悪夢のはじまり7
気がつくといつもの二段ベッドが見える。まだ部屋が薄暗い。二日続けての早起きだ。
いつもの夢とはまた違う、やたらと奇妙な夢だった。慣れない寮暮らしのストレスが溜まっていたのだろうか。あんなべらべら喋る男よりも子猫の夢を見たかったなと残念に思う。
変な夢のせいなのか、はたまた寝不足だったのか、体がなんだか重い気がする。俺はまだ少し寝ぼけたまま、洗面所に向かった。顔を洗ってさっぱりしたかった。
…………あれ?
だれだこれ?
鏡には見慣れた顔ではなく、目をまん丸にした女の子がうつっていた。
「は?どうなってるんだ?俺?これ俺か?」
顔をペタペタと触ってみる。
俺が頬を引っ張ると鏡の中の女の子も同じタイミングで頬を引っ張る。髪の毛を引っ張ったら少し抜けた。痛い。
抜けた髪を見ると、いつもの自分の髪より長くてサラサラとしてる。たぶん女子の髪にしては短い方なんじゃないだろうか。
ひとしきり顔を触り終わった後、息をゆっくりと吐いた。びっくりしすぎて呼吸を止めていたらしい。
息を吸ってー。吐いてー。
落ち着くんだ。深呼吸して落ち着こう。
「だめだ!訳がわからん!なんだこれ!」
混乱しきっていた俺はルームメイトの存在をすっかり忘れていた。