サタンという男
拝啓 天国のおばあ様、
……こんな面倒臭いやつどこから拾って来たんですか?
「てゆーか俺様の何が気に食わねーんだよ。」
目の前の自己主張型ヤンキーはその嫌味なほど均整のとれた身体を折り、顔をずいっと近づけて威圧する。ほんとにヤンキーじゃないの。
「全部よ。まずその服っ!どこの特攻服よ、この露出狂っ!!」
「ろしゅっ」
「あとその馬鹿みたいな喋り方っ!!」
「ばっ!?」
そいつは顔を引き攣らせる。
自覚があるのか何かを言おうとしては悔しそうに口を閉じる。
「あら、まだあるけど聞きたいの?」
ふんっと腰に手を当ててそいつを見やる。
「……テメーみてーに失礼なニンゲンは勇者以降初めてだぞ!!」
悔しそうに拳を握りジトっとした目でこちらを見てくるその目はほんの少し涙が浮かんでる。
「あらー、んで?泣き虫な魔王様は勇者様にはぼろ負けたの?」
少し悪戯心が湧いてきて今度はこっちから顔を近ずけて笑ってやる。
「なっ!?」
思わず仰け反るサタン。
そして顔を歪めてそっぽを向いて頭を搔く。
「チッ!そんな可愛くねー性格だから結婚できねーnどぁ!?」
「なんて……?」
思わず掌底を叩き込んでやると相当痛かったのかその場に涙目で蹲った。
「何でもないです、ゴメンナサイ……。」
「それで?さっきの巫山戯た自己紹介は置いといて、あんた本当になんなの?」
訝しげに睨んでやるとそいつは急に立ち上がった。
「だーかーらー!!魔王のサタン様だって言ってんだろぉ!?……まあ来た理由は、なんだ。テメーを幸せにしに来てやったんだよ……っ!」
ちょっとバツが悪そうに、それでいて照れたような顔を背けて頬を搔く。
「はぁ?」
「っっっ!!って言うか!説明書読んでねーのかよ!!?」
耐えきれなくなったサタンが顔を赤くして叫ぶ。
「説明書ぉ?魔法のランプにそんなのあるの?」
「魔法のランプじゃなくて正しくは魔王のランプな!!っと、おらよ。ファッキンゴッド直筆のアリガターイ説明書だ。」
そう言ってサタンはランプの中からくしゃくしゃに丸まった何枚かの紙を差し出してきた。
「えっと……『このランプの中にわぁ、とぉっても怖い悪魔がいるから気おつけてね☆』え、何このテンション。」
その説明書とやらはどこぞの若者が書いたのかと言いたくなる文章だった。
「いいからさっさと続き読めよ。」
「う、うん……。『一度呼んだらぁ、願い事お叶えるまで消えないから、取り扱いにはじゅーぶん注意してねっ☆彡.。』え、あんた消えないの。ていうか今どきこんな文章書く子の方が少ないわよ……。」
思わず引き攣った顔でサタンを見ると、そいつはもう諦めたのか妙に神妙な顔で聞いている。
「……ああ。こんなやつに一瞬でも仕えていたかと思うと寒気がするぜ。」
「『お願い事わぁ、君が心から幸せ(*n´ω`n*)って思うこと3つだおっ!それじゃあ、楽しィ楽しィ悪魔ライフお楽しんでねっ(・ω<)-☆』……。」
思わず黙り込む私とサタン。
くしゃくしゃの説明書を右手に持ち、左手で顔を覆う。ぽんっとサタンが肩に手を置いて慰めるように首を横に振るのを見て、深く息を吐いた。
右手に持った説明書をぐしゃっと握り潰して息を吸う、横でサタンが耳を塞ぐのが見えるが知らないっ!!
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっっっっ!!!!!」
思わず叫んだ私は本気で悪くないと思うの。




