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無実の罪で一族もろとも処刑されたので甦って報復しました。それはもう徹底的に!!  作者: やとぎ


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裁く者、裁かれる者②

 裁判を受ける事になった生者達は、裁判の日付だけが告げられ裁判が何処で行われるか。裁判官は誰なのかなどの情報を受ける者達には一切教えてもらう事は出来なかった。


「ふざけるな!! 我々には知る権利がある!!」


 説明を受けていた貴族の一人がそう叫んだ瞬間である。説明していたザルブベイルの家臣が動くと手にはすでに瘴気で形成されていた戦槌が握られている。

 家臣は貴族の両膝をほぼ同時に戦槌で打ち砕いたのである。


「ぎゃああああああああ!!」


 床に倒れ込んだ貴族は絶叫を放つ。突然両足を砕かれれば当然の行動かも知れないがそれによってザルブベイルの者達の慈悲の心は刺激されることはない。

 家臣は戦槌を振り上げると容赦なく貴族の両腕に振り下ろした。『グシャリ』と耳を塞ぎたくなるような音と凄惨な光景が展開されるのを生者達は目を背けた。


「ぎゃあああああああ!!」


 再び起こった絶叫に生者達は視線を戻して呆然と見ていたが家臣が絶叫を放つ貴族の顔面を掴み上げるとそのまま謁見の間を出て行く。

 扉が閉められるとそこから連れて行かれた貴族の絶叫が再び発せられる。謁見の間の扉の防音能力は高いはずなのにそれでも絶叫が謁見の間に響いてくるのだ。


「お前達はしばらくあの愚か者がどのような目に遭っているか想像しておくのだな」


 家臣は慈悲というのも完全に排除した冷たすぎる視線を生者達に向けて言い放った。


 それから一時間近くも謁見の間に残された者達は貴族の拷問の音を聞かされていたわけである。扉の向こうでどのような地獄が展開されているのか中の者達には決して見えない。だが、それが却って中の者達の恐怖をもたらしたのは間違いない。


 一時間近くにも及んだ拷問を終えて謁見の間に再び姿を見せたその貴族の姿に全員が息を呑んだ。

 貴族の四肢は失われ数本の槍で体を貫かれていたのである。しかも恐るべき事にその貴族はまだ(・・)死んでいなかったのだ。

 息も絶え絶えで絶命間近であったのだが、まだ意識もあったのだ。これは体を貫いた槍が貴族の急所を避けていたからであった。重要な臓器を避けていたために致命傷になっていなかったのだ。


「おや、まだ生きてるじゃないか」


 説明をしていた家臣が言うと問われた家臣も当然だろというような表情を浮かべた。


「当たり前だろ。こいつらは立場が分かってないからな。俺達の不興を買ったらこういう目に遭うことをちゃんと見せておかないと理解できないだろうからな」

「確かにな。自分の立場を理解していたら“権利”などという言葉が出るわけ無いな」


 家臣達の会話に謁見の間にいる者達はゴクリと喉をならした。痛めつけられた貴族に続いて自分達も声を上げようとしていたからだ。


「おい。入ってこい」


 家臣がそう言うと一体(・・)の侍女が入ってきた。その侍女は皇城で働いていた者であることをこの場にいるほとんどの者達は知っていた。皇城が落ちた際にザルブベイルの者にすでに殺されアンデッド化されていたのだ。


「これから起こることをよく見ていろ」


 ザルブベイルの家臣が謁見の間でそう告げると生者達はゴクリと喉をならした。これからどのような凄惨な場面が展開されるかを想像してしまったのだ。


「こいつのようになりたくなければ言葉には十分に気を付けるのだな」


 家臣はそう言うと侍女に向かって黒い靄を飛ばすと黒い靄の纏わり付いた侍女は体長三メートル程の一匹の黒い獣へと変貌した。しかも獣の顔は侍女の顔のままなのだ。これほどおぞましい者を見たことなかった。


「ひ!!」

「きゃあああああああ!!」

「うわぁぁぁあ!!」


 侍女の顔を持つ黒い獣を見た生者達は叫び声を上げた。辛うじて叫び声を上げなかった者達も顔を青くしていた。

 侍女の顔も絶望に染まっている。何故自分がこのような目に遭わなければならないのかという思いがその目には溢れている。


「やれ」


 家臣の命令に従い黒い獣となった侍女は床に倒れ込む貴族を前足で押さえつけた。


「ぐぁ……た……しゅ……ゆりゅ……して……くぢゃ……しゃぃ」


 貴族は涙を流しながら懇願を行うがまったく効果はなかった。侍女の口が大きく裂け、口から牙がのぞいた。

 その光景はひたすらおぞましいモノであった。生者達は目を背けたいという思いはあるのだが体が動くことを拒否しており黒い獣に貴族が食われる様の一部始終を見ることになったのだ。


 食われていく貴族はもはや叫び声を上げる力もないのだろう。絶叫は上がらなかったがその表情から凄まじい苦痛を感じていることは十分に察する事が出来た。


 腹部を食いちぎられ血が止めどなく溢れ出した。目から光が失われ貴族が絶命した事を生者達に知らしめた。血と臓物の臭いが謁見の間に充満し、生者達の中には嘔吐をするものが出た。


「さて、我らの不興を買えばどうなるか理解したか」


 家臣の言葉に生者達は青い顔をしたまま頷く。


「当主様の意向でシュクル第三皇子が一番最初に裁判を受けるというお達しだ」


 名を呼ばれたシュクルは静かに頷いた。その事に対して生者達は誰も言わない。母である側妃アリューリスでさえもだ。ここで異を唱えるような事をして殺された貴族のような殺され方をするのだけは嫌だったのだ。


「裁判が終わるまでの短い時間、己の罪をじっくりと見つめるのだな」


 家臣はそう言うと食い散らかされた貴族の死体をそのままに謁見の間を出て行く、食い散らかされた貴族はあとでアンデッド化するのだが、見せしめのためにすぐにアンデッド化しない方針のようであった。


 黒い獣に変貌させられていた侍女は家臣が出て行く際に元の姿に戻り、ほっとした表情を浮かべたが自分が何をしたのかに思い至り髪をかきむしりつつ蹲った。


 生者達は裁判で勝てれば生き残る事が出来るという希望を持っていたがそれがいかに困難な道なのかを思い知らされたのであった。

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