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人見知り女子高生のお礼


「残り半分、食べるか?」


 立花から勉強を教えたお礼にキットカットをもらったおれはその半分を食べるかどうか立花に尋ねた。


 言ってからこれ、間接キス的なあれになるんじゃ、と思ったが、食べる前に半分に折ったから問題ない。


 立花はこちらにきょとんとした顔で振り向く。


「へ?」

「いや、べつにいらなかったらいいんだけど」

「・・・・・・あ、え、え?」

「え、もしかしていらない?」

「え? あ・・・・・・は、い・・・・・・? 出雲さんが全部食べてくだされば・・・・・・?」

「・・・・・・そうか」


 おれは少し悲しくなりながら残り半分も口の中に放り込み、さくさくと味わう。


 キットカットはおいしいなぁ・・・・・・。


「・・・・・・」

「・・・・・・え、なに?」


 おれがもぐもぐしている最中も、もぐもぐし終えた後も立花はおれのことをきょとんとずっと見てきていたので、しばらく耐えたのだがさすがに気まずくなって聞いてみる。


「え?」

「え?」

「・・・・・・?」

「・・・・・・え、なにか用事があるのでは? ずっとおれのこと見てるし」


 おれが言うと「え、あ・・・・・・っ!?」と、たったいまおれをじっと見ていたことに気づいたのか、またしても立花はかーっ、と顔を真っ赤にしてうつむいた。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


 それから十数秒たったころ、立花が前髪の隙間から濡れた瞳をちらりとおれに向けた。


「お、おいしかったですか・・・・・・?」

「え、あ、ああ、おいしかったけど」

「それはよかったです・・・・・・え、あ、あ、そ、そ、そ、そうじゃなくてっ・・・・・・!?」


 おれがうなずくと、一瞬安心したようにほっと息をついた立花だったが、言いたいことを間違えたのか、すぐにぎゅーっ、と目をつむってひざの上でこぶしを握る。


 それから数十秒して、まだかなり赤いままの立花が今度は静かに言った。


「え、えっと・・・・・・ほんとにたいしたことではないんですけど・・・・・・」

「うん?」


 おれが頷いてから数秒。


 もじもじひざをこすり合わせていた立花が、一瞬おれを見る。


「・・・・・・どうして見ていたのかといいますと」

「うん」

「・・・・・・キットカット、持ち帰らずにここで食べるんだなぁって」

「・・・・・・」


 ・・・・・・。


 無言の俺に立花がちらちらと不安げに揺れる瞳を向けてくる。


「え、だめだった?」


 それに気づいて、ようやく我に返ったおれはどうにか会話をつなげる。


 やたらと溜めた末の質問が本当にたいしたことなくて驚いたので、固まってしまったのである。まあ、溜めせたのはおれなんだけど。


「だ、だめじゃないです」


 立花が慌ててふるふると首を振る。


「ただ、なんとなく家に持ち帰って召し上がると思っていたので・・・・・・」

「そうなん?」

「は、はい・・・・・・」


 おれが視線を向けると、ちょうど上目遣いに頷いた立花の視線とぶつかった。ぽっ、と頬を染めた立花は慌てて下を向く。


 おれはこれ以上会話を続けても立花の負担になるだけだと思ったのと、なにより会話を続けられる自信がなかったので、会話がちょうど落ち着いたのもあって立花から視線を切り読書を再開する。


 しばらくすると立花も勉強に戻った。


 それから数分は勉強に集中できない様子の立花だったが、それも一時的なことで、気づけば先ほどのことなど忘れたかのようにがんばっている。


 立花は今日は数学の勉強はしなかったようで、おれがラノベを半分くらい読んだところで荷物をまとめて立ち上がり、小さく頭をさげて帰っていった。おれもそれに軽い会釈で応えて見送る。


 太陽がちょうど沈んだころにラノベを読み終えたおれは一度伸びをしてから帰宅した。


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