悪夢のはじまり1
まだ薄暗い部屋の中。目覚めた俺が真っ先に見るのは天井ではなく二段ベッドの上段ベッドだ。高校に入ってから2ヶ月経ち、寮の部屋にも慣れてきたがこの光景は未だに落ち着かない。自分の背が平均より高いのもあるのだろう。起き上がる時に頭をぶつけてしまいそうで、家のベッドが少し恋しい。
目覚まし時計を確認したが、まだ学校へ行く準備をするまでは余裕がある。あの夢を見るときはいつもそうだった。同じところで目覚める。自分の夢を宣言する少し前。
あれはきっと本当にあった過去の記憶なのだと思う。夢に出てくる優しそうな男の人は、幼稚園に実際にいた先生だったし、周りの子供達の顔も何人か見覚えがある。
あの時の自分は一体なにを願ったのか。最近繰り返し見る夢の続きを見てみたい。もう一度寝たら続きが見れるのだろうか。
しかし、二度寝をするほどの時間の余裕はなく、仕方なく俺はベッドを抜け出し、洗面所にむかった。
二人部屋とはいえ、洗面所にトイレとシャワーがきちんと備え付けられているのは高校の寮にしては恵まれていると思う。
鏡には代わり映えのしない自分の顔が映っていた。親より上の世代は男前だなんて言ってくれるが、同年代の女子は一瞬ビビる程度の強面だ。ガタイもいいせいで子供には避けられる。高校に入ってすぐの身長測定では180を超えていたし、高校生になったら止まるだろうと思っていた身長はいまだに少しずつ伸びているらしい。
なんとなく二段ベッドの上に目をやる。俺とは正反対のあいつは今もすやすや寝ているのだろう。