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無実の罪で一族もろとも処刑されたので甦って報復しました。それはもう徹底的に!!  作者: やとぎ


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高貴なる者の挽歌①

 フィルドメルク帝国先帝であるアルトニヌスは地獄というものを味わっていた。


 ザルブベイルから下された判決は、“一ヶ月の拷問の末、ザルブベイル領で火刑に処す”というあり得ないレベルの判決であった。

 アルトニヌスの周囲には味方は誰もいないどころかそもそも生きた人間がいないのだ。


 拷問……この言葉にアルトニヌスは震え上がっている。


 拷問の初日はまず両手、両足を砕かれることから始まった。ザルブベイルの者達はアルトニヌスを押さえつけると両手両足に容赦なく戦槌を叩きつけた。凄まじいばかりの激痛によりアルトニヌスは絶叫を放ったがザルブベイルの者達は構うことなく拷問を行う。


 両手両足が砕かれた所に無理矢理立たされ、鎖によって壁に吊されるとそこから暴行が行われた。

 ザルブベイルの暴行は絶妙の苦痛を与えた。絶妙の苦痛という表現はおかしいのだが、アルトニヌスがギリギリ耐えられるぐらいの苦痛を与えていくのだ。もちろん、苦痛を制御するのはアルトニヌスを殺さないため、若しくは精神を破壊しないための措置であることはアルトニヌスにもわかっており、それがアルトニヌスにとって絶望と言うものを余計に味わわせる事になったのである。


 ギャアアアアアアアアアアア!!


 アルトニヌスへの暴行が止むのは死刑が執行された時だけであり、断末魔の叫びがアルトニヌスの耳に入ると再び暴行が始まるのだ。

 そのうちにアルトニヌスは死刑の執行を待ち望むようになっていく。自分でも間違っているという事はわかっているのだが、それでも暴行という苦痛の時が中断される事に対して心が安堵するのは仕方の無い事なのかも知れない。


 もはや幾度目かの中断を経たところで、ザルブベイルの当主であるオルトがアルトニヌスの前に姿を現した。


「今、皇妃と側妃の処刑が終わったぞ」


 オルトの声には何の感情も込められていない。それがアルトニヌスには何よりも恐ろしい。


「今、このフィルドメルク帝国で生きている人間はお前だけだ」


 オルトの言葉にアルトニヌスは沈黙する。家族が殺されたというのにアルトニヌスには何の感慨も湧かない。


(余一人という事は……これから拷問は中断無く行われると言う事か?)


 アルトニヌスにあるのは処刑執行の際のみ拷問が中断される事が無くなることの方がよほど重大であったのだ。


「その通りだ」


 オルトはニヤリと嗤って意味不明な事を言う。オルトの言葉の意図を探ろうとした時にオルトは口を開いてその心情をアルトニヌスに伝えた。


「お前は家族の死よりも自分の拷問が中断されることの方がはるかに関心が高いようだな」


 心の底から蔑んだオルトの声にアルトニヌスは狼狽する。ずばり本心を言い当てられた事でアルトニヌスは“お前はクズだ”と言われたような気がしたのだ。


「ち、違う!!」


 アルトニヌスは自分の心の醜さを見せつけられることに耐える事は出来ずに否定のために叫んだ。


「今更、取り繕うな。お前はそう言う人間だ。自分の身だけが可愛く。他の者がどれだけ苦しもうと関係ない。家族ですらそうだ。実に醜い生物だな」

「そ、そんなわけあるか!!」


 バギィィィ!!


 オルトの持っていた杖が振るわれ、アルトニヌスの顔面に直撃するとアルトニヌスの口から血と歯が舞った。


「アルトニヌス、あと二十八日もの間拷問を受ける君には心の底から同情するよ」


 オルトは言葉では同情すると言っているが表情と声色がそれを否定している。誠に嬉しそうな声と表情でありアルトニヌスの不快感が一気に高まった。


「この帝都にはザルブベイルの者達が集まっておってな。その者達の分も残しておかねばならんのだ。簡単にくたばってくれるなよ?」


 オルトはそう言い残すとアルトニヌスが返答するよりも早くオルトは部屋を出て行った。


 それから約一ヶ月もの間、アルトニヌスは拷問を受け続け、命と精神を失うことなく拷問期間を終えるのであった。


 しかし、それはアルトニヌスの地獄が終わった事を意味するものでは無い事は全員がわかっていたのである。

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