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悪夢の始まり2
一ノ瀬海斗。
俺のルームメイト兼クラスメイト。
かれこれ2ヶ月の付き合いになるが、会話した回数は片手で数えられる。
「同室の宮永剛だ。よろしく頼む。」
「……ん?ああ。」
これが最初の会話だった。二段ベッドの上段に寝そべりスマホをいじりながら生返事をした一ノ瀬への第一印象は最悪で、それ以降積極的に話しかけることはなかった。幸いなことに一ノ瀬が寮に帰ってくるのは門限ギリギリなので、それまでにシャワーを浴びておけば話す必要もない。
話したことはあまりなくとも、一ノ瀬の噂はよく耳に入ってきた。まず彼がモテるということ。これは驚きには値しない。見ればわかる。一ノ瀬はいわゆる甘いイケメンというやつで、金髪に染めた髪も相まって絵本の中の王子様そのものの外見である。
1つ欠点があるとすれば身長が平均よりやや下というところくらいだ。そのせいか一ノ瀬は高身長の男子を敵視しているらしい。噂には過ぎないが、これが本当なら一ノ瀬が毎朝俺を睨みつける理由に説明がつく。俺自身はここまで身長は欲しくないので、理不尽なことこの上ないと思う。