ランプの魔王
新連載です。
よろしくお願いします。
その日私は夢を見た。
夢の中で今よりずっと幼い私は病院のベッドに横たわる祖母に必死に呼びかけていた。
「おばーちゃん、ねえおばーちゃんっ!!」
たくさんの管を繋いでやっと命をつなぎ止めている祖母に私は飽きずに何度も、何度も何度も呼びかけるのだ。
「 」
もう意識もないだろう祖母が今際の際に何か伝えようと口を動かし、
ジリリリリリリリッッ!!!!
けたたましいベルの音が鳴り響いて私の意識は現実の世界に引き戻される。
「おばーちゃん……。」
もう十何年も昔のことなのに未だに夢に見る光景。
「おばーちゃん、なんて言ってたんだろう。」
目尻に溜まった涙を拭って起き上がる。今日もまた同じような1日が始まると、この時はまだ思っていた。
「あかりーっ!ちょっとこっちも手伝ってちょうだいっ!!」
「すぐ行くー!!」
その日は祖母の27回忌で私は母の手伝いをしていた。
別に親戚をよぶ訳ではないが、それでも死者を弔うことは大切だといつもこの時期になると仏壇を綺麗にしてちょっと豪勢な食事を供えてやるのだ。
祖母が死んだのは私が3歳の時だった。おばあちゃんっ子だった私はどんどん衰弱していく祖母に必死に声をかけていた。
この時期になるといつもあかりちゃんと私の名前を優しく呼んでいた祖母を思い出す。
そんな祖母はあかりちゃんの結婚式までは絶対生きるんだーなんて、まだ赤ん坊だった私にそう言っていたと母から聞かされたことがある。
「結婚どころか、もう何年も彼氏すらいないけどね。」
私こと結城明香里は今年30歳を迎える高校教師だ。今は実家から比較的近い学校に配属されたのでそのまま実家に住んでいる。ついぞ20代の間に結婚することは叶わないのだともう半分以上諦めが入る。実際問題、実家暮らしのアラサー女というのは男性的にあまり宜しくないらしい。
「明香里っ!ちょっとあんた蔵の掃除してきてくれない?」
部屋の扉からひょっこり顔を出した母がそう告げる。
「えー、蔵ってすっごい汚いじゃん。何があるかわかんないし。」
祖父母揃ってかなりの骨董品好きだったようで家の蔵にはガラクタばっかりかなりの数の有象無象が雑多に収納されている。
「だからこそ掃除するんでしょ!もうお母さんも若くないんだからあんたがやってちょうだいよ。」
「私もいうほど若くないんだけど。」
「お母さんよりましでしょ!ほら早くやってきてちょうだい。」
確かにお母さんにはちょっときついかな、なんて思い直して私は蔵へと向かった。今までの人生の中でこの時の判断ほど後悔したものない。
白壁の蔵の錠前を外し観音開きの扉を全開にする。
「うわー、すごい埃っぽい。」
そこらかしこに乱雑に置かれたガラクタ達は皆一様に分厚い誇りをかぶっている。蔵の中は薄暗く、入口から差し込む光だけが唯一の光源だ。
「これは……とりあえず全部運び出すところからかな。」
思わず苦笑いを浮かべてしまう。まさかここまで酷いとは思ってもみなかったのだ。
腕まくりをし、いざ出陣!と足を勢いよく前に進めたその時、
カッカラランッ
何かが足にあたる感覚と金属製の物体が床を転がる音がした。
「うわっ!早速何か蹴っちゃったよ。」
うんざりとした気分のまま蹴った何かを持ち上げる。
「何これ、金属製の……水差し?」
音の正体は酷く汚れた金属の水差しのようなものだ。
「なんでこんなに汚れてるんだろ……。なんか、アラビアンナイトに出てくる魔法のランプみたい。」
物語が好きな私は思わずあの陽気な妖精が出てくるところを想像して笑った。少し憂鬱な気分が晴れたのでお礼に磨いてみようか、と思い黒く汚れたそのランプを磨いてあげる。
「アブラカタブラーなんt「フハハハハハハっ!!!!よくぞ俺様を呼び出したっ!俺様はこのランプに宿るまお「チェンジッッッッッ!!!!!」
「なにっ!!?」
なんてね、と続くはずだった私の言葉を遮ってその場に現れたのは褐色の肌と紺青色の髪を持った、ヤンキーだった。しかも一昔前のヤンキー。
「こういう時に出てくるのはイケメンか陽気なお兄さん系の妖精って相場が決まってるのよ!チェンジよっ!!!」
「あん!?俺様がイケメンじゃねーっていいてーのかよっ!!?それにヨーキなオニーサンキャラってんなら俺様にピッタリじゃねーか!!」
確かに顔だけを見るならイケメンだ。よく通った鼻筋にキリッとした目元。髪と同色の長いまつ毛に縁どられた瞳はまるで夜を彩る月のように見事な金色をしている。それらがバランスよく顔に配置されており、日本人にはない彫りの深い顔を作り出している。
でも格好がダメだ!!ヤンキーみたいなニッカポッカを履いて腰にはこれでもかというくらい金銀で作られた装飾がチェーンの様に巻きついている。同じようにジャラジャラとネックレスなどの装飾が揺れる胸下あたりから腰までを晒しで覆っているだけでインナーを来ていない。そして極めつけは背中に夜露死苦と刺繍でもされてそうな長ランだ。これから特攻にでも行くのかと聞きたくなる。さらに両耳には軟骨合わせて8つのピアスがついている。
陽気なお兄さん?まさか、時代遅れの自己主張型ヤンキーよ!
「ていうかあんた何なのよ!」
見た目のインパクトに気を取られていたがそんなことよりこいつが何処の何奴かって事の方がよほど重要だ。
「はんっ!よくぞ聞いた!俺様は泣く子も黙るレーテツ、ムジヒな魔法のランプの魔王様、サタン様だっ!!」
「チェンジッッッッッ!!!!!」
蔵にあるのはやっぱりろくなもんじゃなかった!!!
シリアスかと思った?残念コメディでした!
終始テンション高めで、たまにエッセンスでシリアスっぽいの入れていきます。




