別の世界に行くって、元の世界の俺はどうなるんですか」

「どうなるって、気づいてないんですか? アナタ死んだんですよ」

「……は?」


 死んだ? 俺が? ありえない。

 冗談のきつい神様の言葉に、俺は上がった頬がひきつるのを感じた。


「だから反応が悪かったんですねぇ。ほらこれ、見てください」


 神様が指を振ると、その先に映像が浮かび上がってくる。

 数人の大人と高校生ぐらいの子供が暗い面持ちで座っている。それに合わせるかのように全員が黒い服を着ていた。

 ぽくぽくぽく、というリズムに合わせて念仏が聞こえてくる。こんなもの一発でわかる、誰かの葬式だ。

 嫌な予感がする。


「誰の葬式だよ」


 映像に目を凝らすと、棺の奥に顔写真と名前が並んでいるのが目に入った。

 微妙にへたくそな作り笑い。田中たなか 基久もとひさという見慣れた文字列。

 俺の顔、俺の名前だ。


「アナタは不幸にもトラックに轢かれ、その衝撃で脳の血管がブチブチに切れて死んだのです」


 神様が何か言ってるが、全く耳に入ってこない。

 誰かがすすり泣く声が聞こえる。これは母さんのものだ。間違えるはずがない。

 そうだ、母さんがいるなら。

 俺の意思に反応したのか、映像が母の姿を映す。体を丸めて声をこらえる母さんの隣で、俺の父は棺を睨みつけていた。

 涙を流す気配はない。それどころか、隣で泣く声がうるさいといわんばかりにしかめっ面をしている。

 反吐が出る光景だ。


「アナタは死にました! これでわかりましたか!」


 俺が怒りを募らせていると、映像をかき消すようにして神様が視線を先回りしてくる。


「はい。大丈夫です」

「よろしい! 嫌なことに耐えてきたのに、アナタは不幸な事故で死んでしまいました。しかし私は優しい女神、アナタを異世界に連れて行ってあげます!」

「わーい、やったー」


 これでもかという棒読みで答える。

 悔しいが、簡単に死を受け入れられるぐらいにはゴミみたいな人生を送ってきた。正直今は何もかもどうでもいい。

 異世界でもどこでも好きにしてくれ。


「では行きましょう! とてもステキな第二の人生! 女神のスペシャルプレゼント付き!」


 100パーセントの笑顔とともに、神様の体が輝き始める。


「あー、え、プレゼントって何ですか」

「行けばわかります!」


 この感じ絶対ろくなプレゼントじゃないな。

 文句を言う前に、俺の意識は光に飲み込まれた。

頑張ります

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