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策謀する一族

 貴賓席から皇城に戻ったアルトニヌスの表情はこの上なく暗い。


 貴賓席に現れたアルメーズが変貌した死者の騎士はそのまま暴れると相当な数の貴族達が叩きつぶされた。

 足を掴まれた貴族の一人はその強大な握力に足首を握りつぶされ絶叫を放ちながら地面に何度も叩きつけられ、動かなくなった所で壁に叩きつけられ肉片となった。肉片となった貴族の死体に黒い靄が覆い被さると再び死者の騎士となり暴威を振るう事になったのだ。


 アルトニヌスは騎士達の護衛を受けながら何とか皇城へ辿り着くことが出来たが、皇城までの道に展開される地獄を見てしまったのだ。

 泣き叫ぶ帝都の民達に対し、ザルブベイル一党は容赦なく武器を振り下ろしていた。父を母を子を友を恋人をそれぞれの大切な者達が無残に殺されていく。


 ザルブベイル一党は皇帝と報復に対してまったく慈悲というものが欠落していた。老若男女関係なく報復の対象であったのだ。

 皇城までの道には地獄が展開されていたのだが、不思議な事にアルトニヌス達はスムーズに皇城に辿り着くことが出来たのだ。


「陛下……」


 皇城に戻ったアルトニヌスを青い顔をした宰相であるデファン=メルト=カースゴル侯爵が迎え入れる。

 その表情には己の処理能力を超えた出来事に対する恐れが色濃く浮かんでいる。常に冷静沈着で高い処理能力を有してきた宰相であるがさすがに帝都に溢れるアンデッドが帝都を焼き払っているという状況に対処する事は出来ない。


「ザルブベイルだ!!」

「ザルブベイルが? しかし、ザルブベイル一族は全員……」

「だが、事実だ!! 今日のエミリアの処刑ですべては終わるはずであったがあの者達は甦りこの事態を引き起こしたのだ!!」


 アルトニヌスの叫びに宰相の顔が凍る。


「やつらはすぐにこの皇城に攻めかかってくるだろう。すぐに各領へ救援を要請せよ!!」「はっ!!」


 アルトニヌスの命令に宰相は簡潔に返答する。命令を出すよりも命令を受ける方が遥かにたやすい。

 すぐさま、宰相は文官達に各地へ伝令を飛ばすことになった。フィルドメルク帝国では魔術による情報伝達網が整備されているために帝都で異変が起こった場合にはすぐに各地の貴族達に救援を求める事が出来るのだ。


「全員武器を取れ!! 援軍が来るまで持ちこたえるのだ!!」


 アルトニヌスの言葉に皇城内に希望が生まれた。なんだかんだ言っても舵取りの存在はこの状況では有り難いのは間違いない。


「陛下、帝都の民は……」


 宰相の言葉にアルトニヌスは苦い表情を浮かべる。もはやこの状況で民を救う事など出来るわけないのだ。もしここで帝都の民を入れてしまえばそこにアンデッドが紛れ込んでしまえばそれこそ一巻の終わりである。


「見捨てよ!!」

「はっ!!」


 アルトニヌスの返答に宰相は苦痛の表情を浮かべるが反論はしない。この状況では致し方ない事であるのだ。

 ただし、それは見捨てる側の視点であり見捨てられる側にとっては到底受け入れられないものであることは間違いなかった。



 *  *  *


「父上、どうやらアルトニヌスは皇城に入ったようです」

「そうか。ふはははははは。愚かな事よ」

「ええ、愚帝の行動は常に我らの予想通りです。故に扱いやすいモノです」


 オルトとクルムの会話に家臣達も嗤う。


 すでに帝都の民の虐殺はアンデッド化した帝都の民達にやらせておりザルブベイル一党は当主であるオルト達の周囲に集まっていたのだ。


「あと数日で各地から贄……いや、各領の救援が来るであろう」


 オルトの言葉に全員が嗤う。オルトは各地からやって来る諸侯の軍隊などただの贄でしかない事を宣言していたからである。


「こちらから出向く手間が省けるというものですな」

「うむ」


 家臣の一人がオルトに言うとオルトはニヤリと嗤うと簡潔に返答する。


「エミリア、あの者(・・・)達はどうだ?」


 クルムがエミリアに尋ねるとエミリアは嗤う。


「ええ、抜かりないわ。早く来ないかしら、各地からの救援……絶望と言うものがどれほどのものか教えてやりたいわ」

「あらあら、エミリアったら。心から砕きにいくなんて」

「ふふふ、お母様もやる気でしょう?」

「もちろんよ」


 エミリアとエルザピアの会話に家臣達も頼もしげな表情を浮かべた。彼らにとって報復は未だ道半ばというべきものであり主であるザルブベイル一家が揺らいでいないというのは頼もしさしかないのだ。


「よし、それでは準備が整うまで帝都の者共で遊ぶとするか」


 オルトの提案にザルブベイル一党は大いに盛り上がった。

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